注釈

A. ゾンマーフェルト


The Principle of Relativity (DOVER 出版) 収録の "Notes", by A. Somerfeld. から、訳 片山泰男
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次の注釈は、Minkowski の文章へ干渉しないような追補のなかで与えられた。それらは、決して不可欠でなく、Minkowski の偉大な思想の 理解を妨げる、ある小さな数学的な困難を取り除くこと以外には目的がない。参考文献は、彼の言及する主題を明示的に扱う文献に限定した。 物理的観点からは、Minkowski のいったことは、いま、何ひとつ、Newton の引力の法則への最終的所見以外は、取り下げなければならないものはない。 しかし、問題になるだろう Minkowski の時空の概念に対する認識論的態度は、別の疑問であり、私にとっては、彼の物理に本質的に関わらない 疑問であるようにみえる。


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(1) Page 81, line 8, "一方、剛体の概念は、群 $G_∞$ を満足する力学のなかにだけ意味をもつ。" この文は、Minkowski の死の 1 年後、彼の信奉者の M. Born による論文上の議論によって、最も広い意味で確認された。 Born (Ann. d. Physik, 30, 1909, p. 1) は、相対論的な剛体を、全ての体積要素のなかに、加速運動のなかにおいてさえ、 その速度に合わせて Lorentz 短縮を受けるものとして定義した。 Ehrenfest (Phys. Zeitschr., 10, 1909, p.918) は、そのような物体が回転のなかに置くことができないことを示した; Herglotz (Ann. d. Phys., 31, 1910, p.393) と F. Nöther (Ann. d. Phys., 31, 1910, p.919) は、運動の自由度を 3 しかもたないことを示した。 また、6 または 9 の自由度をもつ相対論的剛体を定義する試みがなされたが、しかし、Planck (Phys. Zeitschr. 11, 1910, p. 294) は、 相対性理論が多かれ少なかれ弾性のある物体にだけ適用できるという見方を述べ、 そして Laue (Phys. Zeitschr. 12, 1911, p. 48) は、Minkowski の方法と彼の文章の図 2 とを採用し、 相対性理論のなかでは、全ての剛体が無限の数の自由度を持たなければならないことを証明した。 最終的に、Helglotz (Phys. Zeitschr. 36, 1911, p. 453) は、それによって、もし、物体運動が Born の意味の相対論的剛体でないとき、 弾性的な歪が常に起きる、弾性の相対的理論を開発した。このように、相対論的剛体は、弾性体の理論のなかで通常の弾性体の理論のなかで 通常の剛体が果たす役割と同じ役割を果たす。


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(2) Page 82, line 18. "もし、2 番目の帯の $dx/dt$ が v に等しいなら、簡単な計算で、$OD'= OC√(1 - v^2/c^2)$ " 図 1. のなかで $α= ∠A'OA, β= ∠B'OA' = ∠C'OB' $とし、その最後のふたつの角度の等号は、新しい座標軸に関するふたつの漸近線の対称位置 からくる(双曲線の共役直径)(*)。一方、$α+β= 1/4 π$ であるから \[ sin 2β= cos 2α. \] 三角形 $OD'C'$ の正弦法則は、次を与える。 \[ {OD' \over OC'} = {sin 2β \over cos α} = {cos 2α \over cos α} \] 又は、$OC'= OA'$ から、 \[ OD'= OA' {cos 2α \over cos α} = OA' cosα (1 - tan^2α) \tag{1} \] もし、$x, t$ が $x, t$ 系の点 $A'$ の座標値であるなら、そして、それゆえ、$x.OA$ と $ct.OC = ct. OA$ がそれぞれ、座標軸からの対応する距離であるなら、 我々は次をもつ。 \[ x.OA = sin α.OA', ct.OA = cos α. O'A', {x \over ct}= tan α={v \over c } \tag{2} \] これらの x と ct の値を双曲線の式に入れて、我々は次を見出す。 \[ OA'^2 (cos^2 α - sin^2 α) = OA^2, OA'= {OA \over cos α √(1 - tan^2 α )} \tag{3} \] それゆえ、(1)と(2)を考慮して、 \[ OD'= OA√(1 - tan^2 α) = OA√(1 - v^2/c^2) \] これは、OA = OC であるから、その式は証明された。

さらに、右角の三角形 OCD において \[ OD= {OC \over cos α} = {OA \over cos α} \] 式 (3) はそれゆえ、また、次のように書くことができ、 \[ OA'= {OD \over √(1 - tan^2 α)} or {OD \over OA'}= √(1-v^2/c^2) \] これは、(4) とともに、次の比例式を与える。 \[ OD : OA' = OD' : OA \] それは、OA' = OC' と OA = OC であるから、それは、page 82 line 29 に採用された次の式に一致する。 \[ OD : OC' = OD' : OC \]

(*) Sommerfeld は、図のなかで Minfowski が t を使った代わりに ct を使っているようにみえる。ーTrans.


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(3) Page 84, line 15. "前方円錐と後方円錐の間のどの世界点も座標系を配置して、Oと同時であるとすることができ、それだけでなく、 O よりこれだけ前、又は後であるとすることもできる。" M. Laue (Phys. Zeitschr., 12, 1911, p. 48) は、この見方を辿って、Einstein の定理を証明した:相対論のなかではどの因果の過程も 光速を超える速度で伝播できない。("信号速度≦c") 事象 O が他の事象 P の原因であって、そして世界点 P が O のふたつの円錐の間の 領域にあると想像しよう。この場合、問題の x, t の参照系に相対的に、光の速度を超えた速度で、O から P まで影響が伝わらなければならない。 この場合、もちろん、結果 P は、原因 O よりも後、 t_P>0 である。しかし、いま、上に引用した言葉に従って、参照系を変更でき、 P が O よりも先になるように、それはいわば、x', t' 系が t'_P <0 であるように無限に多くの方法を選択できる。これは、因果律の概念とは 両立できないものである。P は、それゆえ、O の "後に"いるか又は後方の円錐の中にいなければならない。すなわち、O から送られる信号の 伝播速度は、必然的に≦ c でなければならない。(もちろん、相対論のなかでさえ、光を超えた速度で伝播する過程を定義することは可能である。 これは、幾何学的に行うことができる。例えば、とても単純な方法で、しかし、そのような過程は信号として働くことができない。すなわち、 それらを任意に導入してそれらによって、例えば、離れた場所の運動の連携を得ることはできない。例えば、光学的媒体で、そのなかの "光速" が c を超えるようなものがあるかもしれない。しかし、その場合、光速によって理解されるものは、無限周期的な波列の位相伝播である。 これらは、決して信号に使用できない。他方で、波頭の伝播は、光学媒体のどのような構成とその環境においても、速度 c である; 参照。 A. Sommerfeld, "Festschrift Heinrich Weber," Leipzig, Teubner, 1912, p. 338, 又は Ann. d. Physik, 44, 1914, p. 177.


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(4) Page 85, line 18. Minkowski が一度私に注意したように、固有時 dτ の要素は、完全な微分ではない。このように、もし、ふたつの 世界点 O と P を異なる世界線 1 と 2 で結ぶなら、そのとき、 \[ ∫_1 dτ ≠ ∫_2 dτ. \] もし、1 が t 軸に平行に走るなら、つまり、最初の選択した参照系のなかの移動が静止を示すとき、次のことは明らかである。 \[ ∫_1 dτ= t, ∫_2 dτ< t. \] これによって、動く時計が静止した時計と比較して遅れる。その言明は、Einstein が指摘するように、運動中の時計は、それ自身の固有時を 実際に示すという、証明できない仮説に基づいている。すなわちそれは、どの瞬間も一定と考えられる運動状態に対応した時間をつねに与える。 運動する時計は、世界点 P において静止時計と比較するためには、自然に加速(速さ又は向きの変更を伴う)をもって動かされていなければならない。 運動時計の遅れは、それゆえ、実際に "運動" を示すのではなく、"加速された運動" を示している。その結果、これは、相対性の原理に反する ものではない。


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(5) Page 86, line 4. "曲率の双曲線"という言葉は、曲率の円の基礎的概念の模型の上に正確に形成された。その類似性は、 もし、時間 t の実数座標の代わりに、虚数 u= ict、すなわち、Minkowski の page 88 line 6 に使われた座標の c 倍をを使えば、 解析的恒等性をなす。

Page 84 のx, t 平面での内部双曲線は、 k= ρとして次の式をもつ。 \[ x^2 - c^2 t^2 = ρ^2, \] それゆえ、x, u 平面では、 \[ x^2 + u^2 = ρ^2. \] こうして、φを純虚数角とするとき、パラメトリックな形式で書くことができ、 \[ x = ρ cos φ, u= ρ sin φ \] そのように、私が Ann. d. Phys., 33, p. 649, §8, に示唆したように、双曲運動は、"円周運動"として記述することができ、それによって その主要な特性(場の対流、ある種の遠心力の発生)が特有な明確さをもって特徴づけられる。双曲運動には、我々は次の式をもち、 \[ dτ= {1 \over c} √(- du^2 - dx^2)= {ρ \over c} |dφ| \] そして、次のように、 \[ \begin{align*} x' &= {dx \over dτ}= -ic sinφ , &u' = {du \over dτ} = +ic cosφ\\ x" &= {dx'\over dτ}={c^2 \over ρ} cosφ, &u" = {du' \over dτ} ={c^2 \over ρ} sinφ. \end{align*} \] 双曲運動の加速ベクトルの大きさは、それゆえ、$c^2/ρ$ である。一方、どの世界線も曲率の双曲線に3点で接触され、それは双曲運動として 同じ加速ベクトルをもち、その大きさは、$c^2/ρ $ である。page 86, line 11 に示されたように。

円運動 $x^2 + u^2 = ρ^2$ の中心 M は、明らかに x= 0, u= 0 の点であるから、また、双曲線の全ての点はこの中心から一定の "距離" すなわち、半径ベクトルの一定の大きさをもつ。それゆえ、ρは、図 3 に MP と記される間隔によって示される。


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(6) Page 87, line 1. 力 X,Y,Z を "力ベクトル" とするためには $t'= {dt \over dτ}$ によって乗算されなければならない。 これは、次のように説明できるだろう。

Minkowski page 87, line 10 によれば、運動量ベクトルは、$mx', xy', mz', mt'$ によって定義される。 ここで、$m$ は、"一定の機械的質量" 又は Minkowski が他の場所でより平易にいう、"静止質量" である。 もし、我々が Newton の運動法則 (運動量の時間変化率が力に等しい) を保持するなら、我々は、次を置かねばならない。 \[ {d \over dt} (mx')= X, {d \over dt} (my')= Y, {d \over dt} (mz')= Z. \] 左辺に $t'$ による乗算をすると、Minkowski の意味のベクトルの成分になる。それゆえ、$t'X, t'Y, t'Z$ は、また、"力ベクトル" の 最初の 3 成分である。4 番目のベクトル $t'T$ は、曖昧さなく力ベクトルが運動ベクトルに垂直であるという要求を満たす。 Minkowski の質点の力学方程式は、それゆえ、一定の静止質量を使って、 \[ mx''= t'X, my''= t'Y, mz''= t'Z, mt''= t'T. \] 静止質量の一定性の仮説だけは保持される、しかし、これは、その運動のなかで物体のエネルギー内容が変化しないとき、 又は、Planck の言葉では、運動が "断熱的であり等温的である" を引き続き起こすときである。


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(7) Page 88 and 89.ここで与えられた構成の特性は、それらがどの特別な参照系からも完全に独立していることである。 それらは、Minkowski の仮説として page 88 に "世界線間の相互の関係"(又は世界点)を"物理法則の最も完全な表現"として与える。 page 89 には例えば、電磁ポテンシャル(4元ポテンシャル)が、相対論的な観点からは独立な不変の意味をもたない、 伝統的なスカラーとベクトルとの部分に分割されるまでは、$x, y, z, t$ の座標の軸に参照されない。

Minkowski への評論として、私が導く、Maxwell の方程式から Minkowski の方法による 4 元ポテンシャルとふたつの電子間 の動質作用についての不変の解析的形式は、Minkowski のこれらの構成とは別の見方を与える。ここで詳細に立ち入らずに私は、 私の Ann. d. Phys., 33, 1910, p. 649, §7 又は M. Laue の "Das Relativistätsprinzip," Braunschweig, Vieweg, 1913, §19 を参考として挙げる。また、Minkowski の相対性原理への言及を比較せよ。私自身の編集による、Ann. d. Phys., 47, 1915, p.927, そこでは4元ポテンシャルが電磁力学の先頭に位置され、この理論は、こうしてその最も単純な形式に還元された。


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(8) Page 89, line 6. "第 2 種のベクトル"(又は、それを私が呼ぶ提案をし、受け入られるように見える言葉 "6ベクトル") による電磁場の不変の表現は、Minkowski の電磁場の見方の特に重要な部分である。そこで、Minkowski の第 1 種又は4元ベクトル への概念は、Poincaré (Rend. Circ. Mat. Palermo, 21, 1906) によって部分的に予期されたものであった。6 ベクトルの 導入は新しい。6ベクトルと同じく、力学のねじり(単独の力の代わりに対として)は、6つの独立のパラメタに依存する。 そして、電磁場が、"その場の電気的と磁気的力への分離が相対的なものである" ように、ねじりについても、よく知られるように、 単独の力への分割と対は、非常に多くの方法によってなされる。


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(9) Page 90, line 9. 文章中に言及された、ゼロ加速の特別な場合の Newton の法則の Minkowski の相対論的形式は、Pincaré (loc. cit.) によって提案されたより一般的な形式に包含された。他方、それはさらに、加速を考慮に入れ、後者(訳注:前者)よりも 先に進んだ。Minkowski 又は Pincaré の重力法則の定式化は、相対論と Newton の法則を多くの方法で和解させることができる ことを示している。その法則は点の法則としてあり、重力はそれゆえ、ある意味で遠隔作用である。Einstein が 1907 から開発を続 けている一般相対論は、重力の問題のより深い把握を得る。重力は、場の作用としてみなされ、時空の微分方程式として記述される だけでなく、ー現在の視点から、それは拒絶できないようにみえるが、ー そこで Minkowski と Pincaré がさらに外部的な仕方 で仮説に適用した、どの変換にも拡張された相対性原理に組織的にまた結合している。一般相対論のなかでは、重力から又は一緒に、 時空構造が決定される。このように、相対性の原理は、Minkowski の概念の拡張によって、それが全ての点変換において物理量の 共変性を仮定するように定式化された。そして、不変の線形要素の係数が物理法則に入ってきた。


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(10) Page 90, line 33."重さのある物体のなかの電磁過程の基本的方程式" は、Minkowski Göttinger Nachrichten, 1907 によって開発された。それは、彼にとって完全な、"電子の理論に基づく方程式の導出" をかなえなかった。この方向の彼の試論は、 M. Born によって完成され、"基本方程式"とともに、Otto Blumenthal (Leipzig, 1910) の編集による論文集の第1巻をなしている。