NASA サイト掲載のハッブルの 1929 年論文 の訳である。
エドウィン・ハッブル
ウィルソン山天文台、ワシントンのカーネギー財団
1929 年 1 月 17 日に連絡
太陽の銀河系外星雲に対する速度の決定は、数 100 km の項を含む変数として現れる。 このパラドックスの説明は、見掛けの動径速度と距離の相関と思われてきたが、結果は、決して納得できるものではない。 この論文は、よく信頼できると信じられる星雲の距離だけに基づいた、その問題の再検証である。
銀河系外星雲の距離は、究極的には、その型が認識できる含まれた星々の絶対光度評価基準の応用に依存する。 これらは、とりわけ、セファイド変光星、新星、そして青い星を、その星雲の放射のなかに含んでいる。 数値は、セファイドの間の周期-光度関係のゼロ点に依存し、他の評価基準は、距離のオーダをチェックするだけである。 この方法は、現存する機器によってよく分解される数少ない星雲に制限される。 これらの星雲についてのある研究は、それに伴うその中にどの星であっても認識できれば、ほぼ均一な星の絶対光度の 上限をもつ可能性があり、少なくとも晩期型渦巻と不規則星雲との中には、-6.3 (写真等級)のオーダをもつことを示している。 そのような星雲の中の最輝星の見掛けの明るさは、かような評価基準であり、粗いので注意深く応用されるべきとはいえ、 そのなかに幾つかの星々が検出可能でさえあれば、すべての銀河系外システムの距離の合理的な推定を与えるのである。
表1 含まれる星々から又はクラスタ内の平均輝度から推定された距離をもつ星雲
object ms r v mt Mt S. Mag. .. 0.032 + 170 1.5 -16.0 L. Mag. .. 0.034 + 290 0.5 17.2 N.G.C.6822 .. 0.214 - 130 9.0 12.7 598 .. 0.263 - 70 7.0 15.1 221 .. 0.275 - 185 8.8 13.4 224 .. 0.275 - 220 5.0 17.2 5457 17.0 0.45 + 200 9.9 13.3 4736 17.3 0.5 + 290 8.4 15.1 5194 17.3 0.5 + 270 7.4 16.1 4449 17.8 0.63 + 200 9.5 14.5 4214 18.3 0.8 + 300 11.3 13.2 3031 18.5 0.9 - 30 8.3 16.4 3627 18.5 0.9 + 650 9.1 15.7 4826 18.5 0.9 + 150 9.0 15.7 5236 18.5 0.9 + 500 10.4 14.4 1068 18.7 1.0 + 920 9.1 15.9 5055 19.0 1.1 + 450 9.6 15.6 7331 19.0 1.1 + 500 10.4 14.8 4258 19.5 1.4 + 500 8.7 17.0 4151 20.0 1.7 + 960 12.0 14.2 4382 .. 2.0 + 500 10.0 16.5 4472 .. 2.0 + 850 8.8 17.7 4486 .. 2.0 + 800 9.7 16.8 4649 .. 2.0 +1090 9.5 17.0 ------ Mean -15.5
ms = 含まれる最輝星の写真等級
r = 10^6 パーセク単位の距離、最初の2つは Shapley の値。
v = km/sec での測定速度。N.G.C. 6822,221,224, 5457 については Humason によって最近決定された。
mt = Hopman によって較正された Holetschek の視覚等級。最初の 3 天体は Holetschek によって測定されていない。
mt の値は、そのような入手できるデータに基づいた、著者による推定値を表す。
Mt = mt と r から計算される全体視覚絶対等級
最終的には星雲自身は、確定した絶対光度のオーダを表し、 4 または 5 等級の範囲にあって、平均等級が M (視覚)= -15.2 [1]を示す。 個々のケースに統計的平均を応用することはほとんど利点がなく、考慮しうる数字が含まれているところ、そしてとくに多くの星雲のクラスタでは、 それらの星雲の見掛けの光度の平均が、平均距離の信頼できる推定を提供する。
動径速度は、46 の銀河系外星雲について現在得られているが、個々の距離はたった 24 についてしか推定されていない。なぜなら、他の N.G.C. 3521 については、推定は、多分可能であるが、写真がウィルソン山では得られていない。データは、表 1 に与えられている。最初の 7 つの距離は、最も信頼できるもので、M31 の随伴星雲 M32 を例外として、それに含まれる多くの星々の観測研究によっている。 次の 13 個の距離は、恒星の光度の均一な上限という評価基準によっていて、多分かなりの誤差を被っているが、現時点で得られる最も 合理的な値と信じられるものである。最後の 4 つの天体は、乙女座クラスタのなかに現れるものである。距離は、そのクラスタに付与され、 2 x 10^6 パーセクが星雲の光度の分布から、晩期型の渦巻のいくつかのなかの星の光度からとともに、導かれたが、 そして Harvard の1000 万光年という推定[2]からは、いくらか異なっているものである。
表のなかのデータは、距離と速度の間の線形の相関を示している。速度は、太陽系の運動によって直接使われるか、較正されるかは、昔からの解に従う。 これは、太陽の運動について新しい解を示唆する。距離が、K の項の係数として導入される、すなわち、速度が直接に距離によって変わると思えること、 そして、それゆえ、K は、この効果の単位距離あたりの速度を表すのである。状態方程式は、次の形をとる。
rK + Xcos(alpha)cos(delta) + Y sin(alpha)cos(delta)+ Zsin(delta) = v.
ふたつの解が作られ、ひとつは、24 星雲個々に作られ、もうひとつは、方向と距離の概略に従って、それらを 9 つのグループに統合したもので作られた。 それらの結果は、
24 objects 9 groups X - 65 +/- 50 +3 +/- 70 Y +226 +/- 95 +230 +/-120 Z -195 +/- 40 -133 +/- 70 K +465 +/- 50 +513 +/- 60 km./sec. per 10[6] parsecs. A 286deg. 269deg. D +40deg. +33deg. Vo 306 km./sec. 247 km./sec.
そのような、少ない材料、非常に貧弱な分布のわりに、結果は、かなり確定的である。ふたつの解の間の差異は、おもに4つの乙女座星雲によっていて、 それは、最も遠い天体であり、すべてがクラスタの固有運動を分け合っていて、K の値と、それゆえ、Vo の値に影響を与えている。 そのような固有運動の影響を減らすためには、より遠い天体の新しいデータが必要であろう。一方、丸めた値、ふたつの解の間の中間的な値は、 その値の多分オーダを表現している。例えば、 A = 277°, D = +36°(Gal. long. = 32°, lat. = +18°), Vo = 280 km/sec, K = +500 km/sec /百万パーセク である。Stromberg は、データの異なるグルーピングによる独立な解によるこれらの値の一般的なオーダをチェックしてくれた。
その方程式のなかに導入された定数の項は、小さく負であることが発見された。このことは、古い定数 K の必要性を捨てるようにみえる。 この種の解は、古い K を k + lr + mr[2] によって置き換える Lundmark[3] によって出版された。彼の取る解は k= 513 を与え、それは、 700 のオーダという以前の値と違っていて、そしてそれゆえ、少し利点を提案する。
表 2 動径速度から距離が推定された星雲
object v vs r mt Mt N.G.C.278 + 650 - 110 1.52 12.0 -13.9 404 - 25 - 65 .. 11.1 .. 584 + 1800 + 75 3.45 10.9 16.8 936 + 1300 + 115 2.37 11.1 15.7 1023 + 300 - 10 0.62 10.2 13.8 1700 + 800 + 220 1.16 12.5 12.8 2681 + 700 - 10 1.42 10.7 15.0 2683 + 400 + 65 0.67 9.9 14.3 2841 + 600 - 20 1.24 9.4 16.1 3034 + 290 - 105 0.79 9.0 15.5 3115 + 600 + 105 1.00 9.5 15.5 3368 + 940 + 70 1.74 10.0 16.2 3379 + 810 + 65 1.49 9.4 16.4 3489 + 600 + 50 1.10 11.2 14.0 3521 + 730 + 95 1.27 10.1 15.4 3623 + 800 + 35 1.53 9.9 16.0 4111 + 800 - 95 1.79 10.1 16.1 4526 + 580 - 20 1.20 11.1 14.3 4565 + 1100 - 75 2.35 11.0 15.9 4594 + 1140 + 25 2.23 9.1 17.6 5005 + 900 - 130 2.06 11.1 15.5 5866 + 650 - 215 1.73 11.7 -14.5 ------ --------- Mean 10.5 -15.3
上で与えられたふたつの解の残差、平均して 150 と 110 km/sec であるが、それらは、それぞれ個々の星雲とその集団の平均固有運動を表している。 結果をグラフの形式で表示するために、観測した速度から太陽の運動を消去した残り、距離に項と残差との加算、を距離に対してプロットした。 残差の拡がりは期待され得るとおりほぼ滑らかで、一般に解の形式が適切であることを表している。
22 の距離が得られない星雲は、ふたつの方法によって扱われ得る。ひとつは、平均の見掛けの等級から導かれたその集団の平均距離は、太陽運動を 較正した平均速度と大差ないものである。その距離 1.4 x 10^6 パーセクについて 745 km/sec という結果は、前のふたつの解の間にはいり、K の値として、 提案した 500 km/sec に対して 530 を示した。
もうひとつは、個々の星雲の分布が以前に決定された距離と速度の関係を仮定することで検証できることである。太陽速度を較正した速度から距離を計算して 絶対等級を見掛けの等級から導くことができる。結果は、表 2 に与えられ、それを星雲の間の絶対等級の分布、その距離が他の評価基準から導かれた 表 1 と比較することができる。N.G.C. 404 は排除できる。なぜなら、観測された速度が非常に小さく、固有運動が距離効果よりも大きいに違いないからである。 天体は、必ずしも例外にすべきでないが、しかし、ある距離を指定できる、固有運動と絶対等級がともに以前に決定した範囲にあるからである。 ふたつの平均等級 -15.3 と -15.5、4.9 と 5.0 等級の範囲、そして、これらふたつの全く独立なデータの集団の頻度分布が近く類似していること、 そして、平均等級のわずかな差異さえも、非常に明るい乙女座クラスタの星雲の選択に理由付けできることである。このまったくに、強制のない合意は 速度-距離の関係の有効性を支持している。最終的に、次のことは、記録する価値のあることである。ふたつの表を結合したなかの絶対等級の頻度分布は、 数多くの星雲のクラスタのなかに見出すそれと大差ないものである。
結果は、速度と星雲間の距離の間に粗く線形の関係を打ち立てるものである。星雲の速度についてはすでに出版されていて、その関係は、速度の分布を 主動することを示している。より大きなスケールのできごとを研究するためにウィルソン山で Humason は、観測できる最も遠い星雲の速度を確かに定める プログラムを始めた。これらは、自然に、星雲のクラスタ内の最も明るいものになる。最初の確定的結果、N.G.C. 7619 の v= +3779 km/sec は、全体として 現在の結論と整合するものである。太陽の運動を較正し、この速度は、+3910 それは、K= 500 として距離の 7.8 x 10^6 パーセクに対応する。一方、 見掛けの等級が 11.8 であり、そのような距離の絶対等級は、-17.65 である。それは、クラスタ内の最輝星雲にふさわしい。未確定ながらの距離、 この星雲がメンバーであるクラスタからは独立に導かれたものは、7 x 10^6 のオーダのものである。
近い将来、新しいデータが現在の研究の重要性を変化させる可能性が期待され、もし、その解が確証されればその重みを何倍にもするだろう。 このため、現在の結果の明白な結論を詳細に渡って議論することは時機尚早と思われる。例えば、もし、クラスタに対する太陽の運動が銀河系の 回転を表しているなら、この運動はその星雲の結果から差し引かれ得て、残差は、銀河系外の星雲に対する銀河系の動きを表現するだろう。
しかしながら、目立つ特徴は、速度-距離関係が多分、ド・シッター効果を表している可能性である。そしてそれゆえ、その数値データは、一般的な宇宙の曲率 の議論に持ち込まれ得る。ドシッター宇宙論では、スペクトル変移が起きるふたつの原因がある。原子振動の表面的なスローダウンと、物質粒子が拡散する一般的傾向である。 後者は加速を含み、それゆえ時間的の要素をもたらす。これらふたつの効果の相対的重要性は、距離と観測される速度の間の関係の形式を決定するに違いない。 そして、この関連において、次のことが強調され得るだろう。現在の議論のなかで見出された線形の関係は、距離の制限された範囲を表す 1 次近似であることである。
[1]Mt. Wilson Contr., No. 324; Astroph. J., Chicago, III., 64, 1926 (321).
[2]Harvard Coll. Obs. Circ., 294, 1926.
[3]Mon. Not. R. Astr. Soc., 85, 1925 (865-894).
[4]These PROCEEDINGS, 15, 1929 (167).