大河小説

サーキットのオリオン

< 邂逅遍 >


(ふ)

わたくしふじさわの前世はアルテちゃんであり、
毎日さまざまな制服を着こなす美人女子高生でした。

しかし、そのときオリオンさんはその高校の教頭であり、
同時にキャベツ畑の農家でした。

沈む太陽。
長い影。

オリオンさんは額の汗をぬぐいながら、
新しい季節の訪れに笑顔を浮かべていたものですが、


(さ)

その時、不穏な人影が ほんの数メートル先まで近づいていたことを
彼は、気づいていなかった..。

そう、それが全ての災いの始まりだったのです。


(ふ)

オリオンさんこと、折音 正宗(60歳 私立赤山高校教頭は仮の姿。
実は キャベツ農園園長)の背後に迫っていた人影は、
誰あろうピアッツァくんだっ たのです。

ピアッツァくんは折音さんにこう言いました。

「さーきっとで勝負っす」
ピアッツァくんのマシンはもちろん、いすずのピアッツァ。
ちょっとマヨネーズっぽい ところが難と言えば難だ。

そして、マシンに乗りこむと、呟くようにこう続けたのです。

「直由貴さん、キャラクター勝手に使ってすいません。  
アルテちゃん、とても面白かったです。
NS400Rはいいですね。  

僕は高校時代 RZ250Rに乗ってて、
毎週大垂水に通う勤勉な高校生でした。(笑)  

そして、いやおくん、気になってたんだけど、もしかしてアトピーでは?」  

折音さんは、訳も分からず、
「とにかく勝負だなや!受けてたつっぺ!」と、
叫んだのです。  


(さ)

「とにかく勝負だなや! 受けてたつっぺ!」
そう叫んで、愛車に乗り込む折音。

彼の走りは、私立赤山高校番長の「いやお」
(人呼んで「世紀末の走り屋」)までもが
一目置くほどの腕前だ。

しかし、そんな折音も、その背後にひかえる
4台の不気味なエンジン音が、
彼の運命を変えるために 悪の帝王ユーボンが仕組んだ、
カルテットだとは知るよしもなかった。

ましてや、そのサーキットの優勝賞品に
オリオンの最愛の女性アルテちゃん(ふじさわ)が
控えていようなどとは..。



(ふ)

ましてや、そのサーキットの優勝賞品に
オリオンの最愛の女性アルテちゃん(ふじさわ)が
控えていようなどとは..。

否応なしにスタートの号砲が鳴った。
深くペダルを踏みこむ折音さん。

自転車(リヤカー付き、キャベツ満載)で
果たして乗用車に勝てるだろうか……? 

しかし、今は迷っている暇はない。

……スタートから20時間が過ぎた。
恐怖のユーボンカルテットはとっくに勝手に谷底に沈んだが、
ピアッツァく んのピアッツァはまだ50メートルほど前方だ。
折音さんは最後の力を振り絞り、ペダルを回転させ続けた。

「アルテちゃん(ふじさわ)のためにも、ここは負けられないっぺー!」

折音さんの声が夜空にこだまする。
そのころ、ピアッツァくんは車中にて考えていた。

「ぼくもTVチャンピオン出たいッス! 参加者で!」



(い)

ゴールイン!!
ラスト100米の驚異的な追い上げは
折音さん秘蔵のニトロエンジン(自転車用)が可能にした。

折音さんとピアツァ君、二人の決着は写真判定にもつれこむ。

ギャラリーがアルテちゃん(ふじさわ)が悪の帝王ユーボンが、
そして戦いを終えた二人の勇者が固唾を飲んで見守るなか
その裁定は下された。

「一着、折音キャベツ農園!」

一斉に巻きあがる喚声。
勝者となった折音さんは、しかし、ひとり愛車に語りかけるのだった。

「よくやってくれたっぺ、相棒。ムリさせちまって悪かっただなや。」
そんな折音さんのもとに駈け寄る者があった。
今回の優勝商品アルテちゃん(ふじさわ)だった。

「アルテちゃん(ふじさわ)……。」
「折音さん、おめでとう。これであたしはあなたのものよ。」
だが、運命はこの二人の愛にさらなる過酷な試練を与えたのであった。

「警察だ! おまえたち全員、人身売買の現行犯で逮捕する!」
それは既にこの場を離れた悪の帝王が残した狡猾な罠だった。

なす術もなく連行されていく折音さん…。
ピアツァ君もギャラリー達も同じ運命をたどっていく。
ただ一人アルテちゃん(ふじさわ)のみが被害者として保護された。

「お 折音さぁ〜ん!!」

「サーキットのオリオン」邂逅遍 <完>



「サーキットのオリオン」復讐遍へ メニューに戻る