[警備員クラウド後編]

「俺、なんか変なんだ」
「は?」

「ザックスは間の抜けるような声をだした
クラウドが自分から話しかける事はめったにないので動揺したのである
ザックスはクラウド唯一の友人、とはいえ基本的に話すのは昼飯を告げに来る時のやりとりだけなのだが
もちろんクラウドが彼に相談をもちかけるなどは初めての出来事だ

「エアリスって新しく入った女いるだろ」
「あぁ、お前と仲がいいあの可愛い子ね」
「別に仲がいいわけではない、ただ」

クラウドは神妙な顔つきで、少し間をおいて

「彼女といると俺は変になってしまうんだ、彼女のペースに引き込まれるというか、うまく表せないが」
「それはねクラウドくん…恋だね」

ザックスは少し茶化すようににやりと微笑みながら言った
それに対し彼は恥じるどころかにこりともせずに

「それはありえないな、俺は人を愛した事などないし、愛したくもない」

クラウドは一つ大きく深呼吸をし、肩をすぼめて

「わるかったな、変な事話して」

そういい残し彼は自分のポストへと戻っていった

 

「おかえり〜何してたの?」

いつものようにエアリスが笑顔で彼を迎えた

「あんたには関係ない事だ」
「関係あるの、同じ配置の人間として情報は正確に把握してないといけないの!ねぇ何してたの?」

彼女はクラウドの腕をつかんでせかすように少し引っ張った
彼はそれを強引に振り払い、少しため息をつきこう言った

「なんで、あんたはそんなに俺の事を知りたがるんだ?」
「クラウドが自分の事教えたがらないからよ」

エアリスは少しだけ寂しそうな顔をして、さらっと言った

「教えるも何も、俺は俺だ、何も教える事など無い」
そう言うとクラウドはやれやれと深くため息をつき、巡回してくると言い残し、独りの時間を作った

約一時間後

「キャー!」

聞き覚えがある女性の悲鳴が響いた

過激派の車上荒らしか!?
クラウドはすぐに無線で応援を呼ぼうとしたが、電波が何者かによって遮られていた
ここは地下深く、それに今は深夜、仮に地上まで声が届いたとしても誰も助けには来てくれないだろう

どうする?

彼は苦悩した
自分1人で対処できる確証はない、相手は電波に障害をかけるなど手が込んでいる
危険な目にあうだろう、しかしもし見捨てたら彼女が危ない
どうする?…アイツがどうなろうと俺には関係ない事だ、俺には関係ない、俺には…

彼は次の瞬間走り出していた

相手は拳銃を所有し貴金属でポケットを膨らましていた
クラウドに気づくと銃口を恐怖で腰がぬけたエアリスの方へと向け、彼女は気を失った

「動くな!お前は後でじっくり料理してやるからよ」
「やめろ!逃がしてやる、だから撃たないでくれ」
頭で考えるより早く言葉が出てきた

「ダメだ!もう顔をみられたからな」
相手は興奮している、本当に撃ちかねない

「俺を撃て、彼女には手をださないでくれ」
クラウドは今まで出した事が無いような大声で叫んだ

「それは無理な話だな、そこまで死にたいなら、お前から逝かせてやるよ」
銃口をクラウドの方へ向けてゆっくりと引き金を…

やられる…
彼は思わず目をつぶった、しかし銃声は聞こえなかった

「もう目をあけてもいいぞ」
聞き覚えのある声、目をあけるとそこにはザックスが笑みを浮かべながら立っていた

「迫真の演技だったろ?声変えるの難しかったぞ、それに特殊メイクとか電波障害も金かかったし
おもちゃの拳銃って高いんだな〜それにダミーの貴金属も以外に費用かさんだし
何より一時間で全部揃えるのが大変だったな」
「お前まさか!?」
「まぁそう怒るなよ、これで自分の気持ちがわかっただろ?さぁお姫様を起こしてやれよ」
そう言うとザックスは地上へと戻っていった

クラウドはそれを最後まで確認して振り返ると

エアリスはまだ気を失って、地面に横たわっていた
彼が抱きかかえると彼女は目を覚ました

「…うん?ここは天国かしら」
「気が付いたようだな」
「クラウド!!なんで私、腕の中に」

彼女は少し頬を赤くし、はっと我にかえり

「犯人は!もう捕まえたの!?」
「その事に関しては心配するな、それより今回の事でわかった事がある」
「え!?何?」

少し首を斜めに傾けて、エアリスはクラウドの顔を覗き込んだ

「俺はあんたが好きだ」

彼女は何も言わずにキスで答えた

〜完〜

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