目次
1. 現在の視点の欠陥
2. 場の方程式、自由スカラー
3. 宇宙論的問いに
4. 結語的所見
Newton の重力理論も重力の相対論も物質の構成の理論に何らの進展を導かなかった。この事実の視点から、次下の頁において、 原子を形作る要素的形成が重力によってなされているという考えに理由があることが示されるであろう。
電子を構成する電気力の平衡を説明する理論を仕上げるためには、偉大な労力がとられた。特に、G. Mie は、この問題に深い 研究を捧げた。彼の理論は、理論物理学者の間にかなりの支持を見出したが、Maxwell-Lorentz 理論のエネルギー項に追加として、 電磁ポテンシャルの成分に依存する補追のエネルギーテンソルを導入することに主に基づいている。これらの新しい項は、外側の 空間では重要でない。しかしながら、電子の内部においては効果的に、電気力の斥力に対抗して平衡を保持する。Mie, Hilbert, Weyl によって建設されたように、この理論の形式構造の美しさにも関わらず、その物理的結果は、これまで不満足なものであった。 一方に、可能性の多様性は、落胆させるものであり、他方に、それら追加の項は、それら自身を解が満足できる単純な形式に枠組 されることをまだ許されていない。
今までのところ、一般相対論は、この問題の状態を変えていない。もし、我々が、しばらく、追加的な宇宙項を無視するならば、 場の方程式は、次の式をとる。 \[ G_{μν} - {1\over 2} g_{μν} G = - κ T_{μν} \tag{1} \] ここで、$G_{μν}$ は、縮約された Riemann 曲率テンソルである。$G$ は、再度縮約されたスカラー曲率であり、$T_{μν}$は、"物質"の エネルギーテンソルである。$T_{μν}$が $g_{μν}$ の微分に依存 しない という仮定は、この方程式の歴史的な開発において 保たれてきた。なぜなら、これらの量は、もちろん、$g_{μν}$ の変動が存在しない特殊相対論の意味でのエネルギー成分である。 方程式の左辺の第 2 項は、(1) の発散が恒等的に消滅するように選ばれている。(1) の発散を取れば、我々は次の式を得る。 \[ {∂T^σ_μ \over ∂x_σ} + {1\over 2} g^{στ}_μ T_{στ} \tag{2} \] その特殊相対論の極限の場合に、次の完全な保存の方程式を与える。 \[ {∂T_{μν} \over ∂x_σ} = 0 \] 物理的な基礎は、(1) の左辺の第 2 項のなかにある。 この種の極限の遷移が何かの意味があるとは、決して先験的に決まるものではない。なぜなら、もし、重力場が物質粒子の 構造に本質的な役割をもつなら、その極限での定数の $g_{μν}$ の場合への遷移が、それらにその正当性を失うだろうからである。 実に、一定の $g_{μν}$ では、どのような物質粒子も持ち得ないから。それゆえ、もし、我々が重力の粒子を構成する場の構造に役割 を果たしてよいという可能性を熟慮することを望むならば、方程式(1) は確認されたとみなすことはできない。
(1)に Maxwell-Lorentz の電磁場 $φ_{μν}$ のエネルギー成分をいれ、 \[ T_{μν} = {1\over 4} g_{μν} φ_{στ} φ^{στ} - φ_{μσ} φ_{ντ} g^{στ} \tag{3} \] 我々は、(2)のために、発散をとり、幾らかの整頓をして(*)、 \[ φ_{μσ} J^σ = 0 \tag{4} \] ここで、簡明さのために次のように置いた。 \[ {∂ \over ∂x_τ}(\sqrt{-g} φ_{μν} g^{μσ} g^{ντ}) = {∂f^{στ} \over ∂x_τ } = J^σ \tag{5} \] 計算のなかで我々は、次の Maxwell の第 2 の方程式系を使用した。 \[ {∂φ_{μν} \over ∂x_ρ} + {∂φ_{νρ} \over ∂x_μ} + {∂φ_{ρμ} \over ∂x_ν} = 0 \tag{6} \] (4) から、電流密度$J^σ$ は、どこでも消滅するべきことをみる。それゆえ、式 (1) によって、我々は、自身を制限しても、 Maxwell-Lorentz 理論の電磁成分を永く知られたようにするような電子の理論に到達できない。こうして、もし、我々が (1)を 保持するなら、Mie の理論への道に引き込まれる。
物質の問題だけでなく、宇宙論的問題も同様に、方程式 (1) への疑いに導く。私が以前の論文で示したように、一般相対論は、 宇宙の空間的な有限を要求する。しかし、この宇宙の見方は、宇宙の全体質量(又は、それぞれ平衡物質密度)に固定的に関係する 新しい宇宙定数$λ$の導入を伴う、方程式(1)の拡張を必要とする。これは、理論の形式的な美を大きく損なう。
上で投げかけられた困難は、方程式(1)を次の場の方程式に置き換えることで取り除かれる。 \[ G_{μν} - {1\over 4} g_{μν} G = - κ T_{μν} \tag{1a} \]
ここで、$T_{μν}$ は、(3)によって与えられた電磁場のエネルギーテンソルを示す。
この式の第 2 項の係数 $-1/4$ の形式的な正当性の理由は、左辺のスカラー、 \[ g^{μν} (G_{μν} -{1\over 4} g_{μν} G) \] が恒等的に消滅することにあり、それは、右辺のスカラー $g^{μν} T_{μν}$ が (3)の理由によってそうであるのと同様である。 もし、我々が式 (1a) の代わりに式 (1) に基づいて論じるならば、我々は、反対に、条件 $G= 0$ を得ることになる。それは、 電気的場に独立に、どこにおいても $g_{μν}$ に成立しなければならない。方程式系 [(1a),(3)] は、[(1),(3)] の帰結であり、 その逆ではない。
我々は一見、(1a) と (6) は、全ての場を決定するのではないかと疑いを感じるかもしれない。一般相対論では、我々は、 n 個の独立変数を定めるためには、互いに独立な n - 4 の微分方程式を必要とする。解のなかに、座標の選択の自由さの ために4つの全く任意の関数が全ての座標に自然に発生しなければならないからである。こうして、$g_{μν}$と$φ_{μν}$の16個の 独立量を定義するためには、全て互いに独立な12個の方程式を必要とする。しかし、実際に起きたように、(1a) の9個の式と (6) の3個の式が互いに独立である。
(1a) の発散を形成し、発散 $G_{μν} - {1\over 2} g_{μν} G $が消滅することを考慮するなら、我々は次を得る。 \[ φ_{σα} J^α + {1 \over 4κ} {∂G \over ∂x_σ} = 0 \tag{4a} \] このことから、我々は、最初に、電気的密度の消滅した4次元領域のスカラー曲率 $G$ が定数であることを認識する。 もし、全てこれらの空間の部分が連結していて、そしてそれゆえ、電気的密度は、分離した "世界紐" のなかだけで 0 と異なると 我々が仮定するならば、そのときは、これら世界紐の外側のどこにおいても、スカラー曲率は一定値 $G_0$ をもつ。 しかし、方程式 (4a) はまた、0でない電気的密度をもつ領域のなかでの $G$ の行動について重要な結論を許す。 もし、伝統的に電気性を動く電荷の密度とみなすならば、次のように置くことによって、 \[ J^σ = {J^σ \over \sqrt{-g}} = ρ{dx_σ \over ds}, \tag{7} \] 我々は、(4a) から、$J^σ$ を内積することによって、$φ_{μν}$ の反対称性のために、次の関係を得る。 \[ {∂G \over ∂x_σ} {dx_σ \over ds} = 0 \tag{8} \] このように、電気性の運動の世界線上でスカラー曲率は、一定である。式 (4a) は、次の声明によって図形的な仕方で解釈できる: スカラー曲率は、負の圧力の役割を果たし、それが電気的粒子の外側に一定の値 $G_0$ をもつ。それぞれの粒子の内部においては 負の圧力(正の $G - G_0$) が存在し、その降下が電磁力を平衡に維持する。最小の圧力、又はそれぞれ、最大のスカラー曲率は、 粒子の内部では、時間によって変化しない。
我々はいま、場の方程式 (1a) を次の式に書く。 \[ (G_{μν} -{1\over 2} g_{μν} G) + {1\over 4} g_{μν} G_0 = - κ(T_{μν} + {1\over 4κ} g_{μν} (G - G_0)) \tag{9} \] 一方で、我々はその方程式をすでに与えられた宇宙論的な項を付けて変換し、 \[ G_{μν} - λg_{μν} = - κ(T_{μν} - {1\over 2} g_{μν} T). \] スカラーの方程式に 1/2 を掛けて引き、次に得る。 \[ (G_{μν} - {1\over 2} g_{μν} G) + g_{μν} λ = - κ T_{μν}. \] いま、電気的場と重力の場だけがある領域のなかでは、この方程式の右辺が消滅する。 そのような領域では、スカラーの式では次を得る。 \[ - G + 4 λ = 0. \] そのような領域では、それゆえ、スカラー曲率は定数で、$λ$ が ${1\over 4} G_0 $によって置き換えられる。 このように、我々は、初期の方程式 (1) を次式に書くことができる。 \[ G_{μν} - {1\over 2} g_{μν} G + {1\over 4} g_{μν} G_0 = - κ T_{μν} \tag{10} \] (9) と (10) を比較することによって、我々は、新しい場の方程式と、初期のものに差がないことをみる。 ただ、違いは、$T_{μν}$ の代わりに "重力的質量" として、いまは、 $T_{μν} + {1\over 4κ} g_{μν} (G - G_0)$が起きている。 それは、スカラー曲率とは独立である。しかし、新しい定式化は、次の大きな利点がある。 量$λ$が基本方程式のなかで積分定数として現れ、基本法則としては奇妙な宇宙定数ではないということである。
最後の結果は、すでに次の推測を許す。我々の新しい定式化をもってすれば、何も付加的な仮説なしに、 宇宙が空間的に有限であるとみなせる。 先行する論文と同様に、私は、均一な物質の分布を伴って球状の世界が方程式に共存することを再び示す。
第1段階として、我々は次を置く。 \[ ds^2= -γ_{ik} dx_i dx_k + dx_4^2 (i,k = 1,2,3) \tag{11} \] そのとき、もし、$P_ik, P$ をそれぞれ、3次元空間の2階の曲率テンソルとスカラー曲率とすると、 我々は、次をもつ。 \[ \begin{align} G_{ik}&= P_{ik} (i,k = 1,2,3) \\ G^i_4&= G_{4i} = G_{44} = 0 \\ G &= -P \\ -g &= γ. \end{align} \] それゆえ、我々の場合には次が出る。 \[ \begin{align} G_{ik} - {1 \over 2} g_{ik} G &= P_{ik} - {1 \over 2} γ_{ik} P (i,k = 1,2,3)\\ G_{44} - {1 \over 2} g_{44} G &= {1 \over 2} P \end{align} \] 我々は、ここから、我々の熟考をふたつの方法で追求する。最初には、(1a) の支持をもって。 ここで、$T_{μν}$ を物質を構成する電気的粒子からくる電磁場のエネルギーテンソルを表す。 この場には、我々はどこでも、次が成り立つ。 \[ T^1_1 + T^2_2 + T^3_3 + T^4_4 = 0 \] 個々の $T^ν_μ$ は、場所によって急速に変わる量である;しかし、我々の目的には、我々は、 疑いもなくそれらの平均値に置き換えてよい。我々は、それゆえ、次を選ばなくてはならない。 \[ T^1_1 = T^2_2 = T^3_3 = -{1\over 3} T^4_4 = const \\ T^ν_μ = 0 (for μ≠ν) \tag{12} \] そして、それゆえ、 \[ T_{ik} = {1\over 3} {T^4_4\over \sqrt{γ}} γ_{ik}, T_{44}= {T^4_4 \over \sqrt{γ}}, \] これまで示した考察のなかで、(1a) の代わりに我々は、次を得る。 \[ P_{ik} - {1\over 4} γ_{ik} P = - {1\over 3} γ_{ik}{κT^4_4 \over \sqrt{γ}} \tag{13} \] \[ {1\over 4} P = - {κT^4_4 \over \sqrt{γ} } \tag{14} \] 方程式 (13) のスカラーは、(14) と合致する。我々の基本的な方程式が球状宇宙のアイデアを許すのは、 このためである。なぜなら、(13) と (14) から次が出る。 \[ P_{ik} + {4\over 3} {κT^4_4 \over \sqrt{γ}} γ_{ik} = 0 \tag{15} \] そして、この系が(3次元)球状宇宙によって満足されることは知られている(*)。
しかし、我々は、また、我々の熟考を (9) に基づくことができる。(9) の右辺に現象論的視点から、 物質のエネルギーテンソルによって置き換える項を置くことができる;それは、次の値で置き換えることである。
0 0 0 0
0 0 0 0
0 0 0 0
0 0 0 ρ
ここで、$ρ$は、静止を仮定する物質の平均密度を表す。我々は、こうして、次の式を得る。 \[ P_{ik} - {1\over 2} γ_{ik} P - {1\over 4} γ_{ik} G_0 = 0 \tag{16} \] \[ {1\over 2} P + {1\over 4} G_0 = - κρ \tag{17} \] 方程式 (16)のスカラーと (17) から、次を得る。 \[ G_0 = - {2\over 3} P = 2κρ \tag{18} \] そして、結果的に、(16) から、 \[ P_{ik} - κργ_{ik} = 0 \tag{19} \] その方程式は、係数の表現以外は、(16)に合致する。比較して我々は、次を得る。 \[ T^4_4 = {3\over 4} ρ\sqrt{γ} \tag{20} \] この方程式は、物質を構成するエネルギーが、その 3/4 を電磁的場に、1/4 を重力に帰するものであることを示す。
上の熟考は、重力と電磁的場との単独から出て、Mie の理論の線に沿った仮説的な補追の項なしの、物質の構成の理論の 可能性を示す。この可能性は、宇宙論的問題の解のために、特別な定数$λ$の導入の必要性から我々を解放することによって、 特に有望に見える。一方、そこには奇妙な困難がある。なぜなら、もし、我々が(1)を静的球対称の場合に特殊化するなら、 我々が得るのは、$g_{μν}$と$φ_{μν}$ を決定するにはひとつ不足する方程式がある。その結果は、電気性の 任意の球対称分布 が、平衡に留まる可能性を表している。 このように、基本的量子の構成の問題は、与えられた場の方程式に直接に基づいては、いまだに、解くことができない。