目次
幻想的宇宙論 ー膨張と特殊相対論の結合ー
1. 一様等方、ハッブルの法則が成立する宇宙
2. 累積距離は有限
3. 光速物体の存在
4. 無限の重力の変動
5. 物体は速度を変えない
6. 静止無限/有限宇宙の問題
7. ニュートン力学と宇宙
8. 特殊相対論と宇宙
そこではローレンツ短縮で、すべての物体が平たく奥行きがなくなり、宇宙の内側には薄い殻ができる(*)。 その距離に近付くのには無限の物体が折り重なり畳み込まれている。(これは特殊相対論的)それでも物体が無限に質量を増しているので、 ある物体がその境界に近付くとき、宇宙に激しい重力の衝撃を与える。(これも特殊相対論的)重力は全てのものに即時に(?)働くので、 いかにその衝撃は大きくとも、地球に乗っている人には全く感ずることはない。(これはニュートン力学)
これは、特殊相対論と膨張宇宙を結合した異常な幻想である。このような殻の宇宙は、有限でありながら無限の物体を詰め込むことができる。 これは空間が負の曲率をもったロバチェフスキー宇宙だろうか。後述するように、アインシュタインの定常宇宙も殼をもつ宇宙である。 宇宙論には証明がいらない。明確な観測からの反証があれば消えるだけである。宇宙論は、実験ができない。そこに求められるのは科学としての 整合性だけである。
(*) 周辺短縮は、随分と忘れられた効果である。私は、この若年の幻想の周辺短縮を、アイザックアシモフの"夜はなぜ黒い?" というオルバースのパラドックスの解説(アシモフの科学エッセイ(3)"時間と宇宙について"山高昭訳、ハヤカワ文庫)によることを再発見した。
"さて、宇宙の膨張を前提とすると、オルベルスの仮定はどんな影響をこうむるだろう? (中略) その "ハッブル半径" は、120億光年だと考える ことができる。だが、これでもオルベルスの矛盾(パラドックス)は一蹴されない。アインシュタインの理論の要求するところによれば、銀河系 が観測者に対して速く運動すればするほど、それらは運動の方向に沿ってますます短くなり、ますますわずかな空間しか占めないようになるから、 ますます多数の銀河系を収容する余地ができることになる。事実、半径 120 億光年という有限な宇宙の中にさえ、依然として無限の数の銀河系が 含まれていて、その(紙のように薄い)銀河系の大多数が "宇宙球" の最外層の数マイルに存在しているかもしれないのである。"じつは、これらが無限ではないことがすぐにわかる。次ページ以下を参照。
そこでは最初の爆発がどこから開始したか知ることができるだろうか。この宇宙のどの点もその点から開始したと判断するのではないだろうか。 どこから見ても物質はその点を中心に四散し、距離に比例した速度で逃げていくからであり、全ての点はもとは同じ場所にあったからである。 全ての点は、静止した宇宙の空間的中心点のようにみえる。その意味で、この宇宙は一様等方の宇宙原理をもっている。こうして、最初の爆発が どこで起きたかは特定できない、又は、全ての場所で起きたと思うのではないだろうか。それに対して、いつ起きたかは実に明確である。 速度は全て距離に比例するから、全ての距離は、速度で割ると一定の時間を生み出す。それがハッブル時間、"宇宙年齢"である。これは、 ハッブル定数(=速度/距離)の逆数である。しかし、宇宙の全てが見えるなら、中心から外れた点が銀河の分布から端であること(エッジ効果) を知ることができるかも知れない。さらに、光速より速く後退する点からの光は到達しないとして、見えないことにする。
もし、この宇宙に爆発的膨張以外に何もないとすると、現在存在する、天体の固有運動が説明できないことになるが、それは時間に比例する 天体間の相互作用によるとして、この単純なモデルではそれは扱わず、物質は決してぶつからないとすることができる。この物質以外の光は、 天体間を駆け巡る。物質からつねに光は出るとする。遠方の天体の速度は距離に比例して、実際に後退する。それによってドップラー効果が 発生する。ある遠方からの光の波長の比を 1+z として表すと、周波数=エネルギーは、(1+z)^1 だけ低下する。そして、1+zが√((1+v)/(1-v)) に比例する(vはc単位)。特殊相対論のドップラー効果は、相対速度vで決まる。特殊相対論以前には、光源の運動では 1+v に比例し(<2)、 観測者の運動では 1/(1-v) に比例するとしていた。相対論のドップラー効果は、実に折衷的な両者の幾何平均になっている。
この宇宙では、ニュートン力学で物質が直進するだけでなく、光も一定の速度で直進する。そして、特殊相対論によって光速は、物質の速度限界 としてある。現在の我々が受ける全ての影響は光速以下であるとすると、現在の時空点は、過去の光円錐をもつ。そして、宇宙の膨張は、考えら れる0から無限大の速度までのうち、光速以内の膨張円錐内だけが現実に見え、観測可能である。そして光速の膨張円錐が宇宙の半径と宇宙の果 てをつくる。つまりこの宇宙は、膨張による円錐と過去への光円錐というふたつの円錐構造をもち、その内部からできている。円錐は、3次元空 間を2次元に制限して時間を加えたイメージであり、空間3次元的には球状の光の爆発または拡散とその後の現在へ光の収斂である。この場合の我々 の目に来る光は、実際に遠方を逃げる物体から出たものであり、宇宙の最初の爆発点の光ではない。光エーテル論の膨張宇宙では最初の光が戻って 来るのとは違っている。
この膨張円錐内部が現実の宇宙なら、宇宙は有限であり、宇宙の果てに近い遠方銀河は光速に近い速度をもって後退し、物体は無限に薄くローレンツ 短縮を受けている。周辺短縮はどの点から見ても同じく存在するだろう。宇宙の周辺からみると我々のいるこの場所も周辺短縮を受けて平坦と 考えられる。そして、後述する、ポアンカレ宇宙、アインシュタイン宇宙、ド・ジッター宇宙は、周辺短縮した有限サイズの宇宙である。 ド・ジッター宇宙は、4 次元的な有限宇宙である。さて、フリードマンの膨張宇宙は、周辺短縮があるのだろうか。
An Interpretation of Milne Cosmology
Introducing the Dirac-Milne universe
Do we live in Dirac-Milne unverse?
Milne-Eddington Solutions for Relativistic Plane-Parallel Flows
速度が宇宙の果てまで直線的に増加する膨張宇宙とする。(光で見る過去の光円錐ではなく、現在の空間断面であり、距離 r と速度 v とは、 どこまでも比例する。) v= x= r/R (v:光速単位の速度 R:宇宙の半径、r:中心からの距離) の膨張宇宙で物体の厚みがローレンツ短縮 1/γ= √(1-x^2) を受ける。中心から R までの累積距離は、γを積分して、
∫_0^1 γdx= ∫_0^1 dx/√(1-x^2) = [Arc sin(x)]_0^1 = π/2。
積分は発散しない。この膨張宇宙の特殊相対論的ローレンツ短縮による重畳は、奥行きが発散しない。1 パーセクの一里塚と途中の一里塚 の数の比は、約 1.57 倍である。そのため、光のオルバースのパラドックスは発生しない。
なお、過去の光円錐でも発散しない。速度と距離の関係は v= x/(1-x) となるから、1-v^2= 1 - x^2/(1-x)^2= (1-2x)/(1-x)^2、 ∫_0^1/2 γdx= ∫_0^1 dx/√(1-v^2) = ∫_0^1/2 (1-x)/√(1-2x) dx = 1/4 ∫_0^1 (1+u)/√u du= 1/4 ∫_0^1 {u^(1/2)+u^(-1/2)} du = 1/4 [2/3 u^3/2 + 2 u^1/2]_0^1 = 2/3
∫_0^1 dx/√(1-x^2)= ∫dx/y は、直径に対する半円周。この種の積分で∫_0^1 dx/(1-x) (=∫_0^1 dx/x)は、残量に比例した消費だから発散。 ∫_0^1 dx/(1-x^2) は、さらに発散する。 ポアンカレ宇宙参照。 またブラックホール ds^2= (1-A/r) dt^2 - dr^2/(1-A/r) - r^2dΦ^2 の地平面 A の外側 R (R>A) から A までの累積距離 ∫_A^R dr/√(1-A/r) は、 ∫_A^R dr/√(1-A/r) = A ∫_0^(1-A/R) dx/(√x (1-x)^2) = A [1/2(1-x) + 1/2 ln(x/(1-x))]_0^(1-A/R) から、 定積分範囲がAを含むなら、そこで不定積分が-∞であるから必ず発散する。
この積分が収束するためには、膨張の存在による有限宇宙が必要条件であるが、十分条件ではない。ローレンツ短縮の逆数のγの式だけに依る のである。有限宇宙でも積分が収束する保証はなく、この式が異なるだけで無限にも有限にもなり得る。例えば、ポアンカレの有限宇宙は、 無限の内容を持ち得る。直線的膨張でなく減速膨張では、有限に留まるかどうか確かでない。この積分は、すでに有限であるが、ドップラー 効果による光のエネルギー低下はまだ考慮されていない。
つまり、宇宙のしくみを特殊相対論のエネルギー原理より上に置く必要を感じるのである。宇宙しくみは、特殊相対論の無限大のエネルギーの 局所発生の困難に優先すると仮定しなければならない。そこに微小な物体が存在し得るとするだけでその仮定が必要になる。微小な物体も、 そこに置くだけで質量が無限大になる。このようなエネルギー無限大に平気でいることは、宇宙論以外では決してしないことと思う。特殊相対論 から質量はエネルギーと等価でかつ無限大であるから、それを実現することは有限宇宙の質量エネルギーの全てを使ってもできない。それが膨張 だけによって起きるのである。これは、膨張の最初に無限大のエネルギーを使うから、これ自体を不可能ということもできない。
ある距離まで光速の1/2、その2倍の距離では光速、この単純なことがこのような内容を孕むから、膨張宇宙は何でもありの困りもの、という想い になる。宇宙にそれを許すのは宇宙が無限の大きさも質量も許すからである。これがニュートン力学と特殊相対論の組合せに特有のもので、 フリードマン宇宙には同様の困難がないと理解する方法はないと思われる。ただ、場の理論では特異点の存在の問題になるだけであり、困難は 薄まって感じられるだけである。
ここで注意すべきであるのは、この宇宙には、光のオルバースのパラドックスはないが、光速物体の質量は無限大になるから重力のオルバース のパラドックスが光とは別の原因で発生すると考えられることである。
いくつか、困難を前にして、この宇宙の存在し得ない理由を考えてみよう。現実に振動はないから、これは否定しないといけないと考えることは できるだろうか。ニュートンの引力のように重力は一瞬では来ないとしても、最初の爆発だけを置くのでなく、もし、全ての空間に連続した膨張 (定常膨張) があるとしなくても、光と同様にこれはすでにここに来ていなければならない。光も初期宇宙の様子を伝える膨張の光円錐からの光 は常にくる。これは、現実に物体が飛び去って、それから光が発したのである。しかし、その宇宙の果ては、特殊相対論で時間経過が少ないため に、宇宙年齢の 1/2の時刻であるのに、その物質は初期宇宙の時刻をもっている。光の到達時間からの宇宙年齢は、我々の場所の物質の経過した 宇宙年齢の1/2であり、宇宙の実測の空間半径は、宇宙年齢の 1/2 の光速倍であるという特徴がある(*)。また、光のエーテル論と比べて背景輻射の 強さは弱いのではないかと予想される。光エーテル論では、光が弯曲して還ってくるという特徴があり、初期の宇宙の爆発がそのまま全ての場所 に戻るとき、光速より大の初速の物質の内側向けの光から発した光が戻ることから、凸レンズ効果が高いように思われるのである。
宇宙の果ての重力の変動は、地球に乗った我々には知ることができないだろう。なぜなら重力自体は、地球も我々も同様に等しく受ける加速だから である。重力を空間微分をした潮汐作用だけが、自由運動をする物体が検知できる重力効果である。時間的に変動しない近傍天体からの潮汐効果は、 距離の 3 乗に反比例する。そのため、宇宙の果てのような遠方天体からの潮汐は、ポテンシャル、重力、潮汐と 2 段階に減衰したものだろう。 どの程度の減衰かといえば、最も近い恒星との距離の比で1段階に 40億倍である。太陽の距離との比ではその20万倍、1段階に800兆倍程度である。 それらは近傍の潮汐とは全く違うと考えなければならない。重力の時間的な変動は受ける場所の違いで検知できることもあるだろう。もしそれが 平面波なら、時間差による変動の振動があり得るかもしれない。しかし、その大きさ自身小さいので時間的変動の検知は難しいことがわかる。
あるとき、0 から無限大までの速度をもって、ある場所から宇宙が爆発的に膨張をしたとする。それ以降は、全ての物質は速度を変えずに、 等速直線運動、慣性的な運動をしている。そういう仮定のもとの直線的膨張は、重力による減速も無視している。光速の速度をもった物質は、 ずっとそれを保ち続ける。だからその場合、物体が宇宙の半径を出てゆくということもない。この場合、宇宙の半径は、光速をもった物体の 位置であり、宇宙の半径も、光速で拡がり続けるということになる。物質とそれとは、同じ光の速度で遠ざかっている。光速の壁を超えて向 こう側に行くということも、あり得ないのである。
光速の壁を物質が超えて外へ出て行くというのは、光速が一定でなく時間的に減少している宇宙か、物質が加速をうけている宇宙である。 逆に減速膨張の宇宙では、光速の壁の外側から物質は内側に姿を表すことになる。ニュートン力学の直線膨張宇宙では、特殊相対論の光速の壁、 宇宙の果ては、同じ物質が常に占めているので、変動はない。よろしい。これでひとつ明確にこの幻想を打ち破ることができた。そこを物体が 横切らない限り、無限の重力の変動の問題は発生しない。その場合でもそれは、その場所の任意の運動による加減速によってすぐに発生しえる。
しかし、ニュートン力学の宇宙の広さが無限であれば、重力も無限だから、我々は互いに無限の力を与えあってしまう。それがまた別の面 で不合理になる。ニュートン力学の無限宇宙は、無限量の重力の相互作用を導き、ここの一点には、無限の重力があらゆる方向から重ね合 わされる。力は方向と大きさをもったベクトルだから全方位重ねると消え、ランダムな擾乱だけが残る。もちろんそれも、無限に累積する という問題をもつが、ポテンシャルはスカラーであり、そのまま加算されてマイナスの無限大になる。しかも、ポテンシャルは距離の 1乗 に反比例する。一様な密度ρの宇宙では、ポテンシャルは、距離に2乗に反比例である重力や光の量と比べて、容易に無限大に発散する。 これは、無限の広さの宇宙が任意の点の物理量を無限大にして、局所の物理法則を不可能にする。
無限の物質をもつ宇宙は、一瞬で(重力の光速伝達なら違うが)で成立を危うくする。質量は、重力という物理量になって手近の物体に作用 するから、宇宙の質量が無限であれば、それが有限の距離ならもちろん、無限の彼方にあっても一様に分布すれば、物体に作用する重力は、 オルバース無限大になる。そこでと、ニュートン宇宙は無限でないと仮定すると、その問題は出ないが、有限の物質は有限時間内に一点に 収縮するという問題をもつ。
有限の星の集団は、重力のために安定できない。最初にほぼ静止していても、それはどこかに中心を作って収縮し始め崩壊する運命をもつ。 全体もそうだが、局所もその外側によらず成立する。ニュートン力学での重力発生は、ある球形のなかに球対称に分布する全質量は、中心の 重心に質量が集中して存在するのと同じ働きをする。ひとつの星にとって、他の全ての星との万有引力の相互作用は、自分以外の宇宙全体 の重心との重力相互作用による運動をする。星々の運動エネルギーは、実際の衝突しさえしなければ、位置エネルギーの分を引き受け、星 の拡がり全体が収縮によって運動エネルギーを増す。そのとき、全体の形態を崩すほどの変形は起きないだろうが、その歴史のなかで、全 体の星の集団のなかの小さい質量の星ほど、先に弾き飛ばされ集団から蒸発する。衝突や、ニアミスなどの運動量の交換において、小質量 の物体ほど運動エネルギーを多く与えられ脱出できるからである。
そのような運動において、全てがランダムな運動を保って存在することはできない。しかし、それは永遠を保証しないということであり、 この一瞬の世界が成立しないということではない。星の集団は、大きければ大きいほど収縮に時間がかかり、その寿命も長いだろうという ことになる。無限の大きさのとき、どうなるかを考えなければである。
特殊相対論は宇宙では成立しない。きみの国の法律はここでは通用しない、ここにはここの法律がある。そういうことがないように、法則が宇宙 一般に成立するように宇宙原理を使う。宇宙の果てもここと平均的には何も区別できない。宇宙に特別な場所はない、そういう一様性の宇宙原理 がある。そして、ある空間的な方向だけが特別ということもない等方性である。一様等方の宇宙原理である。宇宙の果てにここと同じ法則を要求 する。法則は、時間と空間に依存しない。時空依存の法則は、法則の名に値いしないとする。一様等方時間不変が法則を法則とするために誰もが 認める原理であろう。それゆえ、宇宙の果てには特殊相対論は通用しないという言い方は許されない。そこでも、ここと同じ特殊相対論が成立す るだろう。局所的には。
だから、宇宙のような重力の大きく影響するサイズでは、特殊相対論は、無意味になったと否定されるべきだろうか。それより大きな領域の法 則に従うと考える。平坦な時空では特殊の成立する大きな領域が存在してもよいとするし、いままでの特殊で考えた成果は、ほとんどそのまま 移行できると考えるのである。
特殊相対論は、局所にしか適用しない。だから宇宙論には関係ない? そうだろうか。それだからと我々は速度場のエーテルを認知してしまうのだろうか。 または、膨張宇宙論では、計量が変動する式を目の前にしていながら、計量が変動しないような座標系を物理的現実とみてしまうのか。また、 特殊相対論の規則を無視して光速に近い速度をもつ物体、光速物体、又は光速以上の物体の存在が出てくると考えることは正しいのだろうか(*)(**)。
彼等はこう言うだろう、宇宙の果て、そんなものは問題ではないと。 それは、彼等がそれより深刻な問題に満たされているだけのことかもしれない。 宇宙の果てがどう見えるかなど関係ない、座標依存なものを気にすることはない、という反論さえあった。 計量が系によって違うから重要でないという、そうだろうか。宇宙の果ては、どこからもみても存在し場所に依らないだろう。 それがどうあるかは、むしろ自明である。ここと同じ物理法則が成り立つ、というのは一様等方の宇宙原理である。 どう見えるか、どうここに影響するか、という問題しか宇宙論には存在しないと、私には全く逆の感想を与えるのである。
(*)遠方銀河の Ia 型の超新星の光度変化曲線の時間遅れが (1+z) に比例するという観測は、赤方偏移が宇宙膨張によるという説に有利とする 結果であるが、これには特殊相対論を使っている。
(**) 宇宙にニュートン力学を使うだけで批判されるが、それしかないとき、アインシュタインが一般相対論を提案し定常宇宙論を出す前に人々 が何をどう考えたかは、重要であると思う。現在は、ニュートン力学だけでなく、特殊相対論も、宇宙論から排斥されているかにみえる。問題は 人々の思い込みの強さである。よく考えると特殊相対論は、もともと膨張宇宙論とあまり相性がよくない。全てのものに始めが存在すると、慣性 系の対等の基本的な条件である互いに速度をもった系同士に相対的な時間経過の差は存在しえず、絶対的な時間経過の差しか存在し得ないように みえるからである。そして、さらに背景輻射は、絶対静止座標系が存在することを示しているかのようである。膨張宇宙では、たとえ物理法則が 等しく同じであっても、絶対静止系が他の系と少なくとも区別できる系である。それらは、宇宙が特殊相対論を否定すると理解し古典的エーテル 論に人々を引き戻す原因になる。少なくとも我々は、エーテル理論に戻る必要はない。特殊相対論のほうがどれだけ良いかを考えるべきである。