ハッブル深部領域観測

R.E.Williams et.al.
Space Telescope Science Institute
Baltimore, MD 21218
訳:片山泰男(Yasuo Katayama)
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概要:

ハッブル深部領域観測(HDF)は、4つの波長通過帯域の高銀緯度無識別領域の合理的に可能な限り深部を画像にするHSTへのサイクル5の所長 裁量の計画である。利用可能な時間内で観測を最適化するために、北の連続的な観測領域の場が選択され、10連続日又は約150軌道周期が 採られる。より短い1-2軌道周期の基本のHDFの領域に直接連続する領域の画像も地上の望遠鏡によるスペクトルの援助の便宜のために撮ら れる。観測は1995年11月18-30日からなされ、生のデータと整復後のデータが、コミュニティへのサービスとしてすぐにパブリックドメイン に置かれる。


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1. 導入

HDF計画は、遠方銀河クラスタの画像化の成功し発展中の計画である。HSTによってDressler 等(1994) による z= 0.41の0939+4713と、 Dickinson等(1995)による z=1.21 の電波銀河3C324に関係するクラスタとによって実行された。これら両計画は形態学的分類と可能な種々の パラメタの量的研究の方法での、中程度から高赤方偏移の銀河構造の分解において再装備されたHSTの能力を証明した。クラスタ0939+4713は、 それまで全体として近傍クラスタと似ないようには見えず、そして潮汐相互作用の証拠である、何か乱されたようではあるが、大半が見掛け 渦巻と楕円銀河に占められていた。それはまた、Butcher-Oemler効果を示している。一方、3C324に関係するクラスタは、渦巻銀河が認識でき ないので、今日のクラスタの代表ではない。クラスタは見掛けの楕円銀河とともに、無定型の天体の大きな破片に満ちている。楕円銀河は、 rの1/4乗則動径光分布が Dickinsonによって測定され、動力学的に緩和した系と同程度である。

最初の奉仕使命以来、HSTは、z>3の赤方偏移を越える数多くの他の遠方銀河を画像化し(例 Giavalisco等 1995)、幾つかの事項が明らか になった。まず、HSTは、実際銀河サイズの系を高い赤方偏移までよく分解できること、次に、高い赤方偏移の宇宙は、現在の時期の宇宙 とはかなり異なっていること。HSTは、銀河が形成され、急速に進化している時期の銀河を振り返って画像化でき、それは銀河の進化の理 解において基本的に重要であって、この能力が完全に開発されることが必須用件である。

現在の望遠鏡の高度な完成度に基づいて、サイクル5の所長裁量の時間の実質的な一部を遠方銀河の研究に専用にするという決定がなされた。 研究所の特別諮問委員会が招集され、高銀緯のひとつの典型的な領域の深部画像、WFPC2によってと数種のフィルタによってなし、作成デ ータは学会に研究のために提供されるべきと所長に勧告した。この勧告に従って、開発とプロジェクトを実行するための研究所の科学者と 技術員のグループが形成された。


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2. その領域

研究所によって諮問委員会へ示唆されてきたことは、我々がHSTの連続的視野(CVZ)のひとつを場の選択として使うのは観測に2倍程度の効率を 得ると考えるということである。作業部会は我々の注意を北のCVZに集中させ、それによってHDFの場所を+62oの緯度に制約した。さらには、 他の波長の研究に便宜を得るために、以前にどの波長においても検出されたことのない他に輝く天体のない場所で、また近傍の銀河クラスタを 含まない領域が選択された。低い減衰率、低いHIコラム密度、小遠赤外フラックスの場所であり、3.6cmで1mJy よりも明るい電波源をもたない 場所が大犬座のなかに特定された。北側CVZのこの部分は、銀河平面から最も遠いからである。

この一般的な領域のなかのHDFの正確な位置は、HSTのFine Guidance Sensorに受容できる、ふたつのペアのガイド星の使用可能性によって、 修正された。全体の観測シーケンスの安全防護に保守的であるように、我々は独立した支持ガイド星のペアを必要とした。そしてそれらは この高い銀緯度では少ないのである。HDFの正確な位置は、それゆえこの要求によって決定された。位置と結果する領域の特性は表1に示し、 P.Eisenhardt によって KPNO 4m望遠鏡で得られたその領域のRバンド500秒の画像を、HDFの概形を重ねて表示するWFPC2の印とともに図1に示す。

表1
ハッブル深部領域HDFの特性

位置:12h36m49.4s
+62o12'58"(Epoch J2000.0/WFPC2 'WFALL FIX'の位置)

E(B-V)= 0.000
HIコラム密度、N(HI)= 1.7 x 10^20 cm^-2
In 100μIR cirrus最小
低い 2μ DIRBE flux, < 0.14 MJy/ster
Radio quiet, no source with flux >1 mJy at 3.6cm
干渉する輝く星や近傍銀河クラスタをもたない。


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3.観測

使用するフィルタの選択は、透過性の犠牲を過度にすることなく、可能な限りできるだけ広い波長間隔であるべきという信念にとって必須 である。また、天体の空間的に分解された色情報が高度に望まれ、地上から得られるだろう各天体への全体としての色さえも望まれるとみ なされた。一方、画像の最も微かな 2-3 等が、予見し得る近い将来の地上ベースのスペクトル観測の到達できる限界を越えて残らなくて はならない。色情報は、画像内の最も暗い集団を理解するのに重要であり、そして多分、広い帯域色からそれらの粗製の赤方偏移を決定す ることを可能にすることにおいて、2重に重要である。我々はそれゆえ、4つの通過帯域のHDF画像を選択し、広帯域フィルタ F300W, F450W, F606W そして、F814W を選択した。これらのフィルタは、広い色情報を与える一方、よい透過性をもち、より長い波長フィルタの画像と 結合することによって深度を得ることができるだろう。

それぞれのフィルタ毎の、露出回数と全体の集積時間が決定された。部分的にはCVZにはびこる条件、また部分的には全ての通過帯域に限界 等級を同じにすることを達成することを望むためである。CVZ内の視線は地球の縁から決して遠くなく、それゆえ、HSTの日中の半軌道は、 高い散乱背景光を経験し、それらの露光を妥協させる。しかしながら、F300W の低い透過性は、つねにこのフィルタの画像をどの事象において も、軌道の明るい部分においてさえ、読み出し雑音に以下にした画像にした。それゆえ、明るい太陽のもとの観測は、ほとんど全体に周期的な 暗いフレームとF300Wの画像に専用にされた。地球の影で得られた画像は、ほどよく均等に他の3つのフィルタに分配された。そうして、高い 拡散光の背景をもつCVZの使用は、特に軌道の昼間の半分は、読み出し雑音以下の画像が無料で得られることを可能にし、なぜなら、軌道の その部分は他のフィルタでは画像のS/N比を向上させることが決してできないからである。

種々のフィルタと結果的な画像のS/N比への可能な露出の分配の精細な研究の結果として、観測スケジュールが確立した。表2は、4つのフィルタ 専用にした等価な軌道数と各フィルタへの全体の露出数をリストする。我々はまた、全てのそれらフィルタの画像が互いに積み重ねられるとき、 各通過帯域において達成可能な、近似的制限AB等級(フラックス10s>天空画素20によって定義) をリストする。

表2
WFPC2 HDF 露出
フィルタ: F300W F450W F606W F814W
軌道数: 49 36 35 35
露出数: 100 62 77 49
制限AB等級:27.6 28.1 28.7 28.0

各通過帯域への露出にはディザの仕組みが実装される。それは2秒角平方以内に、異なる9つのx,y位置によって整数画素単位でない分離 が得られる。9つの位置毎に5より多い分離した露出が一般的に採用され、宇宙線の排除が目出度く実現した。ディザ処理によってCCDに ディザ間隔より小さい空間スケールの非均一性を許し、それは較正されるのだが、データのサブピクセルの限界的な標本を可能にして、 画像再構成によって、より高い空間分解能が達成される。

諮問委員会は、HDFに直接に連接する空の領域に短いWFPC2の画像を得る知恵に注意を呼びかけた。その領域のスペクトル研究だけでなく、 ほとんど長いスリットかファイバー結合を使って実行されるだろう地上ベースの支援をもサポートもするために。それはHDFの副産物であ り得、HDF固有の直接周囲の天体のスペクトルが同時的に必要とされるのである。我々はそれゆえ、HDFに接続した空の領域の画像として 使われるWFPC2位置のモザイクを製作した。8つの"側方領域"が1-2軌道のF814Wフィルタで画像が13日のキャンペーンの一部として撮られた。 それぞれの画像がmr=26のフラックス限界を達成し、それは大雑把に8mから10mの望遠鏡がスペクトル分析できる限界である。

並行した観測が微弱な天体のスペクトル分析(FOS)を伴ってHDFの最初のWFPC2観測の期間に行われた。FOS観測は、TAC承認計画GO5968 サイクル5の一部としてなされた。深部WFPC2画像を使い、銀河外部の背景光を測定するため、同時的なFOS観測を使って、5175AのMgIb 特徴をもつ散乱した太陽スペクトルの子午線光からのEBLの寄与を差し引くために。FOSデータはまた、研究所員によってCVZ内の散乱光 をモデル化するために使われ、それはSTISに実行される長いスリットのスペクトル分析の校正において重要になるだろう。


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4. 較正とデータの整復

研究所は、HDFの生のデータと較正されたデータの両方をコミュニティに奉仕として提供することを予定していた。較正した画像は 必然的にバイアス、暗部、平坦部を含む。バイアスと平坦は、WFPC2ではとても時間的に安定している。HDFの'超バイアス'と地球の '超平坦'較正画像は、較正画像から構成される。それはHDFキャンペーンに先行する時期に必要とされ、いくつかはHDF観測の開始 直前に撮られるだろうものを含んでいる。平坦領域は地球の平坦によって構成され、それは高いS/N比をもち、CCDにある大きな 空間的変化を校正し、画素毎の変化の校正に役立つ、打ち上げ前の熱的真空テストからのデータをもつ。空の平坦は、HDFのデータ を平坦化するのによりよいさえあるだろうが、しかし、地球平坦以上の改善をするだけの十分なS/N比をもたない。暗いフレームは それと対照的に、宇宙線の打撃が原因の熱画素の緊急性による、時間的な変化を示す。それゆえ、熱画素の特性は、即時的な暗い フレームを必要とし、観測期間中に周期的に予定されている。"超暗部'較正は、短い時間では不変の暗電流の成分を差し引くのに 適切で、HDFキャンペーンの数ヵ月前に得た暗部から構成される。

各HDF画像は、通常のSTScIパイプラインのなかで使われたものと類似の方法で整復されるだろう。宇宙線は'CRREJ'ルーチンのある 版でメディアン(中間値)フィルタで除去されるだろう。異なるディザ位置で撮られたそれぞれの通過帯域の全ての画像は、登録され 各フィルタの画像が結合され、ひとつの深部画像を作る。これらの最終画像は、キャンペーン完了後すぐにもインターネットで利用 可能になり、HDFのカラー画像結果となるだろう。


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5. 追跡調査

以前の研究の銀河の計数に基づいてWFチップあたり約 mr〜29 までの暗さの500のオーダーの銀河が見られると期待される。 他の波長の追跡研究からと地上ベースのスペクトル計からのHDFデータの解釈には多大な利益があるだろう。すでに、宇宙からの HDFの観測は、この機器がHSTに設置されたとき、すでにISOとROSATとNICMOSの科学チームはその領域の赤外研究を彼らのGTOの計画の 重要な部分にし、ケック10m望遠鏡を使った拡張的なスペクトル研究計画がHDFに対して実行されている。HDFの天体の時間変動性が サイクル6でTACに承認されたGO計画として研究され、VLAは完全にその領域の電波フラックス限界までの完全な地図作成を計画している。

HDFの最も暗い2-3等級範囲内にある天体は、スペクトル計では到達できると思われない事実は、その画像中の多く(殆ど?)の天体に とって、距離は天体の動径速度の決定以外の方法から来なければならないだろうことを意味する。この事実は、将来の広帯域色から の銀河の近似的な赤方偏移の決定に刺激を与えざるを得ない。それは、銀河のスペクトルエネルギー分布の進化について、我々が今日 もつよりも、よりよい知識を必要とするだろう。

ハッブル深部領域観測は、太陽系、銀河ハーロー、そして遠方銀河が住むところの、疑いもなく暗い天体の撮影画像であろう。そのよ うな天体の後続する研究は、太陽系と銀河の形成の早期の時期に起きた事象への我々の現象理解に、このデータが測り知れない貴重さ をもつに違いない。


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エピローグ

HST科学会議が開催されたすぐ後にHDF観測が実行される限り、我々はこれらの解説と図2において、領域の最終に登録されたF606W 画像からの共通可算から結合した画像提示をできるだろう。

Dickinson, M. E. et. al. 1995

図1. HDFの500秒赤色画像 P. Eisenhardt が KPNO 4m 望遠鏡で撮影。HDFが1995年12月に画像化されたとき、 WFPC2の概形が、その 方向に示される。

図2. HST のWF3chipから得られた HDFの結合画像。フィルタF606Wで撮られた領域の全ての77露出の共通可算による。