500ml缶・3
◆振り返らない
(うぉー!早くお釣り出ろー!)
もう壊れるぐらい、釣銭レバーをひねりましたね、ええ。 しかし、そんな事をしても、お釣りが早く出るなんてことは無く…。カチャリコ、と硬貨が音を立てるたびに、僕の寿命が1年ずつ減っていく気さえしました。
(もう、これ以上のタイムロスは許されない!)
そう思った僕は、自販機の釣りの表示が0になった瞬間に、すかさず釣銭を取り出しに掛かりました。僕って手が結構大きいので一回に10枚は回収できるから2往復でOKだ、とか、そんなくだらない計算までしてましたよ。
と・こ・ろ・が!
あの狭い受け口の中に18枚もの硬貨がひしめきあっていたせいで、 受け口の透明なプラスチックのフタがちょっとしか開かないんですわ!おかげでどんなに頑張っても、1度に1〜2枚しか取れない!その細い隙間から、泣きそうになりながら必死でコインを掻き出しましたよ。
ああ、こんな予想外の落とし穴にハマってしまうとは!遂に彼らの腕立て回数は、五百回に達してしまったらしく、後ろから凄いオーラを感じるんですわ。 もう、僕、怖くて後ろを振り向けません…。
結局、2往復で済む所を10往復して釣銭を回収した僕は、もう、一刻も早くこの場から逃げ出したかったわけですよ。でも、後ろ振り向けませんからね。 怪しげなカニ歩きで自販機の前から横にズレて、そのまま後ろを見ないように右向け右をしました。
ホントは今すぐにでも走って逃げ出したかったんですけど。でも、ほら、山中でクマと遭遇したときって、走ると逆に追いかけられるとかいうじゃないですか。こういうときは、あくまで歩きで逃げるべきなんですよ、多分。
続く
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