重力と慣性 (慣性とエネルギー等価則から)

片山泰男

戻る∧

目次

1. 慣性は放射と等比率の変化をする
2. 下方の静止物体と円運動物体
3. マッハの原理と質量欠損
4. 遠方からみた移動する物体の慣性は、下方静止は減少し、運動物体で一定
5. 時間経過と慣性の関係
6. 次元との関連


≪=BACK TOP∧ NEXT=≫

1. 慣性は放射と等比率の変化をする

アインシュタインは、1905 年の短い論文、 "物体の慣性はエネルギー内容に依存するか" によって、 慣性系において、物体がエネルギー E をもつ光の送受において E/c^2 だけの物体の慣性の増減があることを示した。これを使って、 物体の存在する位置による慣性の変化を考える。慣性系においてと同様に、重力場の存在する 2 箇所、天体のそば(下方)と遠方 (上方)とにおいても、放射と慣性の等価性があることを仮定する。その理由は、一様な重力が加速系と原理的に区別できないと すると、物体と光のやりとりが瞬間であるから、加速系での物体と光との変換において加速の影響はないと考えられるからである。 上方と下方の間において放射は、上行により赤方偏移し、下降によって青方偏移する。放射エネルギーは、上方 (E0)で小さく、 下方 (E1) で大きい。1 次近似では、 (φ= GM/r)

E1= E0 (1 + φ/c^2)..............................(1)

放射が慣性と相互に変換可能であるなら、(1)上方から放射を下に送出し、(2)下方で放射を物質が受け、(3)物質を上昇させる というサイクルの 1 巡 が可能である。もし、(3)の物体上昇において慣性が一定なら、(1)の送出量よりも(2)の受容量が大きい ため、1サイクルにエネルギーが増加し永久運動ができることになる。当然ながら、それはあり得ない。そのためには、(3)の物体 の下降上昇において、慣性が増減が放射のエネルギー増減比率と等しい比率でなければならない。 物体の上方慣性を M0 下方慣性を M1 とすると、下方の慣性 M1 は、上方の慣性 M0 より大きい (M1>M0)。

M1= M0 (1 + φ/c^2)..............................(2)


≪=BACK TOP∧ NEXT=≫

2. 下方静止物体と円運動物体

物体が下降するとき、その慣性は増加する。これは、ニュートン力学の位置エネルギーが物体の運動エネルギーに変ることに 対応している。下降によって獲得したエネルギーが慣性へ付加されている。それゆえ、もし下降による位置エネルギーが仕事等 としてこの物体から分離され、他の物体に移された場合、すなわち、物体が下方に静止しているなら、その物体の慣性は、変化 していないことをも意味する。

位置エネルギーが運動エネルギーに変わるのに、物体がその位置エネルギーの全てを獲得するとき、物体はまだ天体に束縛されて いない。物体は天体の周囲で無限遠で運動を持つとき双曲線運動、持たないとき放物線運動をする。エネルギーを多少でも放出す るとき、物体は天体に束縛された楕円運動を描く。楕円運動において、天体からの距離による位置エネルギーと運動エネルギーの 和が一定であり、無限遠の位置エネルギーより低下している。その中でも、天体との距離の変動しない円運動は、無限遠からの 位置エネルギーの丁度 1/2 の運動エネルギーを残し、獲得したエネルギーの 1/2 を慣性に残し、さらに、下方に静止する物体は、 無限遠からの位置エネルギーの差を、すでに全て他に放出したため、無限遠と等しい慣性をもつと考えられる。


≪=BACK TOP∧ NEXT=≫

3. マッハの原理と質量欠損

物体の慣性が天体に接近することによってエネルギーを獲得し、それによって得たエネルギーが慣性の一部を担うことは、物体の 慣性が先天的に与えられた絶対的なものではなく、宇宙の他の天体の質量の影響であるとする、マッハの原理を幾分かは実現して いるといってよいだろう。質量は、エネルギーと同じく、場の影響を受け、増減するものと考えることができるのである。そして、 質量の集合による慣性の増加は、原子核の結合における質量欠損とは逆の変化のように見える。式 (2) は天体の側での慣性の増加 であり減少でない。ところが質量欠損は、質量の結合による質量の減少が必要であることをみれば、両者の矛盾は明らかである。 しかし、これら両者の事項は矛盾しない。次のように、重力による質量欠損も考えることができる。

下方には重力ポテンシャルによる時間経過の緩慢さがあるから、上昇によって、慣性とエネルギーは減少する。下降によって獲得 したエネルギーを保持した物体の慣性と放射の周波数の増加は、上昇によって消え、もとの慣性と周波数に復元する。下降におい て獲得したエネルギーを他の物体又は放射に分離した下方の静止物体は、上昇によって復元した慣性から上昇に要する仕事を差し 引けば、慣性は欠損していたのである。


≪=BACK TOP∧ NEXT=≫

4. 遠方からみた移動する物体の慣性は、下方静止は減少し、運動物体で一定

赤方 (青方) 偏移として表れる上昇 (下降) による放射エネルギーの増減は、下方の時間経過の緩慢さによって説明された。物体 の集合によって物体が獲得する慣性は、当然ながら、その逆の移動、物体の離散によって失うのである。それゆえ、物体のエネル ギーの獲得を確認できるのは、下方の静止点においてである。このことは、放射エネルギーの増減だけでなく、慣性増加についても 同様と思われる。すなわち、エネルギーは、見る場所の時間経過に依存するのである。下方の時間経過は、上方と比較して遅い。 下方で評価する上方から来た慣性(エネルギー)は、大きく評価される。結局、質量エネルギーは、観測場所の時間経過に反比例する ということができる。

その考えかたによれば、物体を下降上昇させる状況を、遠方からみた慣性と重力の効果は、放射エネルギーと同様に、上昇と下降 に依らずに一定であろう。我々は、遠方の静止物体の慣性を評価する方法をまだ明確にもたないが、位置の変化による慣性の変化、 獲得したエネルギー増加は、下方においてだけ存在し、上方から見ると存在しないのであろう。下降によって獲得した運動物体の 慣性は、下方において測定できる慣性の増加を伴い、下方の静止物体の慣性より大きい部分をもつ。それゆえ、下方の静止物体の 慣性は、遠方からは欠損していなければならない。下方に静止する物体は、上方からみるとその分を減少している。


≪=BACK TOP∧ NEXT=≫

5. 時間計量 √-g_00 と慣性の関係

光の周波数は、時間経過√-g_00 に直接依存する。遠方(上方)の光は、その場所に来て青方偏移する。

w= w0 /√-g_00 ................................(3)

これは遠方の w0 の周波数を g_00 の場所でみた周波数である。その場所の w1 の周波数を遠方からみた周波数は、

w= w1 √-g_00 .................................(4)

である。つまり、遠方からみたエネルギー=周波数は、その場所の時間経過 √-g_00 に比例する。

エネルギーは慣性と等価であるのは次の動質量においてである。

m= m0√(1 - v^2/c^2) ..........................(5)

時間経過が時間計量に関係する方法を考えると、遠方からみたエネルギー=慣性は、

m= m0√-g_00(1 - v^2/c^2) ......................(6)

となる。


≪=BACK TOP∧ NEXT=≫

6. 次元との関連

距離は m、時間は sec、速度は m/sec、加速度は m/sec^2 という単位を使った。これらは、時空の計量に直接関係する。 独立の単位を与える次元は、独立であるべきであるが、質量とエネルギーは実に同じものであった。質量は、kg、エネルギーは、 kg m^2/sec^2 単位をもつが、両者は同じであった。m と sec は、同じ計量の成分であるから、別の単位を与える必要はない。 m と sec は、光速を 1 とする光速単位にすると、同じものになる。

時間経過とエネルギーの関係は、光の周波数がそのままエネルギーに比例するから、エネルギー= 1/sec かもしれない。 そして、それは質量= 1/sec を導くかもしれない。しかし、それらはまだ明確でない。

距離は、直接に空間計量 √g_ii だけに関係しているが、速度は、時間計量√-g_00 と空間計量との比 (時間計量/空間計量) √-g_00/g_ii に依存する。速度は、距離の時間微分であり、加速度は、さらにその時間微分であるから、(時間計量)^2/空間計量 に関係する量である。しかし、F= ma から、質量は、(時間計量)^2/空間計量 に依存すると考えるのは早計であり、力が計量に 依存するのであり、質量と加速度とは反比例ではない。質量が、(時間計量) に比例するのであれば、加速度が(時間計量)^2/空間計量 に依存するから、力は、(時間計量)^3/空間計量に依存するのであろう。

速度 v は、4元速度 u = γv を使えば、運動量とエネルギーとはまとめて、その時間成分がエネルギー、空間成分が運動量である 4 元運動量 p_k= m c u_k= m c g_ik u^i と表された。しかし、動質量 m を使えば、p_k= mv_k, E= mc^2 である。質量はエネルギー と別けるものでなく、同じものの単位だけ異なる表現でしかない。c^2 によって単位が変わる。ここで、E= mc^2 は静止質量と 静止エネルギーの関係でなく、どの速度においても成立する質量とエネルギーの関係を表す恒等式になる。