"相対的状態"による量子力学の定式化*

ヒュー・エベレット III +

Palmer Physical Laboratory, Princeton University, Princeton, New Jersey
Hugh.Everett III, "``Relative State'' Formulation of Quantum Mechanics"
訳:片山泰男(Yasuo Katayama) June 18 2016

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目次

1. 導入
2. 量子力学の伝統的又は"外部観測"定式化の適用性の領域
3. 孤立系への内部的な量子力学
4. 相対的状態の概念
5. 観測
6. 議論

(*) 学位論文はプリンストン大学に 3/1 1957に Ph.D 学位に必要な部分的履行で投稿された。早期の草稿(日付 1月 1956 年)は、多くの物理学者に回覧され 彼らのコメントは助けになった。Niels Bohr 教授、H. J. Groenewwald 博士、Aage Peterson 博士、A. Stern 博士、そして、L. Rosenfeld 教授は責任をも たないが、挙げた温かく有益な反対に感謝する。特に最大に感謝するのは、Jhon A. Wheeler 教授による、彼の連続的な案内と激励に。謝辞は、また国立科学 財団(NSF)のその奨学支援にも述べられる。

(+) 現在住所: 兵器システム評価グループ、ペンタゴン、ワシントンDC


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1. 導入

一般相対論の量子化の仕事は、現在の量子力学が時空の幾何学自身のような非常に基本的な構造に適用されるとき、 その表式と解釈の意味について深刻な疑問を提起する。この論文は、量子力学の基礎づけを明確にすることを探求する。 それは、一般相対論への適用に適すると信じる形式への量子の理論の再定式化を与える。

その目的は、圧倒的な問題の多様性のなかでその有用性を誇示してきた、量子理論の伝統的な形式の否定や反論でなく、 それから伝統的な解釈を導出できる、新しいより一般的で完全な定式化を提供することである。

それゆえ、この新しい定式化は古い定式化に対して、理論へのメタ理論の関係である。すなわちそれは、 古い理論が研究でき明確化できた、自然と整合性とそして適用性の領域において、下にある理論である。

新しい理論は伝統からの根底的な離脱には基づかない。古い理論のなか観測を扱う特殊な仮定を新しい理論のなかで省略する。 変更した理論はそれゆえ、新しい性格を必要とする。理論の内実と経験の世界の特性との間に可能ないかなる同定より先に、 それ自身、分析されなけばならない。同定がなされたとき、観測を扱う伝統理論の省略された仮定への立ち帰りを導くだろう、 しかし、それらの役割と論理的位置を明確にするような方法で。

我々は伝統的定式と、その修正の探索を動機付けるいくつかの理由の短い議論で始める。


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2. 量子力学の伝統的又は"外部観測"定式化の適用性の領域

我々は、量子力学の伝統的な、又は"外部観測"形式は、本質的に次をもつという:物理系は、状態関数$ψ$ によって完全に記述され、 それはヒルベルト空間の要素であって、さらに外部の観測者によって系になされる様々な観測の結果の確率を指定する程度だけの情報を与える。 状態関数が変化することのできる基本的に異なったふたつの方法がある^1:

過程1:固有状態$Φ_1,Φ_2, ...,$ をもつ量の観測によってもたらされ、状態$ψ$が状態$Φ_j$ へ確率$|(ψ,Φ_j)|^2$ で変化するであろう非連続的な変化。

過程2:波動の方程式 $∂ψ/∂t = A ψ$ (ここでAは線形演算子)に従う、孤立系の時間にともなう連続的決定論的な状態変化。

この定式化は多くの実験を記述する。それに反する実験的証拠は、知られていない。

全ての考えうる状況がその数学的定式化の枠組みに適しているわけではない。例えば、観測者または測定装置に対象系を加えて 構成される孤立系を考えよう。時間にともなう全体系の状態の変化は、過程2によって記述されるだろうか? もしそうなら、それは、非連続的、確率的な過程1のような過程は実行され得ないことを表すだろう。 もしそうでないなら、観測者を含む系が他の全ての物理系に我々が受け入れるような、同種の量子力学記述の対象でないことを 我々は受け入れることを強制される。その質問は、心理学の領域にあるからと、除外することはできない。 量子力学の"観測者" の議論の多くは、光電気セル、写真乾板、そして同種の装置、機械論的態度をほとんど争うことのできない ものを伴わなければならない。次下においてもし、同じ機械論的分析レベルにおいて、彼が観測者をより親しい感覚のもとに 考えることを望まないとき人は、問題のこのクラスに自身を制限できるとする。

伝統的な定式化の過程1と2のどの混合が、近似的測定が効果的であるような場合に適用されるべきだろうか;つまり、 それは、装置または観測者が対象の系に弱くだけ、かつ制限された時間だけ、相互作用する場合であろうか? この近似測定の場合、適切な理論が次を指定しなければならない。(1) 装置の読み出しに対応した対象系の新しい状態、 (2) この読み出しが起きるだろう確率。 フォン・ノイマンは、投影演算子の方法によってある特殊なクラスの近似測定をどう扱うかを示した^2。しかしながら、 投影演算子による、全ての近似測定の一般的扱いは、不可能であることを(4章に)示すことができる。

量子力学の伝統的な定式化を時空幾何学自身にどうやって適用させることができるだろう? これは、特別に、閉じた宇宙の場合に先鋭である^3。系の外側に立ってそれを観測する位置が存在しない。 ある状態から他の状態に、それの遷移を作り出すそれの外側というものがない。 エネルギーの固有状態の親しい概念でさえ、完全に適用不可能である。エネルギー保存の法則の導出に、 系の全ての部分と相互作用とを含むに十分な拡張した覆う表面の積分の方法で、全体エネルギーを定義する^4。 しかし、閉宇宙では表面がより多くの体積を含めば含むほど、それは究極的には無に消滅する。閉宇宙の 全体エネルギーの定義の試みは、無は無に等しいという、無意味な言説にまで、崩壊する。

閉宇宙の、近似測定の、そして観測者を含んだ系の、量子記述はどのようであるか? これら3つの質問には 共通のひとつの特徴がある。それらは全て、孤立系の内部量子力学を問うのである。

どの方法も伝統的な量子力学を外部観測 の対象でない系に適用することは明らかにできない。 定式化の全体の解釈的な構造は、外部観測の表記の上にある。観測の様々な可能な利得の可能性は、上記の過程1にだけにある。 定式化のその部分なしには、伝統的機械に何が物理的解釈が帰されても、何も方法はない。しかし、過程1は、外部観測の 対象でない系にとって、問題外である^5。

(1) 我々は J. von Neumann の量子力学の数学的基礎, R.T. Beyer 訳(プリンストン大学出版、プリンストン 1955) の用語と表記を使用する。
(2) 参照(1) 4章4節。
(3) A. Einstein, The Meaning of Relativity (プリンストン大学出版、プリンストン 1950) 第3版、p.107 をみよ。
(4) L. Kandau と E. Lifshitz, The Classical Theory of Fields, Hamermesh 訳(Addison-Wesley 出版、ケンブリッジ、1951). p.343。
(5) この点について、N.Bohr と L. Rosenfeld の議論をみよ。Kgl. Danske Videnskab. Selskab, Mat.-fys. Medd. 12. No. 8 (1933)。


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3. 孤立系への内部的な量子力学

この論文は、純粋に波動力学(過程2だけ)を完全な理論とみなす。それは、線形の波動方程式に従う波動関数は、どこでも、 いつでも、例外なく、全ての孤立物理系の完全な数学的モデルを供給することを仮定する。それはさらに、外部観測の対象で ある全ての系はより大きい孤立系の部分であるとみなすと仮定する。

波動関数は、先験的な解釈なしに、基本的な物理的な実体と受け止められる。解釈は、理論の論理的構造を調査後にだけくる。 ここではつねに、理論自身がその解釈の枠組みを設定する。

どの解釈においても、理論の数学モデルを経験との対応に繋げることは必要である。この目的には、理論のなかでそれ自身、 物理の系であると扱われる観測者の抽象モデルを定式化することが必要である。孤立系は、他のサブ系と相互作用するそのような 観測者モデルを含んでいると考え、周囲のサブ系との相互作用の結末として観測者に起きる変化を導き、そして、経験に親しい 言語で変化を解釈することが必要である。

4章では、サブ系の成分の状態の見地から、複合系の状態を再現することを調べる。数学は、ひとに相対的状態の概念を 次の意味において理解させる:サブ系の成分は、複合系の残りとは独立した単独のよく定義された状態であるとはいえない。 ひとつのサブ系にとって、任意に選択した状態には、複合系の残りにとって、唯一の相対的状態が対応して存在する。 相対的状態は通常、最初のサブ系の状態の選択に依存する。こうして、ひとつのサブ系の状態が独立した存在をもたず、残りの サブ系の状態だけによって固定される。言葉を換えれば、サブ系によって占有される状態は独立でなく、相関している。 系の間のそのような相関は、系が相互作用するときにはいつでも生起する。現在の定式化のなかの、全ての測定と観測の過程が、 単純に、含まれる物理系間の相互作用ー強い相関を生み出す相互作用であるとみなされるべきである。 フォン・ノイマンのために、測定の単純なモデルが、この視点で分析された。

5章では、観測問題の抽象的扱いを与える。これには重ね合わせ概念と、複合系の状態がサブ系の状態から形成される一般的規則 だけを用い、結果が最大の一般性をもち、これらの原理が成り立つために量子理論のどの形式にも適用可能であるようにする。 対象系の状態に相対した、観測者の状態について推論が引き出される。観測者(磁気テープ記憶、計数システム、など)の経験は、 過程1に基づく、量子力学の定式、伝統的な"外部観測者" の予測と完全に調和する。

6章は、量子力学の定式化、"相対的状態" の要点のまとめである。


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4. 相対的状態の概念

我々はいま、複合系の波動力学の定式化の結末を研究する。もし、複合系Sが、関係するヒルベルト空間H1とH2をもつ S1とS2のふたつのサブ系で構成されているならば、そのとき、通常の複合系の定式化に従って、ヒルベルト空間Sは、 H1とH2とのテンソル積(H= H1 ⊗ H2 で書かれる)である。これはもし、{$ξ^{S_1}$}と{$ξ^{S_2}$} 集合がS1とS2それぞれの状態の正規直交完全集合であれば、Sの状態は、重ね合わせで書ける: \[ Ψ^S = Σ_{i,j} a_{ij} ξ_i^{S_1} η_j^{S_2} \tag{1} \]

(3.1)[sic] から、Sが決定した状態$Ψ^S$にあっても、サブ系S1とS2は、互いに独立な決定した状態のような何者ももたない ($a_{ij}$ のひとつを除きゼロである特別なケースを例外にして)。

我々は、しかしながら、ひとつのサブ系のなかの状態をどのように選択しても他のサブ系の対応する相対的 状態を 唯一に割り当てることができる。例えばもし、我々がS1の状態として$ξ_k$を選択し、一方、複合系 S は、(3.1)[sic] によって与えられ状態 $Ψ^S$ にあるとき、S2の相対的状態$Ψ(S_2; relξ_k, S_1)$ は、次であろう: \[ Ψ(S_2; relξ_k, S_1) = N_k Σ_j a_{kj} η_j^{S_2} \tag{2} \] ここで、$N_k$ は、正規化定数。この相対的状態 $ξ_k$ は、直交成分 $ξ_k$ のための基底 {$ξ_i$}(j!= j) の選択に独立である。 そして、それゆえ、$ξ_k$ だけによって唯一に決定される。それゆえ、S1の任意の状態についてのS2の相対的状態を見出すには、 S1の基底の1要素として望みの状態を含む任意のS1, S2の基底対を使って上の過程を実行するだけでよい。S2の状態に相対的に S1の状態を見出すには過程のなかのS1S2を交換する。

伝統的、または"外部観測"形式では、S2の相対状態、$Ψ(S_2; relΦ, S_1)$、S1のひとつの状態$Φ^{S_1}$ は、 S1が既に測定され、状態 $Φ^{S_1}$ にあるとーーすなわち、$Φ^{S_1}$ がS1の測定の観測の固有値に対応する、固有関数であるときの、 S2の全ての測定の結果への条件確率分布を与える。

S1の基底の選択にとって、{$ξ_i$} は、つねにS, (1) の状態を, それぞれがS1の基底{$ξ_i$}からの状態を含み、その相対的状態がS2 である、状態対の単独の重ね合わせとして、再現可能である。こうして、(2) から (1) は次の式で表される。 \[ Ψ^S = Σ _i 1/N_i ξ_i^{S_1} Ψ(S_2; relξ_i, S_1) \tag{3} \] これは、しばしば、重要な表式である。

まとめ:一般的にひとつの複合系のひとつのサブ系には、単独の状態のようなものは存在しない。サブ系は、系の残りの状態に独立な 状態をもたず、サブ系の状態は一般に互いに相関している。ひとつのサブ系の状態を任意に選択できるが、それは残りの相対的状態に 導かれる。こうして、我々は、複合系の形式性を含意する、基本的な状態の相対性に直面する。サブ系の絶対的な状態を問うことは、 無意味であり、ーサブ系の残りの与えられた状態に相対的な状態だけを問うことができる。


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この点で、フォン・ノイマンによる単純な例を考察しよう。それは測定過程のモデルを提供する。この例の議論は、"観測"の分析に土台を 用意する。我々は単独の座標 q (粒子の位置のような)と、単一座標 r の装置(例えば、メータ尺の位置)とだけをもつ系から開始しよう。 さらに仮定するのは、それらが初期には独立で、結合した波動関数が、$Ψ_0^{S+A} = Φ(q) η(r) $ ここで、Φ(q) は、初期の波動関数、 そして、$η(r)$ は、初期の装置の関数である。ハミルトニアンは、ふたつの系がt= 0 とt= T の期間以外は、相互に作用しないようなもの にする。その期間、全体のハミルトニアンは、単純な相互の作用だけを含む。 \[ H_I= -iħq(∂/∂r) \tag{4} \] そのとき、状態は、 \[ Ψ_t^{S+A} (q,r) = Φ(q) η(r - qt) \tag{5} \] は、シュレディンガー方程式の解であり、 \[ iħ(∂Ψ_t^{S+A}/∂t) = H_I Ψ_t^{S+A} \tag{6} \] は、時間t=0の初期条件を指定する。

(5) から時刻t= T(その時刻に相互作用が停止する)に、もはやどのような決定した独立な装置の状態も独立な系の状態もない。 装置はそれゆえ、決定した対象-系値を示さず、過程1のようなことは何も起きない。

それにも関わらず、我々は、全体の波動関数 (5) をサブ系状態対の重ね合わせとみることができる。その各要素が決定したq値 をもち、それに対応して移動した装置の状態をもつ。こうして、状態の相互作用 (5) の後、次の式をもつ: \[ Ψ_t^{S+A} = ∫Φ(q')δ(q - q')η(r - qT)dq', \tag{7} \] は、状態$Ψ_{q'} = δ(q - q')η(r - qT)$ の重ね合わせである。重ね合わせのこれらの要素、$Ψ_{q'}$ それぞれは、系が決定した 値 $q= q'$ をもつときの状態を表し、そのなかで、装置が元の状態から $q'T$ だけ移動した状態をもつ。これらの要素、$Ψ_{q'}$ は そのとき、係数$Φ(q')$で重ね合わせて、全体の状態(7)を形成する。

逆に、もし我々が、装置の座標が一定である表現に変換すると、我々は(5) を次のように書く。 \[ Ψ_T^{S+A} = ∫(1/N_{r'})ξ^{r'}(q)δ(r - r')dr', \] ここで、 \[ ξ^{r'}(q) = N_{r'} Φ(q)η(r' - qT) \tag{8} \] 及び、 \[ (1/N_{r'})^2 = ∫ Φ^* (q) Φ(q) η^* (r' - qT) η(r' - qT) dq. \] そのとき、$ξ^{r'}(q)$ は、決定値 $r= r'$ の装置状態$δ(r - r')$に対する、相対的系状態関数である^6。

もし、$T$が十分大きいなら、又は$η(r)$ が十分に鋭い($δ(r)$に近い)なら、そのとき、$ξ^{r'}(q)$ は、$δ(q - r'/T)$ であり、 相対的系状態$ξ^{r'}(q)$は値が$q=r'/T$のほとんど固有状態である。

我々は、(8)が状態$Ψ_{r'}$の、重ね合わせであり、 そのそれぞれが 装置が決定値$ r'$ を記録し、 系は、近似的に$q=r'/T $に対応する測定の固有状態に留まることをみた。非連続的な固有状態への"飛躍"は、このように、 相対的な陳述でしかなく、重ね合わせになった全体の波動関数の分解モードに依存して、そして、特別に選ばれた装置座標に 相対的である。これまで、完全な理論は、同時に存在する重ね合わせの全ての要素に関係し、全体の過程は、全く連続的である。

フォン・ノイマンの例は、より一般的な状況の特殊な場合でしかない。任意の対象系に相互作用する任意の測定装置を考察しよう。 相互作用の結果として、測定装置の状態は、もはや、独立に定義することはできない。それは、対象系の状態に相対的に だけ定義できる。言葉を代えれば、ふたつの系のふたつの状態の間には相関だけがある。それは、まるで、そのような測定では、 何事も設定できないようである。

この不確定な振舞は、我々の観測とはとても矛盾するようにみえる、なぜなら、物理的対象は、つねに我々に確定した位置を もつように表われる。我々は過程2のみに基づき築かれ、この特徴をもつ波動力学理論を、実験と調停できるだろうか、または、 その理論は、支持できないとして廃棄されるべきだろうか。この問いに答えるために、理論の枠組のなかで観測問題自身を考察する。

(6) この例は、近似測定のモデルを提供する。しかしながら、相互作用 $ξ^{r'}(q)$ 後の相対的系状態は、 通常、元の系状態$Φ$からどの投影演算子$E$ を適用しても生成できない。証明: $ξ^{r'}(q) = NEΦ(q) = N'Φ(q)η(r' - qt)$ (ここで$N, N'$ は正規化定数) の反対を仮定すると、そのとき、 \[ N(NEΦ(q)) = NE^2 Φ(q) = N'' Φ(q) η^2 (r' - qt) \] そして、$E^2 Φ(q) = (N''/N) Φ(q) η^2 (r' - qt)$。 しかし、条件 $E^2 = E $は、$E$が投影であるために必要だが、それは、$N'/N'' η(q) = η^2(q)$ を意味し、これは一般に偽である。


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5. 観測

我々は、純粋に物理的系と考えられ、理論のなかで扱われる、観測者に表われる現象の外見について、演繹をする作業をもつ。 これを達成するために、そのような観測者のいくつかの現在の特性を、過去の観測者の経験の特徴とともに、特定することが 必要である。 こうして、観測者Oが事象αを観測したことをいうためにOの状態は、αに依存して以前の状態から新しい状態に変化している ことが必要である。

我々の目的には、観測者が記憶(すなわち、比較的永久的な性質の観測者の過去の経験に対応したその状態をもつ部品)を持つと 考えると足りる。観測者の過去の経験について演繹をするためには、数学的モデルのなかに表われるような記憶の永久的内容に 演繹しても十分である。

観測者のモデルとして、我々は、望むなら、自動的に機能する機械で、受容装置と連携した記録装置をもって、過去の受容データ と機械の構成を登録できるようにする。我々は、さらに仮定するのは、機械の現在の行動が、現在の受容データだけでなく、 その記憶の内容によっても、決定されるように構築されていることである。そのような機械は、観測(測定)のシーケンスを実行でき、 さらに、過去の結果に基づいて、未来の実験を決定できる。

もし我々が、現在の受容データと機械の構成とが即時に記憶に記録されるなら、そのとき、与えられた瞬間の機械の行動は、 記憶だけの関数と考えられ、全ての関係する[sic] 機械の経験は、記憶に収容されている。

そのような機械にとって、我々は次のようなことをいうことが正当化できる。"機械はAを理解した"または、"機械はAを認識している" もし、Aが起きることが記憶のなかに再現し、一方、機械の未来の行動がAの生起に基づくとき。事実、主観的経験の全ての習慣的な 言語は、そのような機械に全く適用でき、複雑な自動機械と仕事する人々によく知られるように、それらの行動を扱うとき最も自然 で役立つ表現のモードになる。


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量子力学的な観測者を表現する系を扱うとき、我々はそれを状態関数 $Ψ^O$ に帰する。状態 $Ψ^O$ がその記憶が事象 A, B, ..., Cの 再現を含む観測者を記述するとき、我々はこのことを記憶シーケンスを添字の括弧のなかに書いて示す: \[ Ψ^O_{[A,B,...,C]} . \tag{9} \] A, B, ... , C, の記号は、我々は時間的な順序を想定し、それゆえ、それらは観測者の過去の経験に対応する記憶の構成を表している。 これらの構成は紙テープの穴、磁気リールへの印字、リレースイッチング回路の構成、又は、脳細胞の構成とさえ、みなしてよい。 我々は"観測者が事象A, B, ... , C の継続を経験した"と解釈できるものであればよい。(我々は、時時、記憶シーケンスのなかに ドットを書く ...A,B,...,C のは、以前の記憶の可能な存在で、それが考察のケースには関わらないことを表す。)

数学的モデルは、そのような観測者系と他の物理系の相互作用(観測)の扱いを過程2の波動力学の枠組のなかで探索し、それらが そのとき、観測者の過去の経験の記録として、解釈されるべきである、結果的な記憶構成を推論する。

我々は、"よい"観測を構成するものを定義し始める。 量Aの、固有関数$Φ_i$をもち、系Sの、初期状態$Ψ^O$ の観測者による、 よい観測は、相互作用から構成され、特定の時間内に、各(全体)状態を変換し、 \[ Ψ^{S+O} = Φ_i Ψ^O_{[...]} \tag{10} \] が、新しい状態へ、 \[ Ψ^{S+O'} = Φ_i Ψ^O_{[...α_i]} \tag{11} \] ここで、$α_i$ は、状態$Φ_i$ を特徴づける^7。(記号、$α_i$ は、例えば固有値の記録を表すだろう。)

(7) $Ψ^O_{[...α_i]}$ は、各iについて異なることを理解されなければいけない。より正確な表記は $Ψ^O_{i[...α_i]}$ と書くであろう。 しかし、もし我々が単純に記憶構成の添字によってだけ、$Ψ^O_i$ を添字つきとしても混乱は起き得ない。


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すなわち、我々が必要とするのは、系の 状態、もし、それが 固有状態であれば、 変化してはならず、そして、(2) すなわち、観測者の状態は、観測者がその固有関数 であることを"認識"することを記述するように、変化しなければならないことである。つまり、何かの特性が観測者の記憶に記録され、 それは、Φ_iを特徴づける固有値のようなものである。観測が重要(繰り返し可能)なら系の固有状態が変化しないことが必要であり、 もし、我々が相互作用を観測と呼ぶことが仮にもできるとするのであるなら、観測者の状態が、各固有関数から異なるように変化する ことが必要である。どれだけ近く、一般の相互作用がよい観測の定義を満たすかは、(1) 相互作用が観測系の動的変数ー記憶変数を含む、 に依存する、そして対象系の変数に依存する方法、(2)観測系の初期状態である。 (1)と(2)を与え、例えば、波動方程式を解き、相互作用の終了時の複合系の状態を導き、繰り返し可能な仮説による要求のように、 元もと固有状態にある対象系が固有状態に残されるかどうかチェックすることができる。この仮説は、例えば、すでに議論した フォン・ノイマンのモデルによって満たされるものである。

よい観測の定義から、我々は最初に観測の固有状態にない系についての観測の結果を導いた。我々は我々の定義から、 相互作用が状態 $Φ_i Ψ^O_{[...]}$ を状態$Φ_i Ψ^O_{[...α_i]}$ に変換することを知っている。結果的に、これらの波動方程式 の解は、任意の初期の系の状態の場合に、最終状態を与えるために重ね合わせられることができる。こうして、もし、初期系の 状態が固有状態でなく、一般的な状態、$Σ_i a_i Φ_i$なら、最終全体状態は次の式になる: \[ Ψ^{S+O'} = Σ a_i Φ_i Ψ^O_{[...α_i]}. \tag{12} \] この重ね合わせの原理は、測定の期間の相互作用しない、さらなる系の存在においても、適用され続ける。こうして、もし、 系、$S_1, S_2, ..., S_n$ がOだけでなく存在しても、元の状態が$Ψ^{S1}、Ψ^{S2}、... Ψ^{Sn}$で、相互作用が測定の実行期間 がOとS_1の間だけであっても、測定は、次の初期全体状態を変換するだろう。 \[ Ψ^{S_1+S_2+...+S_n+O} = Ψ^{S_1} Ψ^{S_2} ... Ψ^{S_n} Ψ^O_{[...]} \tag{13} \] を最終状態: \[ Ψ'^{S_1+S_2+...+S_n+O} = Σ a_i Φ_i^{S1} Ψ^{S_1} Ψ^{S_2} ... Ψ^{S_n} Ψ^O_{[...]} \tag{14} \] ここで、$a_i= (Φ_i^{S_1}, Ψ^{S_1})$ そして、$Φ_i^{S_1}$ は観測の固有関数である。

こうして、我々は、観測過程が生起したなかの系を記述する、全体状態関数の変換の、一般的な規則に到着した。

規則1: 固有関数$Φ_i^{S_1}$ で、観測者Oによる、量Aの観測は、全体状態を次に従って、変換する: \[ Ψ^{S_1} Ψ^{S_2} ... Ψ^{S_n} Ψ^O_{[...]} ⇒ Σ a_i Φ_i^{S_1} Ψ^{S_2} ... Ψ^{S_n} Ψ^O_{[...α_i]} \tag{15} \]

ここで、 \[ a_i= (Φ_i^{S_1}, Ψ^{S_1}). \]


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もし、我々が、次に2番目の観測をすることを考察するなら、我々の全体状態は、いま、重ね合わせであるところに、我々は、 重ね合わせの各要素に別々に、規則1を適用することができる、なぜなら、各要素は、別々に波動方程式に服従し、残りの 要素から独立して行動し、そしてそのとき、最終解を得るために、重ね合わされる。我々は、これを次のように定式化する:

規則2: 規則1は全体系の状態の、重ね合わせの各要素に別々に適用され、結果は最終全体状態を得るために重ね合わされる。 こうして、Bの決定は固有関数$η_j^{S_2}$を伴い、$S_2$に、観測者Oによる、これは、全体状態の変換、 \[ Σ a_i Φ_i^{S_1} Ψ^{S_2} ... Ψ^{S_n} Ψ^O_{[...α_i]} \tag{16} \] を状態、 \[ Σ_{i,j} a_i b_j Φ_i^{S_1} η_j^{S_2} Ψ^{S_3} ... Ψ^{S_n} Ψ^O_{[...α_iβ_j]} \tag{17} \] ここで、$b_j= (η_j^{S_2}, Ψ^{S_2})$、それは規則1の $Φ_i^{S_1} Ψ^{S_2} ... Ψ^{S_n} Ψ^O_{[...α_i]}$の各要素への適用の後に、 係数 $a_i$ を伴って結果を重ね合わせる。

これらふたつの規則は、重ね合わせの原理から直接に従い来るもので、いくつの観測過程のどの組合せでも、 全体の最終状態を決定するのに便利な方法を与える。我々はいま、そのような最終全体状態の解釈を探索する。

量Aの単独の観測である単純な場合を考察しよう。固有関数$Φ_i$を伴う、系S内の、初期状態$Ψ^S$、観測者Oは、初期状態$Ψ^O_{[...]}$である。 最終状態は、いま見たように、重ね合わせである、 \[ Ψ'^{S+O} = Σ_i a_i Φ_i Ψ^O_{[...α_i]}. \tag{18} \] もはや、どのような独立な系状態も、観測者状態もない。ふたつは互いに1:1に相関している。しかしながら、重ね合わせの各要素、 $Φ_i Ψ^O_[...α_i]$ は、対象系の状態は、特別な観測の固有状態で、そして、さらに、観測者-系の状態は、特別な系の状態を 観測者は確定的に認識していると記述される。この相関が、測定が実行されたという解釈を維持することをひとに許すものである。

我々は、いま、観測者の系が、対象系との2度目の相互作用に入った状況を考察する。規則2に従って2度目の観測の後、全体状態は、 \[ Ψ''^{S+O} = Σ_i a_i Φ_i Ψ^O_{[...α_i,α_i]} \tag{19} \] 再び、各要素 $Φ_i Ψ^O_{[...α_i,α_i]}$ は系の固有状態が、今回また観測者がふたつの観測において同じ結果を得たことを記述する。 このように、最終的な重ね合わせのなかの観測者の全ての分離した状態が、異なった状態には異なっていてさえも、繰り返し可能である 繰り返し可能性は、観測後には特定の観測者の状態の相対的な系の状態が固有状態に対応しているという事実の帰結である。


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いま、異なった状況を考察しよう。初期状態$Ψ^O_{[...]}$ をもつ観測者-系Oが、同じ量Aをいくつかの分離した、同一の系のなかで 測定する。初期に同じ状態、$Ψ^{S_1}=Ψ^{S_2}= ... Ψ^{S_n}=Σ_i a_i Φ_i$とし、(ここで$Φ_i$は、通常、Aの固有関数) そのとき、 初期の全体状態関数は、 \[ Ψ_O^{(S_1+S_2+...+S_n+O)}= Ψ^{S_1} Ψ^{S_2} Ψ^{S_n} Ψ^O_{[...]}. \tag{20} \] 我々は、複数の系のなかで、$S_1, S_2, ..., S_n$ の順に実行されると仮定する。そのとき、最初の全体状態は、規則1によって、 \[ Ψ_1^{(S_1+S_2+...+S_n+O)}= Σ_i a_i Φ_i^{S_1} Ψ^{S_2} Ψ^{S_n} Ψ^O_{[...α_i^1]}. \tag{21} \] (ここで、$α_i^1$ は、最初の系、$S_1$)

第2の測定の後、それは、規則2により、 \[ Ψ_2^{(S_1+S_2+...+S_n+O)}= Σ_{i,j} a_i a_j Φ_i^{S_1} Φ_j^{S_2} Ψ^{S_n} Ψ^O_{[...α_i^1, α_j^2]}. \tag{22} \] そして、一般に、r回の測定が実行され(r<=n)、規則2が結果を与え、 \[ Ψ_r = Σ_{i,j,...k} a_i a_j ... a_k Φ_i^{S_1} Φ_j^{S_2} Φ_k^{S_r} Ψ^{S_n} Ψ^O_{[...α_i^1,α_j^2,...,α_k^n]} \tag{23} \] 我々は、この状態、Ψ_r に次の解釈を与えることができる。それは、状態の重ね合わせで構成される。 \[ Ψ'_{ij...k} = Φ_i^{S_1} Φ_j^{S_2} ... Φ_k^{S_r} × Ψ^{S_{r+1}} ... Ψ^{S_n} Ψ^O_{[α_i^1,α_j^2,...α_k^r]} \tag{24} \] そのそれぞれが、確定した記憶シーケンス $[α_i^1,α_j^2,...α_k^r]$ をもつ観測者を記述する。彼に相対し(観測された)系の状態は、 固有関数 $Φ_i^{S_1}, Φ_j^{S_2}, ...,Φ_k^{S_r}$ に対応する。残りの系、$S_{r+1}, ... ,S_n$ は変更なしに。

最終重ね合わせの典型的な要素$Ψ'_{ij...k}$ は、観測者が観測によって、確定的な結果のみかけの乱数シーケンスを認識する所の 物事の状態を記述している。さらに、対象の系は、観測の固有状態に対応して残されている。この段階で、早期の系の観測($S_l$) の再決定が実行されると考えよう。そのとき、次のことが続く。結果の最終の重ね合わせのそれぞれの要素が、$[α_i^1,α_j^2, ... α_k^r,α_j^l]$ の記憶構成の形式をもった観測者を記述する。そのなかでは、早期の記憶が後期に一致する、つまり、記憶 の状態が相関している。それは、こうして観測者に表われる。重ね合わせの典型的な要素に記述されたように、 系の各初期観測が乱数的な仕方で固有状態に系を"飛躍"を引き起こし、そこから、同じ系の次の観測まで、そこに留まる。 それゆえ、ー相対的な頻度の量的な問題に暫くは関わらずー 過程1の確率的な断定が、最終重ね合わせの典型的な要素によって 記述された観測者にとって、有効として表われるのである。


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我々は、こうして、次の絵に到達する:全ての観測過程のシーケンスを通して、観測者を表現する唯ーの物理系が存在する、しかし、 (相互作用系の表現に従って) 単独の唯一の状態の観測者は存在しない。にも関わらず、重ね合わせの言葉が表現する ものがある。それの各要素が確定的な観測者の状態を含み、系の状態に対応している。こうして、各継続する観測(相互作用)に伴い 観測者の状態は、"枝わかれ"して、いくつかの異なった状態になる。各枝は、異なる観測の出力を表し、そして対象-系状態の固有状態 に対応している。任意の与えられた観測のシーケンスの後、全ての枝は、同時に存在し、重ね合わせにある^++。

(++) 校正刷りでの追加注意-この文書のプレプリントに反応して幾人かの文通者が"可能性から実際への遷移"の質問を挙げた。 "現実"にはー我々の経験に照らしてーそのような観測者の状態の分岐がなく、それゆえ、かつて唯一つの枝だけが実際には存在する という議論である。この点については、他の読者にも起きえる疑問のために、次下が説明のなかで提案された。

"可能"から"実際"への遷移の全ての事項は、理論のなかで非常に単純な方法で扱われた。ーそのような遷移はなく、そのような遷移は必要 でもない。理論が我々の経験に調和しているためには。その理論からの視点では、重ね合わせの全て の要素が、(全ての枝が)、 "実際"であり、残りの全ての要素より"現実的"というものはない。ひとつ以外の全てが何とかして破壊されることを仮定する必要はない。 なぜなら、重ね合わせの分離した要素は、全て、個々に波動の方程式に従うとき、他の要素の存在、非存在("実際的"かどうか)には 完全な無関心である。ひとつの枝からもうひとつの枝へのこの全体的な影響の欠如は、また、どの観測者もかつて、いかなる"分岐"過程を 意識したことがないことを意味する。

我々がどの分岐過程を知ることがないために、この理論の描く世界の絵が経験に反論するという議論は、コペルニクスの理論への批判に 似ている。地球の可動性が、現実の物理的事実として、常識的な自然解釈とは両立しない、なぜなら、我々がそのような運動を全く感じないから。 両方の場合も、議論は失敗する。理論自身が我々の経験が事実のものであろうと予測することを示すときに。(コペルニクス説の場合、 地球の住人が地球の運動を感知し得ないことを示すことができるためには、ニュートン物理の追加が必要だった。)


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測定のシーケンスを実行している観測者の記憶構成の"軌跡"は、このように、記憶構成の線形のシーケンスではなく、数学モデルのなかで 種々の係数をもった最終重ね合わせにおいて、同時に存在する全ての可能な出力をもった、木の枝分かれである。どのよく知る記憶装置に おいても、枝分かれは不確定に連続するのではなく、記憶の容量によって制限されるある点で止まらなくてはならない。

量的結果を確立するために、最終重ね合わせの要素には、ある種の測度(重み付け)を付けなくてはならない。重ね合わせの要素によって 記述されたほとんどの全ての観測者状態において成り立つ主張をすることができるためにこれが必要である。我々は、ー記憶に記録されたー 観測の異なる可能な結果の相対的頻度について、定量的な声明をすることを望む、典型的な観測者の状態に対して、しかし、これを実行する には、我々は、直交状態の重ね合わせから典型的な要素を選択する方法を持たなければならない。

我々は、それゆえ、直交状態 $Σ_i a_i Φ_i$ の重ね合わせの要素に測度を付与する一般的なスキームを探す。重ね合わせの要素の複素係数の 正の関数mを$m(a_i)$が要素$Φ_i$への付与された測度であるべきようにする。この一般的スキームが曖昧さがないためには、状態から係数を区別 することができるように、状態はつねに正規化されていることを必要とする。しかしながら、まだ我々は、任意の位の係数まで、状態から区別 して係数を決定できるだけである。それゆえ、曖昧さを避けるためには、関数mは、係数の振幅だけの関数$m(a_i)= m(|a_i|)$でないといけない。

我々は、いま、加算性の要求を課する。我々は重ね合わせの部分集合、いわば、$Σ_{i=1}^n a_i Φ_i$を単独の要素αΦ'とみなす: \[ αΦ'=Σ_{i=1}^n a_i Φ_i \tag{25} \] 我々は次に、Φ'へ付与された測度が$Φ_i$ (i= 1 からn) に付与された測度の総和であると要求する: \[ m(α)=Σ_{i=1}^n m(a_i) \tag{26} \] そのとき、我々は既に、mの選択を2乗振幅だけに制限している;言葉を替えれば、我々は、乗算的定数を除いては、$m(a_i)= a^*_i a_i$ をもつ。

これをみるには、Φ'の正規性が、$|α| =(Σa^*_i a_i)^{1/2}$ を要することに注意。m の振幅だけの依存についての我々の意見から、 $a_i$ をその振幅$u_i= |a_i|$ に置き換える。式(26) は、次を要求する。 \[ m(α)=m(Σa^*_i a_i)^{1/2} = m(Σu_i^2)^{1/2} = Σm(u_i)= Σm(u_i^2)^{1/2} . \tag{27} \] 新しい関数 g(x) を提議して、 \[ g(x)=m(√x) \tag{28} \] 我々は、(27)が次を要求することをみる。 \[ g(Σu_i^2)= Σg(u^2). \tag{29} \] こうして、g は、線形に制限され、次の式をもつ必要がある。 \[ g(x)= cx (cは定数) . \tag{30} \] それゆえ、$g(x^2)= cx^2= m(√x^2) = m(x)$ そして、我々はm が次の式であることを導いた。 \[ m(a_i)= m(u_i)= cu_i^2 = ca^*_i a_i. \tag{31} \] 我々はこうして、我々の加算性の要求には測度の選択が、乗算的定数を除けばであるが、2乗の振幅だけが整合することをみた。 乗算定数は、正規化要求による、もし望めば多分固定である。(全体の測度が恒等である要求は定数が1であることを意味する。)


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ここの状況は、古典統計力学のそれに全く類似する。そこでは、位相空間のなかで系の軌跡に測度を与える。位相空間自身に測度を置き、 そして、(エルゴード性又は、疑似エルゴード性、等のような) "ほとんど全て"の軌跡に成立する主張を作る。この"ほとんど全て"の 表記は、ここではまた、測度の選択に関わる。それはこの場合、位相空間へのルベーグ測度であることが採用される。 例外的な軌跡だけを非ゼロとする測度を選択する、古典的統計力学の声明には反論があるかもしれない。しかしながら、位相空間への ルベーグ測度の選択は、それが"確率を保存"を成立させる(リュービルの定理)唯一つの選択であること、そしてそれゆえ、どの可能な 合理的な統計的導出をするにも唯一の選択であることで正当化される。

我々の場合には我々は観測者の軌跡についての声明をすることを望んでいる。しかしながら、それぞれの継続的な測定に伴い、 (状態から重ね合わせに変換され)、我々には軌跡は、一定に枝わかれしている。事典的な場合の"確率の保存"へ類似する要求をもつために、 我々が要求したのは、あるときひとつの軌跡に付与した測度は、その後の分離した枝の測度の総和に等しいことである。これは、正確に 我々が課した加算性の要求であり、唯一に2乗振幅測度の選択を導いたものである。我々の過程はそれゆえ、古典統計力学のそれと同等に 全く正当化される。

我々の要求を満たす唯一の測度があること、それが2乗振幅測度であることを導出したから、我々は我々の導出を継続する。この測度は、 重ね合わせ(24)のi,j,...k番目の要素に付与する。 \[ Φ_i^{S_1} Φ_j^{S_2} ... Φ_k^{S_r} Ψ^{S_{r+1}} ... Ψ^{S_n} Ψ^O_{[α_i^1,α_j^2,...,α_k^r]} \tag{32} \] 測度(重み)、 \[ M_{ij...k} = (a_i a_j ... a_k)^* (a_i a_j ... a_k) \tag{33} \] は、記憶の構成$[α_i^1,α_j^2,...,α_k^r]$をもった観測者の状態が測度 $a_i^* a_i a_j^* a_j ... a_k^* a_k = M_{ij...k}$ に割り振られることである。 我々は、すぐにこれが測度の積であることをみる。つまり、 \[ M_{ij...k} = M_i M_j ... M_k . \tag{34} \] ここで、 \[ M_l = a_l^* a_l \] は、特定の記憶シーケンス $[α_i^1,α_j^2,...,α_k^r]$ に割り振られた測度が単純に記憶のシーケンスの個々の成分の測度の積であることを表す。


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我々の測度の構造と乱数シーケンスの確率の理論とは直接の対応が存在する。もし、我々がM_ij...k をシーケンスの確率とみなすならば、 そのときは、そのシーケンスは、各項に独立な確率$M_l= a_l^* a_l$に帰することで発生された、乱数シーケンスと同等である。いま、確率理論は、 測度の理論に数学的に同等であって、全ての結果が測度の理論の言語に戻って翻訳されるべきことを心に留めている間、我々はそれを使うことができる。

こうして特に、シーケンスがより長くなればなるほど(実行される観測が多くなればなるほど)、最終重ね合わせの各記憶シーケンスは独立確率 $a_l^*a_l$ によって発生した乱数発生シーケンスのためにどれだけの判定規準を与えても、それを満たすだろうと我々が考察するならば、例外は、 観測の数が無制限になると、ゼロに向かう傾向がある、全体測度の集合である。このゆえに、頻度の特別な場合を含むどの記憶シーケンスにも わたる関数の全ての平均は、確率$a_l^*a_l$から計算できる。例外は、測度がゼロの記憶シーケンスの集合である。我々はそれゆえ、ほとんど 全ての 重ね合わせ(24)の要素が、観測の数が無限になる極限において、過程1の統計的主張が観測者に表われるだろうことを示した。

これまで、考察してきたのは、同じ系における同じ量の観測シーケンスだけであったが、その結果は、より一般的な測定シーケンスを書き、 規則1と2をここで提供したと同様に適用すれば検証されるだろうから、任意の観測シーケンスについても等しく真である。

我々はそれゆえ、状況をまとめることができる。観測シーケンスが任意のとき、これらの観測が同じ又は異なった系にどの順序であれ、なされるとき、 各系の各量の観測回数が非常に大きいとき、次の結果をもつ:

測度がゼロに近い記憶シーケンスの集合を除き、記憶シーケンスにわたるどのような関数の平均も、系に対する各初期観測への過程1に よって与えられた、独立確率の使用によって、そして、同じ系への継続的観測の通常の遷移確率の使用によって、近似的に計算できる。 全てのタイプの観測の数が無限になるに従って、計算は正確になる。測度がゼロである集合を例外にする。

記憶シーケンスへの平均の計算の個々の要素への確率の割り付けによる、この処方箋は、正確に伝統的な"外部観測"理論(過程1)のそれである。 さらに、これらの予測は、ほとんど全ての記憶シーケンスに成立する。それゆえ、通常の理論の全ての予測は、ほとんど[sic]全ての観測者の状態 に対して、有効であると表われるだろう。

特に、不確定性の原理は、決して違反されていない。なぜなら、系への最近の測定は、相対的系の状態に対する全ての可能な情報を供給するから、 どの以前のどの後続する系の状態の観測とも、直接の相関をもたない。(全て同じ系について)ふたつの連続した量Aに対する観測の間の量Bに対する どの測定も、前と後のAの結果の記憶状態の間の1:1の対応を破壊するだろう。こうして、異なる量の観測への交替は、同じ観測量への記憶状態の 間の相関に基本的な制限がある。これらの制限は、不確定性原理の内容を表現している。


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最終段階として、同じ対象系に相互作用(観測)する、さらには、互いに相互作用(通信)する、複数の観測者を許すことの帰結を研究することができる。 後者の相互作用は、単純に、ひとつの観測者ともうひとつの観測者の記憶の構成の相関部分の相互作用として扱うことができる。規則1と2を使って 我々がこの章にすでに提供したと同じ手法で、これらの観測者の系が研究されるとき、最終重ね合わせの全ての要素で見出すことは:

1. 複数の観測者が別々に対象系に同じ量を観測し、その後、彼らが見出した結果を互いに通信するとき、彼らは、彼らが同意することを見出す。 この同意は、ひとつの観測者が彼の観測を、他の観測者の観測を彼に通信した後に実行してさえも、結果を変えない。

2. ひとりの観測者が対象系の量Aの観測を実行し、2番目の観測者がこの対象系にAとは交換可能でない量Bの観測を実行し、最後に最初の観測者が 彼のAの観測を繰り返す。そのとき、最初の観測者の記憶系は一般に両方の観測に同じ結果を示さない。 他の観測者による間にはいる、交換可能でない量Bの観測は、2つのAの観測の間のどのような1:1の相関も妨害する。

3. ふたつの対象系が相関しているが、相互作用していないとき、ひとりの観測者が最初の系に特定の測定を行い、他の観測者が第2の系に測定し 最後に最初の観測者が彼の測定を繰り返す。そのとき、最初の観測者は、つねにどちらの回も同じ結果を得る。そして、第2の観測者による観測は 最初の観測が何を出して来ようが、効果がない。アインシュタイン、ポドルフスキー、ローゼンによる^8フィクションによるパラドックスのような それは、そのような相関に関するものだが、相互作用しない系は、現在のスキームで、容易に研究でき、明確化できる。

さらに多くの観測者と系の組合せも現在の枠組のなかで研究できる。現在の"相対的状態"定式化の結果は、親しい機械が適用できるような全ての 場合に伝統的な"外部観測"定式化のそれらと合意している。

結論として、複合系の状態関数の時間に連続的な進化は、理想化された観測者を含む過程への完全な数学的なモデルを与える。相互作用が起きるとき、 時間のなかでの進化の結果は、状態の重ね合わせであり、その各要素が観測者の記憶への異なる状態を割り当てる。ほとんど全ての観測者の記憶の 状態によって判定されて、量子力学の通常の"外部観測"定式化の[sic] 確率的な結論が有効になる。言葉を換えれば、どうのような初期確率の仮定 もない、純粋に過程2の波動力学が、親しい定式化の全ての確率概念を導くのである。

(8) Einstein, Podolsky, and Rosen, Phys. Rev. 47, 777(1935).観測の物理の全体の議論は、 Albert Einstein, Philosopher- Scientist (The Library of Living Philosophers, Inc., Evanston, 1949) のなかの N. Bohr による章をみよ。


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6. 議論

純粋に波動力学に基づく理論は概念的に単純であり、因果的理論である。それは経験に調和する予測を与え、論理的に整合している手法で、測定過程 自身そして、複数の観測者の相互の関係のような幾つかの謎の主題に、数学的に詳細に研究できる枠組を構成する。過去に量子力学の伝統的な又は "外部観測"定式化に対する持ち上げられた反論は、その確率的特徴が理論自身から導かれるのではなく、さらに仮説されていることに根ざしている。 我々は、現在の"相対的-状態"定式化が標準的な定式化の内容の全てを保持しながら、この反論に合致すると信ずる。

我々の理論が究極的に実際的な予測をする助けとして確率的解釈の使用を正当化する一方、それは、そのなかでその解釈の整合性を理解するより広い 枠組を形成する。この点で、それは標準理論に対してメタ理論を形成する。それは、しかしながら、その不完全な観測と近似的測定との疑問を論理的 に扱う能力は、通常の"外部観測"を超越している。

"相対的状態"定式化は、重ね合わせ原理を保持する量子力学の全ての形式を適用するだろう。それは、それゆえ、一般相対論の量子化に実りある枠組 証明するかもしれない。形式主義はまず、形式的理論を構成し、そして、後に統計的解釈を供給することにひとを招待する。この方法は、量子化された 統一場理論の解釈に特に有用でなければならない。そこでは孤立した観測者と対象系は、疑いもなく決して独立してあり得ない。それら全ては 単純な構造である場に表現される。何かの解釈規則が多分、その理論自身を通してだけ導かれ得るだろう。

どのような実際的な理論の進展からも離れて、それは通常の解釈の主張が独立した仮説の状態をもたず、完全に統計的仮説から離れている、純粋な 波動力学から (現在的意味で) 導出可能であるという知的興味の事項に留まる。