LIGOの重力波

片山泰男(Yasuo Katayama)
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旧版(2016/2/22)

目次

はじめに
 1. ジョセフ・ウエーバーによる実験(1969年)
 2. 現代の重力波の測定(ファブリ・ペロー型共鳴実験)
 3. 重力波は、地上で存在確認がされていない
 4. 計量の変動の局所検出は可能か
 5. 重力変動の局所検出は可能か
 6. 一様な g_00 変動の局所検出は不可能
 7. 空間計量の変動の局所検出は可能か
 8. LIGO の測定
 9. 重力波は存在するのか
10. 議論
12. ニュートンポテンシャルは、重力波をもつか
13. 重力は、ポアソン方程式を(負に)満たすが、ダランベール方程式を満たすか
14. ニュートン重力の波動
15. 計量への理解に基づく重力波の測定


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はじめに

重力波は光速で伝わる進行方向に垂直な空間計量の微小な変動の波である。大きな変動は、非線型性が効いて光速を超える伝播をするかも しれない。一般相対論の重力方程式は、非線形(g_ik の微分Γ(ガンマ)の2次式を含む)だから、重力波は、弱い重力の近似をいれないと 波動方程式にもならない。高速物体の起こす重力場は、高速な電荷の出す電場のように、静止物体より大きな重力をだすかどうかさえ明確 にするのが、私には難かしい。その数学的な扱いの困難さによって、ニュートン重力で3体問題が解けないようにアインシュタインの 重力方程式は、2体問題が解けないと言われている。

そもそも重力はそのように時空に関係している必然性はあるのだろうか。もしかすると電磁気程度のものかもしれないではないか、という気 にもなってくる。 しかし、重力が万物に同じく影響することは、計量現象であることを表し、重力が遠隔作用でないためには、重力変動が エネルギーをもって伝搬する必要があると考えられている。

現在、地球上の時刻あわせにすら実用化され、Dirac によって量子論にも導入されてスピンの発見という成功を収めた特殊相対論と比較して、 一般相対論は、アインシュタインの当時から、光の弯曲による皆既日蝕の近傍の星の位置の変位、水星の近日点移動という検証を得て、 最初から多大な信用を受けた理論であり、それ以外の理論の息の根を止めたと思うが、その後の数値的な精度の検証は、ほとんどなされない。 航空機による原子時計の地球一周による検証、現在、GPS にも使われている高さによる時間経過の調整は、ニュートン力学の範囲に含めても よいような、重力ポテンシャルによる時計の遅れである。ポテンシャルが実在して時間経過が単純にポテンシャルに比例することしか使って いない。そのような一般相対論の検証実験の中で、際だったものとして、重力波検出がある。


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1. ジョセフ・ウエーバーによる実験(1969年)

ジョン・テイラーの”ブラックホール”(渡辺正訳) によると、重力波は、メリーランド大学のジョセフ・ウエーバー(1969)によって 報告がされたが、現在それは間違いであるとされている。長さ 1.5m 直径 1m のアルミの円筒を真空中に吊下げ、その振動を表面に 張り付けた水晶で検出する。振動の感度は、原子核サイズの1000分の1までである。近傍の振動を避けるため、1000km離れたシカゴに 2 台目の装置をおいた。数ヵ月に渡って偶発的でないパルスを数100 回検出したという。ほぼ 4 日に1回 1/2 秒のパルス状の 1600 Hz の振動で、感度の高い方向が銀河中心を指しているときに集中している。これは、銀河中心に巨大なブラックホールがあって、 近傍の星を飲み込んでいる振動と解釈された。銀河中心からの重力波なら太陽200個分の質量に相当するエネルギーの放出であり、 100年に1回しか起こらない超新星爆発に相当する。それが4日に1回起こるのだろうか。実験結果は他の研究者によって再現されなかった。

現在はウエーバー装置の感度を 6 桁以上超える実験装置で観測がされているが、結果が得られない。もし当時の精度で検出が可能であった なら現在の装置で肯定的結果が出ないはずはない。つまり、当時信用されていた重力波検出の不可能性を打ち砕くようにみえた、彼の 実験結果は、現在、信用されていない。


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2. 現代の重力波の測定(ファブリ・ペロー型共鳴実験)

重力波は、互いに回転する 2 重中性子星の回転の変化 (*1) を説明することにおいて、存在確認された。Princeton 大学のJoseph H. Taylor 等にノーベル賞が与えられた。

現代の重力波の測定は、直角に配置した 2 本の数キロメートルの真空パイプの中をレーザー光を多数回往復させ(ファブリ・ペロー型 共鳴実験という)、両者の位相差を測定して、原子核のサイズの何 10 万分の 1 の精度の距離測定をもってなされている。(2003 年の LIGO の報告の精度は、10^-22 であり、これは 1m に対して原子核サイズ(10^-15 m)の 10^-7 である。) 数千万光年から数億光年先の 銀河の超新星現象まで検出する能力があるという。それでも未だに重力波は、地上で "存在確認"さえできていない。その光の干渉を 使った2本の直角の腕の構成は、特殊相対論の出現まで存在すると思われていたエーテル存在を確認しようとした、マイケルソン・ モーリー実験の形を巨大化して模している。検出するための装置を作っていながら検出できない "ヌル検出" 結果も一致している。

地上での光干渉による重力波検出は、アメリカの LIGO、英独の GEO600、伊仏の Virgo、日本の TAMA300 が稼働中である。そして 米欧の宇宙干渉計 LISA が計画されている。精度は、ウエーバー実験が 10^-15、日本の TAMA 300は、300 m レーザー干渉計だが、 1999 年〜2002 年まで世界一の検出能力 (隣のアンドロメダ銀河ぐらいまでの現象検出)という。その将来的 3km 腕では、数億光年先の 現象の検出、10^-20 の変動検出という。

我々は、特殊相対論の誕生前のマイケルソン・モーリー実験から 100 年を経過して、再びもっと巨大なマイケルソン・モーリー実験を しているのだろうか。いや、それらの求める結果は違う。特殊相対論以前のエーテルの検出は、進行方向に平行と垂直による光速の違い であった。ローレンツ変換の破れ、光速の等方性測定ではなくこれは、重力波検出である。しかし、現在までのLIGOの 10年以上の実験 結果は、それが証明可能な実験だったなら、すでに反証といえるのではないかという気がする。

(*1) 双子のパルサー PSR1913+16 は、7 時間 45 分 7 秒(27906.9807807+-9sec)の周期を次第に減らしている。その比率は 76.38μsec/year である。これは、2.425+-10 x 10^-12 程度の変化である。 (岡村浩の"新訂相対論" (放送大学7040)による。)


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ここで考えられるLIGOの原理的筋書きは、"光の波長という変わらない物差しを使って、物体間の空間の伸縮を測る" というものであろう。 私はLIGO等の測定装置の光の波長と光速が、局所の空間計量によって伸縮すると思っている。局所の観測者の「変わらない物差し」が遠方 の人にとっては変動するのである。だから、どれほど局所の距離が伸縮しても測定にはかからない。物差しが同時に伸縮するからである。 このことは、一般に理解されず、重力波によって潮汐力のような、力による伸縮が現実に働くと説明される。私は重力波の存在とそれによる 伸縮を否定しない。その場所の光という物差しが同時に伸縮することを指摘するだけである。局所の計量が変化するとき、局所が遠方の 平坦時空の標準値からみて伸縮するのであり、それは空間と物体とを区別しない。まして、その場所の何を物差しにするかに依らない。

そして力は働かない。それは基本的に力学現象ではなく時空の現象である。特殊相対論のローレンツ短縮が座標変換であり、ローレンツや フィッツジェラルドの考えたエーテルの力学的な圧縮ではなかったのと同様である。物体と空間の伸縮、物差しの光の波長の伸縮は何らの 時間差もなく起きる。少しでも時間差があれば測定の可能性があるがその要素がない。光速で重力波がくるとき、その場の装置は同時に伸縮し、 重力波はその場の力学に影響を与えず素通りする。重力波が物体に力学的影響を与えるなら、そこでのエネルギー消散は重力波の(=計量変化 の)減衰や遮蔽をもたらす。光の減衰は顕著だが、重力波の減衰は宇宙の果ての距離においても無視できるほど軽微であろうが、重力波が発生 できるなら消散もできるから、重力波が力学に影響がないわけではない。しかし、基本的に局所の計量変化は局所で検知できないものである。

"重力波が原理的に測定できないと考えられていた時代もあった"、と彼らがいうとき、昔とはウエーバー以前であって、ウエーバーが学者を 説得して実験をしたのである。そして伸縮はウエーバー実験ほども力学的伸縮すると思っていたと思う。そして、それが否定的であったとき、 精度の桁を何桁も向上させて高度な装置によって実験を繰り返す道をとった。いま精度はすでに4桁は超えていて、LIGOの計画精度は10^-24 である。6桁の精度向上である。つまり彼らは、6桁も予想を変えて、Advanced - LIGO, Advanced - Virgo という再実験を希望している。


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3. 重力波は、地上で存在確認がされていない

問題は、基本方程式が 1915 年に与えられて、これほどの間、地上で存在確認ができていないことである。電磁波が Maxwell (1831-1879)による 定式化(1865年)から Helz によるその発生受信実験(1885年)までの20年と比べて、余りにも長期に渡っている。20世紀の電磁波の利用技術、電気 通信技術の高度化は、我々の知る、殆ど全産業に関わるのに比較して、重力波は、有効な道具になっていない。それどころか、基本の理論ができて、 100年間に地上で存在確認さえできていない。

私は、基本的な重力波の局所検出性に疑問を持つ。これらの検出実験は、局所の計量の変化を局所で検出しようとするからである。力なしに物体の 間隔が変動し、力で拘束されていない物体間にだけ現れ、宙に浮かせたレーザー光の反射鏡だけが振動し地球は変動しないだろうか。大きなサイズ では地球も軟らかいし、光の波長は、局所の計量そのままに伸縮するだろう。

一般相対論は光速度を一定としない。時空間の関数である計量によって決まる。何かこれは、膨張宇宙論と共通する、計量の理解の問題と思う。伸縮 するのは空間であって物体でないと誤解する人が多い。測定が主目的の技術向上において、LIGOなどの装置の貢献は大きかったが、相対論の意味の 難しさはそれを超えている。計量は空間と物体だけでなく最大の剛体である座標系さえ同時に伸縮させる。ある場所の空間計量g_ii(i=1-3) が変動するとき、遠方の平坦時空からみる間隔は1/√g_iiに比例するが、光速も√(g_00/g_ii) に比例する。ボルンの入門書にはこの式がある(*)。 又は、ds^2= g_ik dx^i dx^kという計量の基本式に戻って、光の ds= 0 をいれ、g_ii(i=0-3) 以外の計量が0のとき、光速は dx^i/dx^0= √(g_00/g_ii) である。それゆえ、観測者は近傍だけをみては計量を知り得ない。局所の光の波長を参照にしては局所の間隔は変化しない。局所の計量は、遠方の 計量を基準にするか、逆に局所から遠方の時空間隔の変化を測定しなければならない。このとき、時間計量g_00(重力ポテンシャル)の変化は、光の 周波数の変化、赤/青方偏移として遠方からの測定が容易だが、空間計量g_ii(i=1-3)は、光の波長がその到達場所それぞれの空間計量に対応して伸縮し、 遠方で測定しても出発場所の空間計量を保存しないから、空間計量の測定はさらに難しいだろう。

重力波による物差/時計の変動は、局所検出は無理で、時空的に十分離れて初めて検出できるだろう。ポテンシャルg_00による時間経過の変動なら、 離れた場所へのメスバウアー効果で検出できる。そして、近傍の地上現象の重力波を検出すべきではないか。宇宙的現象が地上現象より大きいという 話は疑ってもよい。天体現象に頼らず地上では、近くで発生し近くで検出するほうが有利で、バー回転による検出実験さえ可能かもしれない。 重力自体の検出は、数cm離れた人間の拳、数m離れた人間の存在さえ容易に検出するという。それが遠方に届く波として確認ができていないのである。

この人間の接近と後退、拳の接近後退にはどのような伝播が伴うのだろう。電磁場と電磁波の扱いの違いと類似して、分離は容易ではない。電荷が 電荷に接近/後退するとき、そこに電磁波を使った説明はしたくもない。うまく説明できるはずがないからである。まずは、2つの回転するバーを接近 させて重力の影響を確認し、それを(回転の軸方向に)離していってどこまでバー回転間の影響が確認できるかによって、重力波の存在を確認すべき ではないか。我々には、重力の変化自体を重力波という習慣がないかもしれないが、真空を変化が伝わるにはその伝播現象が必要である。重力の変化 自体が、重力波の存在を意味しないか。しない。それはニュートンの即時伝播の重力であってもよいから、すぐに重力波とはいえない。こういうなら、 伝播速度を測定すべきだろうが、それは次の課題である。我々が、重力の即時伝播を否定するなら、重力の変化自体が重力波の存在を示唆しており、 それなしに離れた場所の重力は変化できないと考えるべきなのである。

ヘルツのした電磁波の実験は、リングをもった回路の空隙に火花を飛ばし、それと離れた空隙をもつリングが電磁波を受けて火花を示したという、 非常に原始的な実験だった。現代の技術はそれを10桁も15桁も超えているだろう。しかし、ヘルツは存在するかもしれない宇宙電波に頼らなかった。 それは元来、非常に弱いものである。彼は、遮蔽、反射、屈折、速度の測定までしたという。検出できないとき実在が疑われ、発生できないものは役には立たない。 百年間もそうなら、理論の正しさが疑われる。重力波の検出には、それほどの意味があると考えられてきたと思う。

(*)M.ボルン、林一訳、"アインシュタインの相対性理論" 東京図書 (参照:VIIアインシュタインの一般相対性理論 10光学上の結論とその確認 P.295)


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4. 計量の変動の局所検出は可能か

物差と時計の進みの変動は、ともにそれぞれ個別には、局所で検出できないものである。むしろそれは、それに影響しないように法則が見出される 固有時、固有長の保存原理である。特殊相対論において、ある慣性系からみて速度をもった慣性系の全ての間隔が均一に短縮し、その中の時計が遅れる という現象は、その短縮を受ける系の中における時間、長さの測定を全く乱さない。それが座標系に依らない固有時、固有長の意味である。 他の速度をもつ系からみるだけで慣性系が短縮するのは、力学的な作用ではない座標変換であった。慣性系は自分の速度(絶対速度)を知り得ない。

時間と空間は絶対でない。速度をもつ座標系の空間はローレンツ短縮し、時間は遅くなる。時空の変換をローレンツ変換という。慣性系Kに対しx方向の 速度vをもった系K'からみて、

x'= γ(x - v t),
t'= γ(t - v x),
y'= y, z'= z, γ= 1/√(1-v^2)

見る側 K'系の同時刻では、t'= 0, t= vx を代入し、x' = 1/γ x "ローレンツ短縮" だが、K系の同時刻 t=0では x'= γ x で伸長になる。 同じく、見る側の空間の1点の時計と比較 x'= 0 ならt'= 1/γ 高速化だが、K 系の1点の時計は、x= 0 で逆に t'= γ t "時計の遅れ" である。 このように時空は相対的に変化するが、不変の時空間隔 x'^2 - t'^2 = x^2 - t^2 がある。速度は x 方向だけでなく、y, z 方向も同様だから、

ds^2= dx^2 + dy^2 + dz^2 - dt^2 ......(1)

が慣性系によらない不変量である。速度をもった観測によって距離や時間が変わるが、そこには不変量が存在する。これは、系内空間 dt= 0 では、3角形の 斜辺の長さのピタゴラスの定理、回転における剛体の法則に還元されるから、不変量(固有時または固有長)は、系内測定の結果といえる。 ローレンツ変換の不変量は、空間の2乗和のユークリッド距離から時間の2乗を引くから、時間が虚数なら4次元ユークリッド距離保存則、剛体の法則である。

それに対して、一般相対論における計量と不変量の関係は、系の中の時間経過と物差しを時空の関数にした。遠方からみたある時空点の時間経過と物差しに関係 する計量 g_ik は時空の関数、場であり、ある時空点の2つの微分時空 dx^i dx^k の積に計量 g_ik を掛け i,k= 0-3 の総和をして(1)の不変の時空間隔 ds^2 になる。

ds^2= g_ik dx^i dx^k .........(2)

dx^i や dx^k は、その時空点の微分の時空間隔であり、その点を離れて客観的にみて標準値でないと捉える、その場所の、ある方向の物差しの長さや時計の間隔であり、 基準とする遠方の平坦時空又は局所慣性系からみて、その物差しは短縮したり時間経過が違っているのである。ひもを切ったエレベータ内が無重力状態になるように、 系への重力以外の外力をなくせば、時空は局所慣性系へ変換され、無重力のミンコフスキー時空を現わす。そのとき(2)のg_ikは標準値、対角(i==k)だけ(1,1,1,-1)になり、 不変量は式(1)に戻る。微分時空 dx^i や dx^k が g_ikに応じて伸縮し、総和は、g_ik によらず不変である(*)。

重力波は、計量場 g_ikの変動であり時空の計量を媒体として光速で伝播する。しかし、ある局所において計量が変動するなら、何もない空間と剛体も同じように 比例的に伸縮して、局所の観測者にその変動は見えず、変動は十分離れた時空点から初めて知ることができる。局所の硬い物差しは変動せず、軟らかい空間だけが伸縮し、 それが光で計測できるというものではない。時間計量の違いは全ての現象の時間を伸縮させる。空間計量の違いは、物体間隔を変化させるだけでなく、 物体自体の長さも比例的に変化させ、局所の物差しをも変化させる。それゆえ、計量 g_ik の変動は、局所の自己計測では知り得ない。 一般相対論は、重力現象として現れる計量を扱うが、物差しと時計の進み(微分時空)と計量は局所で知り得ないのである。

しかし、計量の変動が局所に何の現象ももたらさないなら、そして、宇宙論での計量はそのように遠方の見えかたと宇宙の一生にしか影響しないものであるが、 計量が単に遠方からみた時空の見え方だけであるなら、それは、計量自体の現実性を失うに十分な根拠である。そのような計量の意味は、十分でない。例えば、 天体の側の時空は、空間計量と時間計量の両方が、無限遠の平坦なミンコフスキー時空、式(1)の標準値との違いをもつが、局所にみえる現象として物体の質量 に比例した力を与える重力加速度として現れる。一般の時空を扱う原理として、どの時空点も外力をなくせば局所慣性系の無重力、ミンコフスキー時空が再現する。 それは局所で実行すれば知り得ることである。重力はニュートン力学のように直接に天体との距離によって現れるのではない。重力の実体は時空の計量 g_ik であり、 質量分布から重力方程式によって与えられる。逆に、計量から質点へは、計量の微分(g_00 の勾配など)から重力があり(**)、計量変動は重力変動として現れ、 物体に振動を与える。それが重力波の検出の意味であると思い返すことができる。

計量は、原理的には局所の周辺を利用して測定が可能であるが、それは「原理的には」と限定のつくほど逆説的なのである。

(*)これは、重力波が空間計量の変動なら、空間計量の変動は、時間計量の変動なしにないことを表すか。いや、g_ik が全く任意なら不変量ds^2の意味はないが、 進行方向に垂直な空間計量の2方向の伸縮が反対なら時間計量の変動なしにでき、それが重力波の解とされる。しかし、そのような時間計量一定の波だけを考える ことに意味はなく重力が伝搬するにはg_00変動も伝搬されないといけない。

(**) 測地線方程式が重力の加速度を扱う。計量の3方向の微分の式 [rs,i] があって、2つの方向rsの速度積によって、別の方向iの加速度を生み出す。 測地線の物理 参照。

[この章、大幅修正。旧版(2016/2/22)] (2017/8/7)


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5. 重力変動の局所検出は可能か

例えば、とてもあり得ないが、地球の質量が時間的に変動するなら、地上にいる我々は体重の変化を感じるだろう。それは、局所で客観的に 検出可能な変動である。硬い地面の上で人体が受ける重力加速度が変動するとき、重力加速度の変動が力の変動になり、力の変動は、ばねの 軟らかさによって、ばねの長さの変動として(天秤でない体重計で)、局所検出できるだろう。しかし、重力加速度が変動しても周囲の物体が 宙に浮いている人工衛星軌道上では、衛星内のすべての物体は等しい重力加速度をほぼ同時に受けて運動するから、衛星内部の現象としては 打ち消されて検出できない。それゆえ、惑星の重力異常(地上の物体配置による場所による重力の微小変動)を人工衛星軌道上から測定するには 自らの軌道を測定するのである。重力変動は人工衛星内部の測定器では不可能ではないが検出しにくいのである。

つまり、重力の時間的変動は、浮動物体では検出できず、有効に検出可能なのは、重力をさらに空間微分した潮汐作用である。ポテンシャル 勾配である重力ベクトルをさらに空間微分したベクトルを潮汐作用という。通常の潮汐作用は、物体間の距離に比例した伸縮の加速度として現れ、 人工衛星の中の物体間を、重力源の天体の方向に伸ばす加速度として、また、それと垂直な面内では逆にその1/2の縮める加速度として現れる。 潮汐作用は、近傍の重力場の非一様性から起き、浮動する人工衛星内部の無重力状態でも検出でき、重力の空間微分であるから、重力源との 距離の3乗に反比例する。潮汐力は物体間だけでなく全ての質量に働き、それが強いときは人体内部にも影響し生存を脅かすものである。

しかしさらにもし、重力変動が空間的に一様なら、質点間が連結されているかどうかに関わらず、多質点のうける一様な加速度の時間的変動は、 一様な速度変動、そして一様な変位を生むだろう。そのため、遠方から来る一様な重力変動は、潮汐作用も存在せず、体重計では検出できない。 宇宙の遠方からくる重力変動は、光速でくる変動の到着時間差による非一様性でしか検出できないだろう。逆に、受ける時間差がある質点間には 力学的な現象となる。仮に遠方からくる重力変動が一様でないなら物体間に力学を生むし、重力源の質量変動なら浮遊物体の潮汐力変動となる。

例えば、月と地球の間隔は38万kmあり、月の方向から来る重力変動は、月に到着し約1秒後に地球に到着する。その1秒間だけ月地球間の運動に 変化が生じてよい。月がその方向に引かれてから地球がその方向に引かれるまでの1秒間によって、月の速度や距離が変動する。静かの海には アポロが設置してきた3面直角反射鏡がある。正確に90度に配置した立方体の角の鏡は、光を来た方向に返す。すでに40年間もレーザー光線で月との 間隔は測定され、年間3cm間隔が伸びているという。月の軌道は楕円で、月との距離は10%以上変動し、38万kmの数万kmの毎月の変動のなかの年間 3cmという値は10^-10の精度である。この月の距離の信号は解析できないのだろうか。勿論、月の鏡との間は干渉計ではなく光の到達時間であるが、 パルスでなくより高い時間分解能のM系列の疑似ランダム信号の相互相関での刻々の距離の測定だろう。地上側の測定点の自転、月太陽の潮汐や 振動をとり除いて、重力変動はこれら既知の信号に重なるだろうが、10^-10 の大きさである。この鏡で干渉計を構成できるなら精度は大きく変わり、 6-8桁程度向上でき低周波数域の高精度を与えるだろうが、空間計量の変動は検出できない。ある方向に重力を与えるのは時間計量(ポテンシャル) の勾配である。月に10%を超える距離変動のドップラーシフトは大きく、まず光を干渉させることが難しいだろう。往復時間の地上点のポテンシャル 変動による周波数シフトには、スペクトル分解によるシフト量測定が有用かもしれない。[この段落、2017年7月に推敲。]

バー(アレイ型双極子)の回転は、一方の重みが近付くとき他方は遠ざかり、両方の和は、打ち消す成分が多く近くには影響があっても遠方には 打ち消される。電磁気の双極子も、距離の3乗に反比例である。重力波の4重極では3乗では済まない。6乗程度だろうか。それを考えると、 遠方から来るそれを測定しようとするのではなく、まずは、室内でバー回転半径の数倍で受信すべきではないか。ジョセフ・ウエーバーのもとで 研究された R.L.フォワード氏は、精密な回転型の重力傾斜計を作られたかたであり、LIGOの元になった光干渉の測定装置の製作者でもある。 バー回転実験はもうすでに多く検討された後かもしれない。


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6. 一様な g_00 変動の局所検出は不可能

そして、一様な重力変動だけでなく、空間的に一様なポテンシャル変動は、さらに局所検出できないだろう。ポテンシャルの勾配が重力である。 空間的に一様なポテンシャルの時間変動は、重力変動さえ起こさない。一様な重力の変動が浮動局所で検出できないどころではない。遠方から来る ポテンシャル変動は、月地球間の例のようにその到達の時間差による勾配の重力によって検出が期待でき、周波数が低い場合に検出は難しい。 ポテンシャル変動が遠方(銀河中心、別の銀河)からの平面波として来るとき、それを太陽系、地球、人工衛星のなかの測定では、検知容易とは思えない。

仮に重力波が重力の変動としてあるなら、測定するのは距離ではなく、ゆるいバネを介した力の変動であり、バネの柔らかさに比例する変位[力/ばね定数] として現れるだろう。潮汐力は、時間計量√g_00(重力ポテンシャル)からは2回の空間微分である。1回空間微分する度に、波長/2 より小さい距離では 感度は距離にほぼ比例し、時間計量変動から潮汐力までには感度は距離の2乗に比例するから、測定器の中の距離に敏感で、検出にはできるだけ大きな 距離を使う必要がある。光速(30万km/s)から3kmの波長の波は、10^5 Hzである。現在の LIGOは、数10Hzから数kHzまでを扱うので3kmの間隔で1階微分で 2桁〜3桁、2階微分で4〜6桁の精度を失う。遠方からくる計量の時間的変化を、潮汐のような2階微分で検出するのは、とても難しい。距離の3乗に反比例 する潮汐力で遠方の銀河の超新星爆発の球対称性からのずれを検知しようとするのは普通、何を馬鹿な、と言下に否定されることである(*) 。

2点間の重力ポテンシャル差の測定にはメスバウワー効果による方法が昔からあった。X線の結晶による鋭い共鳴を使って、数10メートルの高さの ポテンシャル差を、検出器を動かしドプラー効果を使って検出した。水平2地点のポテンシャル差の変動は時間経過の変動を与え、振動を直接使わな い点、空間微分が1回少ない点が有利である。しかし、重力波には進行方向にポテンシャル差があるのかというと、重力波は、波の進行方向に垂直な 2方向の "空間計量" の変動として存在し、時間計量の変動ではないのである。そのため、重力をポテンシャル勾配とみる見方に沿う重力波検出は 正しくないだろう(**)。重力波は、その検出を我々がまだ経験したことがない、"空間計量の時間変動" である。重力場をポテンシャルの勾配とするポテンシ ャル変動ならまだ力に結び付けて考えやすいが、空間計量の変動は、どうやって体重計の目盛にまで到達できるのだろうかと途方に暮れるものである。

(*) まして、宇宙の初期のビッグバンの重力波を検知しようとするのは、仮定の上に仮定を重ねて不確実な起原を証明しようとすることである。 ビッグバンは超新星爆発よりはかなり規模の大きい爆発でありえるが、それは宇宙で距離最大の事象である。当時の宇宙の一様性がどの程度かは演繹 であり、それで振動が見付かったら、両方を証明することになるか、何も示したことにならないかもしれない。爆発の内部の空間的一様という宇宙原理 の崩れを仮定することになる。当時の一様性から現在の多様性が説明が付かないので、ダークマター、ダークエネルギーという実在の100倍の質量を仮定 する説明になったビッグバンを利用するのは任意性を100倍取り込むだろう。又は、意図せずに重力波も3つめに仲間入りさせるかも知れない。 ダークマターを1桁減らすのに役立つかもしれない。ダークエネルギーを不要にするかもしれない。 しかし、重力波という単独事象を、別の不確実さに包むことになる。

(**) その発生現象には依存するだろうが、重力波には時間計量の変動も存在すると考える。(2017/8/2)


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7. 空間計量の変動の局所検出は可能か

重力波が重力ポテンシャル(時間計量、時間経過)の変動ではなく、空間計量(物差しの大きさ)の変動であって、進行方向に垂直な平面内に伸長/ 短縮が直交する2方向に起きる空間計量の変動の横波である。そのため、ポテンシャル勾配としての重力の議論は的外れであり、結果が違うだろう。 空間計量がもし、電場が、E= -grad φ - dA/dt と書かれるように、電磁気のベクトルポテンシャルによってある程度、類推できるものなら、 重力には時間計量の勾配だけではなく、空間計量の時間微分の部分があるかもしれない。それによる重力の両方の鏡の間の空間微分があるかもしれない。

しかしもし、重力波が空間計量の変動なら、そして直交2腕の方向が重力波の進行方向に垂直な平面の伸縮の2方向に一致しているなら、その2方向の 空間計量の変動は同時で逆相であり、周波数と関係なく感度はどこまで腕の長さに比例し、伸縮は測定腕の距離に比例するだろう。(注意すべきは、 このとき、光の波長が空間計量に比例的に伸縮すると計量による長さ変動は全て常に0であることである。) そして、重力波の進行方向には周波数 だけが影響すると考えればよい。2つの腕の伸縮は逆相のままに時間的に変動する波となってくるだろう。腕の方向では光の波長が空間計量によって 伸縮 (√1/g_11と√1/g_22)するが、鏡の間隔は、光の伸縮に一致する空間計量伸縮分だけでなく、ベクトルポテンシャルに類する何かの時間微分の 空間微分∂^2 g_11/∂x_1∂x_4 が重力差となって現れるだろう。両鏡間の力の差が鏡の間の距離の変動をもたらし、重力波存在を示すだろう。しかし、 g_11 はベクトルポテンシャル成分とは同一視できない物差しの大きさを決める空間計量であり、その間には混乱が存在する(*)。

このような重力波が存在し、物質との相互作用が力のやりとりを基本にするなら、重力波は外部振動と区別できない性質をもつことになり、その 検出には、それ以外を原因とする近傍の全ての振動を止めることが必要になる。地上で重力波を検出するには、月では基本的にマントル対流がなく 月震はほとんどないが、地球では頻発する微小地震、そして人間の活動に伴う全ての振動をいかに切り離すかという問題に直面するだろう。 直角の光干渉計で2方向の伸縮差をとるのは、重力波にない通常の月と太陽の潮汐作用の膨脹/収縮(当然だがLIGOでの通常の潮汐作用の検出は成功 している) を打ち消すためだろうが、それ以外のランダムな誤差は全て積み重なるだろう。

注目すべきことは、重力波が物質に振動を与えるなら、その分空間の途中の物質によって減衰を受けることである。相互作用が大きければ大きいほど 減衰も大きい。ニュートン力学では何者も遮蔽できない重力が修正され、重力の影響の伝播、変動と波は、減衰と遮蔽が可能になるのである。

いま我々は、1m あたり原子核のサイズの10億分の1までの振動を拾おうとしている。その理由は、重力波の計量の変動を測定しようとせず振動を 測定しようとするからである。計量の変動に雑音は含まれなくても、振動には雑音が含まれるだろう。空間計量の変動は、星空の幾何学形状を変 形振動して見せるだろう。我々人類は、空間計量を計測した経験はない。物体振動のほうが見える変形よりずっと大きいのだろうか。そうだろう。 現在の我々には天体の伸縮や、星々の位置の変化を精密に測定できる技術はないだろう。例えば、もと1度の角度の星の間が10^-9度の変動するとき、 それは計量の10^-9という巨大な変動であり、LIGOの測定しようとする変動 10^-24 の 10^15 倍も大きい。大気の外に出た宇宙望遠鏡でさえ 1秒角の1/1000の測定は不可能に近く、天体の3角測量による距離推定をした ESA のヒッパルコス衛星(1989-1993)の精度には問題があった。

検出がいつであれ、LIGOであれ、advanced LIGO であれ、LISAであれ、雑音以上のものが見付かれば、それは重力波の証拠とされるだろう。 重力波は、一般相対論にとって必要な証明であるからである。しかし、明確な重力波の証拠をいつまでも捕捉できないなら、もともとそういうものは なかった、一般相対論に対する反証提示とされ、すぐに早計な理論家は、重力波のない一般相対論を考え出すだろう。明確な証拠が出てほしい。

(*) 重力のベクトルポテンシャルは g_0i (i=1-3)である。測地線の物理を参照。


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8. LIGO の測定

2003年、重力波の調査、英独共同の GEO600と 米国 LIGO との共同研究チーム 368人の著者の最初の観測的論文、 "Setting upper limit on the strength of periodic gravitational waves using the first science data from the GEO600 and LIGO detectors" (gr-qc/0308050) が出された。

これは、双子の中性子星 (J1939+2134) 1284Hz の重力波を検出しようとするものであった。GEO600(独国 Hannoverの600m) と LIGO の L1(Caltech-MIT による Livingston LA にある4km), H1 (Hanfordにある4km), H2 (Hanfordにある2km) の Fabry-Perot 空洞共鳴型 Michelson 光干渉計の 2002 年 8/23 〜 9/9 の 17 日間の測定結果 (GEO:401h, H1:209h, H2:214h, L1:137h) に対して、各周波数領域分析と時間領域分析の 2 種がなされた。結果は、ヌル検出で、この中性子星の重力波のエネルギーの 上限を設定したという結果である。LIGO の L1 (4km腕) の時間領域分析では、1.4 x 10^-22 で 95% の確率の上限。 GEO600 や他の地点 (H1, H2) でも、周波数領域分析でも同様で、これより若干高い上限である。

双子の中性子星パルサーの周期変動から、重力波は間接的に証明されたと一般に理解されている。その周波数の分かっている 双子の中性子星パルサーの 2 倍の周波数の重力波の成分の検出を試みるのは、優れた測定選択である。 2003 年の測定、science 1 は LIGOと、GEO600 が予定する感度にまだ達していない時期の結果である。 測定対象も、もともと所期感度でも数桁も感度不足であるため、検出できなくて当然という対象である。 しかし、重力波存在の証拠でもなく存在否定でもない、という結論であることは確かである。

また、2005 年春に、次の測定(S2)による重力波バースト検出報告、 S2からの重力波バーストの上限 が出された。これも重力波存在に 否定的な結果であった。バースト自体は、4日に1回ぐらい検出される (上述のジョセフ・ウエーバー実験の頻度と一致する) が、それが他の証拠に合致するものではない。2 回目の科学的データとしては、以前の最初の科学的データより、1 桁以上 感度が向上している。それでも重力波の証拠は出せない。 重力波ブラックホール検出 (LIGOとの共同研究)もヌルである。

その後 2007 年の結果、 39 のγ線バースト天体からの重力波検出 S2,3,4 の LIGOランから もヌル検出である。
S4 からの全天周期的重力波の検出 もヌル検出である。

しかも、それらは実験による否定ですらない。この重力波は、この 100 年間の一般相対論のなかの位置付けの大きさから、 困った問題になりつつあるのかもしれない。つまり、重力波が、数学的な幻影であったとするには、いまさら遅すぎる。 しかし、もしも今後も、LIGO と GEO600 の所期の検出限界、1年間の測定について 数10〜数100Hz と広い周波数範囲での 10^-24 の精度をもってしても検出できないなら、私の個人的な意見では、これは、反証かもしれないと考える。10^-24 とは、 1 m の長さに対して、原子核のサイズ (10^-15 m)の 10 億分の 1 である。そのような振動しか与えられない重力波は、 むしろ存在しないと言ったほうが正しいのではないか。存在しても、何の意味もないものもある。近傍で動きまわる人体の 発生する重力は、それよりはるかに、はるかに大きい。我々は、あらゆる振動源を取り去ってはじめて、真空が物体を振動 させることなどないと気がつくのかもしれない。

LIGOの論文は、重力波の存在を否定しない。もはや、これでそれは明らかであるとは決して言わない。確認できなかった存在を否定 していくことを、どこまでも繰り返す。実験家側にとってそれは唯一可能な方法であるというかもしれないが、それ自身、とてつも ない無駄を意味している。それ以上遠方のない宇宙の果ての超新星爆発まで検出できるようになっても、その事象の上限を設定した というだろう。さらに極端にいえば、近傍の恒星で超新星爆発が起き、夜が無くなっても LIGO は、同じことをいうだろう。我々の 生活が星からくる爆発によって壊されても。なぜなら、それはマイケルソン・モーリー実験と同じだからである。

2008年の結果、 LSC グリッチグループ:LIGO S5 の間雑音遷移の観測 S5 2年間の報告、 分析手段説明、微小地震、電力網によるグリッチ、1時間毎の自己診断信号などの排除の経過説明。
Einstein@Home LIGO S4 の周期的重力波の検出 ヌル検出。延べ数十万台 のPC、WS 協力による分散計算の方法の誤計算排除法。
LIGO と GEO 600 データから最初の重力波バースト探索 もヌル検出である。
軟ガンマリピータからの重力波探索 もヌル検出である。
初期 S5 データ内の周期的重力波の全天LIGO探索 もヌル検出である。

最近の結果は、1部の周波数では測定精度は 10^-24 を割り込みはじめ、明らかに重力波の検出ができてよい SNR 6.25 以上の 6 つの周期的重力波源について検出できなかった事を述べている。

2009年、 LIGO S5 と Virgo S1 によるγ線バーストに伴う重力波バーストの探索 の概要の訳:
分析のデータは、2005 Nov 4 〜 2007 Oct 1 のデータと Swift 衛星からのGRBのトリガーの殆どを使って集められた。探索は、3つの LIGO-Virgo サイトにある共鳴器の位置と角度のコヒーレント網分析を使い、このGRB'sのサンプルに関係する重力波のバースト信号の 何らの証拠も得なかった。シミュレートした短時間(<1s) の波形を使い、各GRBに関係する重力波の振幅の上限を設定した。又、固定 の重力波エネルギー放射を仮定した場合の、各GRBの距離に下限と中央値の制限(D〜12Mpc(E^iso_GW/0.01Mc^2)^1/2)をLIGO-Virgo網が 最上の感度をもつ 150Hz 近辺の放射において設定した。我々は、この結果の天体物理的な解釈と含意を提示し、将来のLIGO-Virgoの 動作の期間の探索に関する見通しを行った。

2010年6月、"LIGO 5th Virgo 1st 科学データの短時間γ線バーストに伴うインスパイラル重力波の探索" http://arxiv.org/abs/1006.3202
2011年9月、"LIGO S5 科学データを使う持続性の重力波への方向性限界" http://arxiv.org/abs/1109.1809
2011年10月、"全 S5 LIGOデータの中の全天周期重力波の探索" http://arxiv.org/abs/1110.0208 概要:
50-800Hzの周波数のなか、0〜-6x10^-9Hz/s の周波数時間微分を伴う周期的重力波の全天探索を報告する。そのような信号は 近傍の回転し軽微な非軸対称性をもつ、我々の銀河のなかの孤立中性子星によって生成される。 計算効率の10倍がもたらされた、最近の探索プログラムの改良の後、我々はLIGOの5番目のサイエンスランのデータを2年間サーチし、 現在までで最も感度の高い重力波歪についての全天上限を得た。150Hz近くの線形に偏光した歪振幅 h0 の最悪の上限は、1 x 10^-24 であり、一方、我々の周波数範囲の高い端では、全ての偏光と全天位置において、最悪上限は、3.8 x 10^-24 を達成した。これらの 結果は、以前に出版されたデータから2倍の改良を構成する。"緩いコヒーレント"技法を使った新しい検出パイプラインがより弱い外 れ値を見出すことを可能にし、信号が検出される空間の体積を10倍にしたが、何らの重力波の信号を示唆しなかった。パイプラインは 例えば、2重星の相手の小質量、長周期、についての孤立中性子星のモデルからの偏差、頑丈さがテストされたものである。

2011年11月、"LIGO S6とVirgo のS2,3のなかのコンパクト2重星合体の重力波探索" http://arxiv.org/abs/1111.7314 2009年7月7日〜2010年10月20日までのLIGO S6、Virgo S2,S3 の全体質量が2〜35太陽質量のコンパクト2重星(2重中性子星、2重ブラック ホール、中性子星とブラックホールで構成する2重星)の合体重力波の探索結果。〜40Mpc の中性子星の検出 No gravitational-wave signals were detected. などなど。

2011年12月、"LIGOとVirgo干渉計の600-1000Hzでの統計的背景重力波への上限" http://arxiv.org/abs/1112.5004
2012年1月、"LIGO 観測機からのGRB 051103 起原への実装" http://arxiv.org/abs/1201.4413
2012年1月、"LIGO とVirgo 検出器を使った連続重力波の探索" http://arxiv.org/abs/1201.5405
2012年2月、"LIGO-Virgo2度目の共同走査の重力波バーストの全天探索" http://arxiv.org/abs/1202.2788
2012年3月、"LIGO-6th,Virgo2nd3rd観測期間のLIGOとVergo重力波検出器の達成感度" http://arxiv.org/abs/1203.2674 低質量コンパクト双衝突(CBC)による重力波の探索、代表としてストレイン雑音パワースペクトル(PSD)を公開。
2012年5月、"LIGO-S6,VirgoS2,S3期間のγ線バーストに付随する重力波の探索" http://arxiv.org/abs/1205.2216
2009-2010年の衛星によって検出された154のGRBsに伴う重力波の探索結果の提示。モデルによる探索と汎用的な探索とを実行し、 どの個別のGRBについても、全体の統計密度からも、重力波の対応物への証拠を得なかった。メディアン限界を17Mpcのエネルギ 放出を楽観的な 150Hzで10^-2 Msun c^2 とした。短硬GRBについて、2つの中性子星と中性子ブラックホールとの源への天体物理 的に仮定する排除をそれぞれ16Mpcと28Mpcにした。これらの距離限界は、GRBに助けられない探索の場合より著しく大きいが、 GRBとの同時性を期待するのに十分なほどは大きくない。しかしながら、Advanced LIGOとVirgo の感度へのこれら排除を投影すれば、 我々はGRBs付随の重力波検出は全く可能であることを見出した。
2012年5月、"2007年からのLIGO, Virgo 及び ANTARESデータを使用する高エネルギーニュートリノに同期する重力波の初探索" http://arxiv.org/abs/1205.3018
2012年7月、"アインシュタイン@Homeによる LIGO S5 データ内の周期的重力波の全天探索" http://arxiv.org/abs/1207.7176
... 後処理工程は、8つの候補信号を特定したが、より深い追跡研究はそれらを除外した。...ストレイン振幅 h0 において0.5Hz幅の 152.5Hzの7.6x10^-25よりも大きい信号は90%の確かさで存在しない。この探索は以前のLIGO-S5のEinstein@Homeの3倍の感度である。
2012年9月、"LIGO-Virgo 2009-2010 データの双ブラックホールのインスパイラル、統合及びリングダウンからの重力波探索" http://arxiv.org/abs/1209.6533
全体質量25〜100太陽質量のそれの探索。2007/07/07ー2010/10/20期間に渡って20-20では300Mpcの最大感度。重力波の信号は検出されなかった。 天文学的なBBHの消滅事象の上限設定を報告し、スピン成分の軌道角運動量との配置における感度を評価した。19〜28太陽質量の90%信頼性のBBHの 消滅率の上限を3.3x10^-7対Mpc^-3yr^-1とした。
2013年4月、"アドバンストLIGOとアドバンストVirgo観測装置の重力波過渡現象特定の予測" http://arxiv.org/abs/1304.0670 次の10年の観測装置の角度特定には3個目のA-LIGOが必要。
2013年10月、"LIGO-Virgo重力波検出器によるコズミック(超)ストリングへの上限" http://arxiv.org/abs/1310.2384

数年後に我々は、重力波の存在の証拠といえるものを見出すかもしれない。そのときには、重力波の懐疑/否定論者は反省するだろう。 しかし、彼らの責任は小さい。彼らのいうことを、大多数が全く聞かなかったのだから。また我々人類は、否定的結果を得るかもしれない。 そのとき、我々はどう考えるだろうか、我々は反省をするだろうか。我々はこのことが歴史的に記録されていることを忘れてはならない。 さらに、これから数十年に渡って肯定でもなく否定でもなく、単に結果が出ないだけなら、我々はただ昔の思考法を記録する歴史書の1 ページを悲しく読むのであろう。しかし、第 3 の可能性は小さいはずである。これがないように "判別" のために、 LIGO などが国家 によって計画されたと理解するのだから。報告は、実験に肯定的結果だけを求めたのではないことを明確にしてきただろうか。しかし 当然測定されるべきものが検出されないため繰り返されたのが、マイケルソン実験、マイケルソン・モーリー実験、モーリー・ミラー 実験であった。我々が肯定的結果を欲する証拠には、検出されない場合に我々は、advanced LIGO、LISA などを予定している。否定する にはそれを説明する明確な理論の用意を必要とするだろう。現実にはまだ決定的な結果は出ていず、どちらの可能性も残る状態である。


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9. 重力波は存在するのか

重力波の存在を否定する Angelo Loinger の短文 physics/0309039 v1 2003 Sep "Gravitational Waves and Ether's Wind" によると、重力波は、1916 年のアインシュタインの論文によって定式化され、1917年に Levi Civita (Loinger による英文への翻訳 physics/9906004 ) は、それを否定する、重力波が数学的な幻影であり 存在し得ないという論文を出した。Einstein 自身も、1935 年の Rosen との論文で、重力波の物理的現実性に深刻な疑いを抱いて いることを明かしているという。

アインシュタインの深刻な疑いは、解決されずいまも続いている。それらの問いは、どのように解かれるのだろうか。

(1)重力波がもともと存在しないのではないか。

ミンコフスキー計量からの微小な変動は、線形の場となり電磁場のように空間を伝達するとしたアインシュタインの 場のエネルギー運動量の定義に疑いを抱く人は多かった。レビ・チビタ Levi Civita は、重力場のエネルギーに重力方程式 G_ik= -κT_ik の G_ik/κ自体にした。その場合、物質と電磁場のない真空(T_ik= 0) にはエネルギーが局在せず、 重力波は理論的に存在しないことになる。 しかし、アインシュタインの場のエネルギー t^i_k がテンソルでないからといって、 孤立系で保存されるならそれなりに、場のエネルギー運動量でありえるし、t^k_i が正しければ、重力波は存在することになる。

(以下、パウリの "相対論 $61重力場のエネルギー" から要約して引用する。)

重力場が存在する一般相対論では、特殊相対論と違って物質の保存則 ∂T^k_i/∂x^k = 0 と ∫ T^4_i dx^1dx^2dx^3 = const は満たさない。∂(T^k_i+t^k_i)/∂x^k = 0 と ∫ (T^4_i+t^4_i) dx^1dx^2dx^3 = const が満たされる。 しかし、t^i_k は、一般座標変換に対するテンソル密度でない。g_ik の 1 階微分までしか含まないので座標系の選択 (測地系) によって全成分を0にでき消え去ることができる。シュレディンンガーは、質量と電荷の作る重力場で t^k_i がいたるところ恒等的に 0 を示した。逆に Bauer は、ある場合に発散することを示した。t^k_i は対称でなくエネルギー密度-t_00 がつねに正とは限らない。 一般相対論以前の重力場の理論でもいつも困難の原因は重力場のエネルギー密度の符号であったが、この点、一般相対論でも同様である。

レビ・チビタ Levi Civita は、重力場のエネルギーは、t^i_k でなく、G_ik= -κT_ik という重力方程式(G_ik= R_ik - 1/2 g_ik R) の G_ik/κとした。なぜなら、 G_ik/κ+ T_ik = 0 から、∂(G_ik/κ+ T_ik)/∂x^k = 0。しかし、アインシュタインは、当然ながら、 閉じた物理系の全エネルギーがつねに 0 では、この系が特別な形態を保つことができないと反論した。 また、∫ T^4_i dx^1dx^2dx^3= const が相当に一般的な座標変換において値を変えないことを示した。 その結果、t^k_i 自体には物理的意味を付与するのは難しいが、その空間積分は物理的意味をもつことができる。 t^k_i が一意かというと、g_ik の 2 階以上を含む t_k_i 以外の式 w^k_i はローレンツ、クラインによって存在が示された。 w^k_i を除外する物理的根拠はいまのところない。w^k_i をつかうと t^k_i とは全エネルギーも違ってくる。

弱い重力場の近似で、∂(T^k_i+t^k_i)/∂x^k = 0 に従って、アインシュタインは重力波の放出と吸収を示した。 物質系の慣性能率(4 極子能率) D_ik= ∫μ0 x^i x^k dx^1dx^2 dx^3 の時間に対する 3 階微分によって規定される。 x^1 方向の重力波のエネルギーの流れの密度は、S_1 = k/(8πc^5r^2) [(D_22'''-D_33''')^2/4 + D_23'''^2] (k:ニュートンの万有引力定数) また、単位時間に放出される全エネルギーは、-dE/dt = k/(10c^5) [Σ_ik (D_ik''')^2 - 1/3 Σ_i (D_ii''')^2] 単位時間中吸収されるエネルギーは、dE/dt = 1/2 [dγ_23/dt D_23'' + 1/2 d(γ_22 - γ_33)/dt 1/2 (D_22'' - D_33'')]

(以上、要約引用。)


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10. 議論

(2) 重力波の速度は、何が規定するのか。

パウリの "相対論"の $60 "Einstein の近似解とその応用" によると 19 世紀おわり、P.Gerberは、重力の伝達速度は、それを光速 としたとき水星の近日点移動量を説明することを示した。重力波は、g_ik= δ_ik + γ_ik (x^4= ict) とするアインシュタインの 弱い重力の近似で、R_ik の定義式から g^ik= δ_ik - γ_ik, γ= Σ_a γ_aa, γ'_ik= γ_ik- 1/2 δ_ikγ、Σ_a dγ'_ia/da = 0 とすると、□γ'_ik= -2κ T_ik という波動方程式になる。これが遅延ポテンシャルの解をもち、光速伝搬する波を表す。進行方向 x^1 の平面波は、γ'^2= -γ'^3、進行方向に垂直な平面内 2 方向の物差しの短縮と伸展を伴う横波という。時間計量 g_00 の変動はない。 遠方からの波は 2 方向には膨大な拡がりをもつが、進行方向には周波数に対応した波長 (光速/周波数) をもつだろう。 その速度が光速度なのはミンコフスキー近似時空においてであり、光や時空内現象一般と同じく重力場による時間経過と物差しの影響 を受け、また非線型のため大振幅では衝撃波のような超光速の可能性もある。

(3) それは、物体を振動させるのだろうか。ニュートン力学では、真空から物体への力のやりとりはなかった。

質量間の万有引力において真空は現象に介入しない距離であり、重力ポテンシャルは、重力の場の解釈のために導入された仮説であった。 相対論の重力方程式は、計量の運動方程式である。左側は計量のなす式、右側は物質である。計量の力学、ダイナミックスである。 重力波は、計量、時空の振動である。それは、直接に物体を揺動せず、波の到達時刻の違いによって物体振動を引き起こすだけだろうか。 空間計量の振動は、そのように計測できるのだろうか。

(4) それは、物体の長さを変化させるのだろうか。

空間計量変化自体は、局所の物体の長さの変化には出ない。それはどこまで精度を高めても測定できないだろう。物体の長さ(鏡の間隔)が 変化するとき同時に物差し(光の波長)の長さの変化を伴うからである。計量を測るつもりはなく、測定するのは、重力の潮汐効果である といっても、それが力と振動を介して距離に出る測定は雑音との区別の難しさが伴うだろう。計量の基本的な意味から、計量の変化が物体 の短縮と伸長を伴い、そしてそれらを局所でマイケルソン・モーリー型の実験で検出するのは困難だろう。各国が重力波の検出に努力して いるその成果が期待できないと言明することは躊躇われるが、計量とは時空の座標変換であり、それにほとんどの意味は尽きている。 局所の拡大縮小の光での局所計測だからである。一方向の長さ測定でなく 2 方向の差だから可能かというと、光速が方向に依らなければ そうであるが、空間計量によって光速と光の波長は方向による長さの変化とちょうど同じだけ変化すると考えるべきである。

そのとき、空間計量の変化は、どのように測定に結び付くのだろう。例えば、重力が質点の周辺の空間計量の影響で起きるとは通常、説明しない。 重力は、時間計量(重力ポテンシャル) の勾配と説明される。これは、我々が空間等方的な座標系にいることに慣れているからであろう。 そして、時間的に変動する重力を我々があまり経験しないためであろう。電磁場の類推からは、重力には、空間計量の時間微分の分がある のかもしれないが、我々は、空間計量の変化を測定した経験がない。ポテンシャル(時間計量)の違う場所からの光は周波数の違いから測定 が容易であったが、空間計量だけが違う場所から来た、波長だけ違う光は、同じ場所に来れば局所の光速一定に伸縮され、もとあった波長 変化は、周波数の変化に連動しないため測定できないのである。(このことは、物差しと全ての間隔が膨張/縮小していく宇宙で、遠方の小さな/ 大きな原子から出た光は、近傍にくると光速が上がり/下がり近傍と同じになり、空間計量変化による青方/赤方偏移がないことを意味する。 距離の膨張/縮小する宇宙ではドップラー効果が赤方/青方偏移を生む。後退なしで赤方偏移を計量で行うには、ポテンシャル変動が必要である。)


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空間計量の変化は剛体までも押し潰すとして、通常の軟らかい物体は当然剛体以上に変形するだろうと考えても、質量近傍の半径方向の空間 計量の増大は、地球の周辺の物体は自重で縦に押し潰されているのでこの説明に合うが、自由軌道にある物体は、潮汐作用によって逆に縦に 変形を受けて引き伸ばされている。そのような説明は、比喩としても役に立たない。潮汐作用は、距離に比例した加速度を生み出す。LIGOの 4 km 腕の両端に幾らかの加速度を生むとして浮かした鏡だけが大きく伸縮するのだろうか。それを測定する光は、計量に伴って伸縮しても、 その比率は鏡間の距離の変動と多少でも違うのだろうか。軟らかく浮かした鏡は、剛体の光以上に伸縮すると考えるのが正しいと理解すべき だろうか。光は剛体の伸縮をするが、地球から浮かした鏡は、独自の振動共鳴特性によって振動するという違いがあるとはいえる。しかし、 剛体の伸縮はそのとき、光と物体で全く打ち消されると理解でき、鏡が空間に浮遊すればするほど、その特性は剛体(光の波長)に近付くのでは ないだろうか。

空間計量の変動の直接測定は、測定対象から測定器までの時空間的距離に見合った高い周波数の時間的な重力波の変動で検出すべきであろう。 例えば、離れた月がその形の縦横比を変形する変動でそれが地球から見て短縮伸長すれば、月と地球とが 1.27 光秒離れていて、2 秒程度の 周期より高速な変動なら検出できてよい。重要なことは、伸縮する月の長さの測定器を月の上におくべきではないことである。月の上の時間 計量の変動は離れた地点にメスバウワー測定でわかるが、空間計量の測定が現実的に出来るかどうかは疑問がある。

LIGO の10年間

LIGO の重力波検出の動きは、1989 年ごろから始まり、最初 16 人の計画は予算を得て、数百人の規模になった。研究者は、生活を保証 され、大きな仕事を与えられ、働きがいのある職場に 10 年間以上を過ごしたと思われる。それについては、2001年秋の Matters of Gravity 10 年記念報告 (arXiv:gr-qc/0109034 v2 13 Sep 2001) がある。Reter Saulsonn が、10年間の重力波検出について語り、Carlo Rovelli が 10 年間の一般重力の報告をしている。 LIGO の研究者の社会で、原理的な疑問は、話題にできただろうか。LIGO の研究成果論文(2003 年の双子の中性子星検出実験)は、 368人もの研究参加者全員連名の論文である。まさに集団体制である。その論文は、高級、深遠かつ複雑であり、容易に否定できない 内容を呈している。しかしそれは、明確に結論を述べている。 "重力波は、存在確認できなかった。個別の天体双子の中性子星の 重力波強度の上限を設定した。" 私には思える、そんなことのために、彼らは働いたのだろうかと。実際、問題はより根底的な所にある。 それは、参加した優秀な研究者の誰もが疑問を感じ、そしてそれを誰も発言できなかっただろうことである。個人の能力の偉大さと 集団のそれの対比である。この状況をみると、これからの 10 年間程度では我々は重力波の存在/非存在の結論を得ないかもしれない。 最近の Matters of Gravity 32 Fall 2008 100年前の論文

計量の局所観測可能性

計量の波は、それが力となって現れるのであれば、アルミ円筒のような共鳴系で増幅できるだろう。光の波長を物差しとして使って、物差し 以外の長さが変動するのであれば LIGO のようなマイケルソンモーリー型光干渉計によって測定可能だろう。しかし、それが物差しを含めた 局所の長さの変化であるなら、局所の物差しによっては原理的に計ることができないことは明らかである。それが計量ではなく、潮汐力を測 るにしても、我々はまだ空間計量の変動を明確に測定したことがないことを考えれば、測定の困難さは予想できる。

局所の計量が局所で全く観測不可能ということではない。地上で物体を投げれば、放物線を描くことによって地上が局所慣性系でないことが分かる。 しかしそれは重力の特性であって、時空特性、計量が見えるのではない。ポテンシャルは、測定できる物理量でなかった歴史をもつ。それは、理解 と計算を容易にする補助概念であり、その差その(空間)微分にしか意味がなく、それにどのような大きなオフセットの追加も可能であった。一般相 対論において、計量は一点においては原理的に測定できないが、その近傍を使って測定可能な物理量となった。しかし、その困難さは、むしろ古典 的に明らかであって、重力が容易に測定できるのに対して、その原始関数の測定が困難なことは、現在は時間経過として測定が容易となったポテン シャルがニュートン力学では仮想的存在で、その絶対値を議論する事自体、無意味だったことを考えれば十分であろう。アインシュタインは、普通 でないことを考えたのであり、それは決して容易な解決を生まなかった。計量の局所測定はその程度の困難さをもつのである。


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12. ニュートンポテンシャルは、重力波をもつか

ラプラス、ポアソン、ダランベール

静的な真空中の電磁場は、電場のポテンシャル場Φの空間的2階微分(d^2/dx^2)の和、勾配の発散(div grad Φ)= ∇・∇Φ=ΔΦ)、ラプラシアンΔΦ= ∇^2Φが 0 というラプラスの方程式が停留のない真空中の場を表わす。電場はポテンシャルの負の勾配であり(E= -grad Φ)、ガウスの法則によって 電場の発散が電荷密度である(div E= ρ)から、電荷の存在する場所を含めたポテンシャルは、ポアソン方程式 ΔΦ= -ρを満たす。Φの空間的凸に 電荷密度ρが伴う。

重力は同符号の質量が引力を持つから、ニュートンの重力ポテンシャルΦのポアソン方程式は、電磁気とは符号が逆で、Φと物質密度ρとの関係は、 Φの空間的凹にρが伴う、ΔΦ= Κρである。つまり、密度の高い場所に低ポテンシャルである(上空より地上でポテンシャルが低い)が、Φの空間 2 階微分と密度の関係であるから、Φに定数や一定の傾きを加算してもρを変えずに式を満たす任意性がΦにはある。0でない一様な密度ρなら、 Φは空間の2次関数になり、無限遠で発散する。

ラプラシアンが3次元の2階微分の和ならそれを4次元にして動的関係を示す"波動方程式" ダランベール方程式は、真空中では、□Φ= 0 であり、 振動や波の伝播を示す空間的2階微分と時間的2階微分との線形の関係である。 (d^2/dx^2 + d^2/dy^2 + d^2/dz^2 - d^2/dt^2)Φ= 0。線形とは、 重ね合わせの原理の成立を意味し、これによって強さの違う電磁波がどこまでも比例的に存在でき、波が別の波と独立で相互作用なく交差できる。 座標変換に依存する 1階微分は含まれない。物質を含めた電磁波の波動方程式 □Φ= -ρ は、波動と物質との関係である。電磁波は、ダランベール 方程式によって真空中を伝搬できるが、ρとの関係がなければ発生と消滅ができないだろう。波動の伝播を示す2階微分の和は、ミンコフスキー時空 (ds^2= dx^2+dy^2+dz^2-dt^2)に関係している。ds=0 とするのが光速であるから、一般の ds^2=g_ik dx^idx^k の時空では波動方程式も違って書か れるだろう。

波は、局所的には任意の周波数の振動であり、空間的には現象が形をなして速度をもって移動する伝播現象である。2階時間微分は局所の振動に よって理解される。振動の時間波形は、一般に正弦波を基に表現できる。時間で2階微分すれば、負の比例係数 -w^2 でもとの波形 x に比例する (x= sin wt、x'= w cos wt, x''= -w^2 sin wt = -w^2 x)、ことは、変位の2階微分(加速度∝力)が変位に負の係数をもって比例するばねに対応 する。単振動は円運動の投影である。微分方程式 x''= -w^2 x は、w を角周波数とする任意の大きさの正弦波、余弦波の重ね合わせの振動解をもつ。


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13. 重力は、ポアソン方程式を(負に)満たすが、ダランベール方程式を満たすか

電磁場では、電場も磁場もポテンシャルも波動方程式を成立して空間を伝搬する。ポテンシャルが波動方程式をもつのは、Maxwell 方程式 (rot B= dE/dt + i, div E= ρ, rot E= -dB/dt, div B= 0) の電場と磁場の関係をもつからであり、その結果である。ベクトルの公式 rot (rot A) = grad (div A) - Δ A を使って、A に E を入れ Maxwell 方程式を使って電場の波動方程式が導ける。□E = grad ρ + di/dt となり、真空中では □E= 0 になる。同様に磁場の波動方程式は、□B = -rot i。真空中では □B= 0。ベクトルポテンシャルの波動方程式は、

rot (rot A) = grad (div A) - ΔA
rot B = grad (div A) - ΔA
dE/dt + i = grad (div A) - ΔA

ここで、E= -grad Φ - dA/dt を使って、□A = grad (div A + dΦ/dt) - i 真空中では i= 0 であり、div A + dΦ/dt = 0 はローレンツ条件 という任意性の削減である。スカラーポテンシャルΦの波動方程式は、4次元形式から得られる。電磁場の2階の反対称テンソルを F_ik とすると、 Maxwell 方程式の第2組は、

∂F_ik/∂x_k = J_i
F_ik= ∂A_k/∂x_i - ∂A_i/∂x_k
∂ (∂A_k/∂x_i - ∂A_i/∂x_k) /∂x_k = J_i
∂^2A_k/∂x_i∂x_k - ∂^2A_i/∂x_k^2 = J_i
これにローレンツ条件 ∂A_i/∂x_i= 0 を使うと左辺第1項が消え、
∂^2A_i/∂x_k^2 = -J_i

3次元ベクトル表示で □A = -J と □Φ= -ρ を得る(*)。それに対し、重力ポテンシャルは、符号反転のポアソン方程式を満たすが、ダランベール 方程式をも満たし波動方程式が存在して空間伝播するとはすぐには言えない。それは、重力場に Maxwell 方程式の成立する仮定が確認から遠い からである。電磁気は Maxwell 方程式までに多くの歴史的確認を経たのに対し、重力にはなく、ニュートンの万有引力は、電磁気のなかで座標系 の変換に耐えないクーロンの法則に対応する。これがローレンツ力の式に換わるべきといっても、重力にはその程度の確認しかない。ファラデーの 電磁誘導に相当する重力現象を我々は知らず、アンペールの法則を持たず、まして Maxwell 法則を仮定する理由がない(**)。

しかしもし、重力のベクトルポテンシャルがあれば、その rot で重力磁場があるといえそうであり、そして、スカラーポテンシャルは速度をもった 系からみるとベクトルポテンシャルになるから、ニュートン重力に重力波が存在してもよいかのようである。しかし、並進によって作られたベクトル ポテンシャルの回転は恒等的に 0であり、並進によっては重力の磁場は生まれない。

(*)これよりは、E= -grad Φ - dA/dt の両辺の div をとり、 div E= -div gradΦ - d/dt divA ローレンツ条件 div A + dΦ/dt = 0 を使い ρ= -ΔΦ + d^2Φ/dt^2 ゆえに □Φ= -ρの方が容易である。

(**) みかけの力を示す測地線方程式には Maxwell 法則があったのである。 測地線の物理を参照。


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14. ニュートン重力の波動

ニュートン重力が電磁気に類似することは、歴史的には1911年のアインシュタインの一様な重力が加速系と原理的に区別できないという思考実験 によって時間経過が場所によることが見出されて否定されたと考えられる。重力ポテンシャルが直接に時間経過に関係することが発見されなければ、 ニュートン重力場は、電磁気のような場の理論によって扱う重力場理論が存在し得たと思う。それは、質量が電荷に対応し、重力場が電場に対応し、 重力ポテンシャルが電磁気のスカラーポテンシャルに対応し、ポアソン方程式は電磁気とは符号だけが異なるものであったろう。

重力の光速伝播

電磁場が光速で伝播し、特殊相対論によって物体の速度が光速未満に制限され、全ての相互作用は光速によって制限される。重力を特殊相対論的に 考えるのは概念矛盾にみえるが、ほぼ特殊の成立する平坦な時空のなかでは、全ての影響は光速以下の伝播をする。そうでなければ、遠隔作用とな って因果律を壊すタイムマシンができ相対論を害するから、重力も即時遠隔的でなく場を形成し、場は光速以内の伝播をしなければならない。その ような即時遠隔作用の概念を避けるための場とその伝播は、重力波動説を支持する最大の理由である。

重力の影響が即時でなく光速で伝播すると考えると、現実に合わないということは、すでにラプラスによって指摘されていた(*)。しかし、電磁気も 我々を欺く。直線運動をする電荷が任意の点に発生する電場は、電荷の距離に相当する過去の位置の方向ではなく、驚くべきことに、現在の電荷の 場所の方向を向いている。しかし、いまそれを知って電磁場の伝播が即時と考える人はいない。同様に重力が即時を装うからといって重力が即時作用 とは誰も思わないだろう。重力と電磁気との類似性は、むしろ重力の光速伝播に味方するだろう。

(*) ポアンカレ(Henri Poincaré)の"電子の力学について" H. Poincare, Rend. Circ. Mat. Palermo 21, 129 (1906) "On the dynamics of the electron", translated by Scott Walter. ("Rendiconti del Circolo Matematico di Palermo 21, 1906, 129176") , 拙訳


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ニュートン力学では、物体間の引力が運動エネルギーに転換できることから、重力場のエネルギーが負を示すと考えられるが、負のエネルギーは何か 数学的な幻影であって、真空中を伝播する物理的現実の実体として重力場は、正のエネルギーを持たなければならない。電荷間のエネルギーとして 正も負もあるようにみえる電磁場は、電場と磁場はつねに正のエネルギーをもつ。そして、その真空中を伝播する重力場の形態は、波を形成すると 考えられる。そのとき、磁場に相当する場が存在するかどうかが重要である。この場は、回転系のみかけの力として遠心力に対置するコリオリ力と して知られているが、我々はもし、慣性系にコリオリ場を仮定するなら、そのとき、Maxwell 方程式類似の式が成立し重力波が存在できるのである。

物事の順序として、重力ポテンシャルによる時間経過の違いは、電磁場的な重力理論で扱えない問題として後に残されるべきものであったのではないか。 このような重力場の電磁場的扱いは、アインシュタイン以前から多くの人のなかにアイデアとしてあって、恐らく確認手順を踏むことなく消えた議論 であろう。1911年の彼の論文の帰結であった重力による光の屈曲は、重力と電磁波の相互作用であるが、その関係の仕方は、重力ポテンシャルによる 時間経過、光速の場所依存という論理から出てきたものであり、重力場の電磁場的扱いではなかった。一般相対論では重力波は、微小な計量変化は 波動方程式をなし、空間をエネルギーをもって光速伝播する。そして物体と相互作用する。重力の電磁場的扱いはなく、重力方程式では、電磁場は 場ではなく物質側に含められる。電磁場の扱いは、物質が時空を決め、そのなかに電磁場が存在するという2重構造である。電磁波と時空の関係は 直接的でなく、電磁場は正当に扱われていないようである。外見的には類似する重力場と電磁場とが全く異なる構造で扱われる問題である。 アインシュタイン自身の後年の非対称場の相対論の目的も重力場と電磁場の一体化であったが、成功しなかったとされる。これにはパウリの相対論に 解説がある。

重力は、遠隔作用でなく近接する場としてあるなら、光速で伝播しなければならない、物質によって発生できるなら物質が受けとる必要もある、 これらは、原理的な要請としてあっただろう。重力波は、それなしには重力が即時遠隔力になることが避けられない。重力波が空間をエネルギーを もって伝播し、物質と相互作用しエネルギーをやりとりすべきである。そのため、どのような理論もこの原理的要請を満たし、その実証として重力波 の存在確認をする必要があったに違いない。物質によって計量が変化し、物質は計量に従って運動する。必要な、重力場のエネルギーの正は満たされて いないが。


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ニュートンポテンシャルに波動方程式 □Φ= ρ が成り立ちそうだから、スカラーの波動という可能性も残されている。そのような波は、空気中 の粗密波のような縦波かもしれない。そして、重力にも電磁気と同様なスカラーポテンシャルとベクトルポテンシャルの対があるとすると、それ らは波動方程式をもつだけで、横波として存在するだろう。そして、電場に相当する重力場以外に磁場に相当する重力の場も存在するだろう。

これは一般相対論の重力方程式自体が、重力のダランベール方程式の形をなしていて、ダランベール方程式で近似できると理解できるからである。 一般相対論の重力波は、進行方向に垂直な面内で、垂直な2方向での空間計量の伸縮が光速で伝わると習うが、計量の微小振動が、光速の系でその ような空間計量の変動が存在できるというだけであって、光速の系でも時間計量の変位が存在できる。光速のような特別な系でなくても、基本的に 時間計量も空間計量もその微小変動は、波動方程式を持つことが "場の古典論"の式(100.8) □h^k_i = 0 (h^k_i は g^k_i の微小変動)から読める。

そして、それを受ける光速でない系では普通に時間計量の変動を受けるかもしれない。時間計量は、質量の側の計量のニュートン近似で最も大きく、 ニュートンポテンシャルとして存在確認された唯一の計量成分であり、もし、それが遠方に伝わる波動なら、それは重力波として確認が最も容易な 成分だろう。時間計量の変位は、遠方からの光のスペクトルの赤方偏移や青方偏移として、電波の周波数の変位として検出できる。地上で発したレ ーザー光線を遠方で反射して戻った光と干渉させれば、往復の時間差のポテンシャルの違いによる周波数の変動として検出できる。これはLIGOの 空間計量の測定より、はるかに容易だろう。LIGOは、時間計量を検出しないだろう。空間計量は、最も疑わしい、一度も検出されたことのない成分 であり、結果は期待できない。しかし、時間計量の波は、局所の正確な時計をなくさせる意味で恐がってしまうのである。

重力波は検出された段階から、重力の工学応用が始まるだろう。現在、全くの夢物語である、発信/受信され、増幅され、反射され、集中され、像 を結び、変復調されて使われなければいけないものになるだろう。それによって何が可能になるか考え始めるだろう。それまでは重力波は、技術の 観点からは存在しない。実際、存在は、膨大な無駄な経費を伴う一部の人達の100年にも及ぶ研究のなかの決して書かれることのない夢のなかにある。


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15. 計量への理解に基づく重力波の測定

重力波は、空間メトリック(計量)の変動の波であり、計量の変化とは、端的にいえば、その場所の物差しの伸縮する現象として現れ、 その方向の光速の変化を伴う。計量の変動をそう捉えず、単なる空間の伸び縮みとするのは、相対論の無理解の現れである。もちろん、 この光速もその局所の観測者は一定として観測し、計量の変化も光速変化も空間の伸縮も、ともに局所で観測できない。計量変化は、 時空的遠方(又は時空的標準値であるミンコフスキー時空)を基準にして初めて検出できる。局所計量を局所的物差しによって測定する ことは基本的に困難である。計量の変化に伴う局所の重力現象は否定しない (つまり、我々が計量よりも容易に重力を感じるように、 計量変化は小さく重力現象は顕著である) が、計量自体は、そうやって局所で測定できるものではない。

計量の変化の局所測定ではなく、重力の潮汐効果による測定であるといった方が理解が容易であると説明されるが、そこで使われる説明は、 潮汐力と同様な力が重力波の進行方向に垂直な2方向に伸縮(潮汐力は一方向に伸長、それに垂直な平面内で短縮である)をもたらすという 説明であり、計量の理解を伴わない力学的解釈である。それゆえ、この結果は推して知るべしである。私は、これに関して悲観的である。

空間的計量とは、その場所においた物差しの長さを遠方時空から測定で、時間計量とはその場所においた時計の進行速度を遠方時空から計測する。 基準にするのは、その場所の計量の変動の影響を受けない、時空的に隔絶した他の位置の物差しと時計である。 なぜ、空間だけが伸縮すると考えるのか。それは、質量が重力を受けると考える力学的理解だからである。 空間計量の変動のもたらす空間変動は、何もない空間だけではなく物体も装置も全て伸縮し、局所の物差し(光速)も同時に変動させる変動である。 (局所で測るその局所の時計、物差し、光速は一定。) そして、計量変動に重力変動がつねに伴うわけではない。例えば、時間計量の空間一様な変動は、重力変動を伴わない。

特殊相対論のローレンツ短縮がエーテルの圧縮による力学的現象ではなく座標変換であったため、物体/空間において比例的であるのと同様に、 一般相対論の短縮と伸長は局所の座標変換であり、物体/空間によらない。ローレンツ短縮は、比例的だからどこまでも圧縮できる。量子力学が 決める原子サイズがあるから空間だけが短縮すると考え、核力で決まったハドロンのサイズがあるから宇宙の始めには核の海以前に遡れないと 考えるのは、そのサイズ自体が変化することを空間計量は表すのだから、誤解である。

時計の例をとると分かりやすい。時間計量の変動は、時間経過の変動になるが、局所の観測者にはそれが自覚できない。遠方の周波数現象を 測定して、初めて自分の近傍の時間経過が違うことを知るものである。それは時計の種類によらない。振子や、ばねのテンプ、水晶時計や 原子時計も、人間の時間感覚も、素材によらず、全て変動するからである。つまり、我々が何を時計に選ぶかによらない。これは、 物理現象ではない時間の現象だからである。空間変動も同じである。空間計量の変動は全ての空間間隔を比例的に変動させる。 物差しが硬かろうと巻尺であろうと、何を物差しに選ぶかに関わりなく、剛体である座標系まで変動させる。これは力学現象ではなく計量変動 だからである。計量の変動は全ての空間間隔を変動させ何もない空間だけが変動する力学現象ではない。それゆえ、時間経過の変動と同じく、 局所の観測者はこの変動を局所で自覚できない。この事実を無視した重力波の測定は、肯定的な結果がない理由が不明なまま、その原因を 天体現象の重力波発生強度の見積りに転嫁して、さらなる高精度の測定装置を求めるが、重力波の証明や反証ですらない可能性がある。


2016年2月11日、公式に重力波の存在に肯定的結果がLIGOの研究グループから発表された。これは、誤りでなければ、振動が遠方の2重BH星から 届いたのである。それについて、 測地線の物理を参照。

LIGO-Virgo GW170814 Skymap2017/9/28 APOD.