木馬篇(2001)
 
 
2002年度用年賀状版画です。実際、最初は木版でほりだしたんだが、中途挫折。なんでこんな細かい原画を作ってしまったのか?もう2年間彫刻刀触れてなかったけど、時とともに上達してないと、昨年さぼった言い訳がたたんのよ。でも額の効果というのは、面白いなと思って。ルオーが良くやる手なんだけどね。

ええと、馬は二匹います。心理学の授業で習ったことを応用して使ってみました。だから、木馬のほうの足の重ね具合とか、立体だとありえない感じも見せてみました。
あと、木は葉をつけているのか、それとも枯れ木なのかという微妙なものでもあります。単に必然的な感じだった。

林檎は知恵の木の実というか、禁断の果物というか。

私が好きな書物に『金枝篇』というのがあるけど、そのなかで、「王殺し」というのがありますね。ネミの森で、たった一本の聖なる木に生える、黄金のヤドリギを折り取ったものが、その神木を守る、森の王に決闘権を得る。そうして、王は殺されることで、殺したものに王位を奪われる。これが伝統であり、祝祭である。実に興味深い。
そのイメージで彫りました。だからヤドリギも彫ってみた。

一角獣はもちろん、イデア界へ。(笑) 蝶の羽はプシュケーの象徴。馬は魂の比喩です。これからイデアを観照に行くんです。プラトンの『パイドロス』の雰囲気も念頭においていました。

ぶちというか牛模様なのは、なんとなくなんだけど、『パイドロス』の中で、白い馬は良い馬、黒い馬は悪い馬という、あたかも人種差別のような、二項対立が出てくるんだよね。だから、いっそのこと、混ぜてみました。人間は色々混ざったもののような気がします。
 
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