超短編小説2

◆葡萄シェイクと君

10月。
友達に「新製品の葡萄シェイクを食べに行こう!」と誘われ、僕は渋々学校近くのマックに向かった。
そこのマックには、見た目はそれほどでもないけれど、ハキハキした受け答えと明るい笑顔で"一割増し"といった感じの店員さんがいた。
僕はひそかに彼女に会うのを楽しみにしていたのだが、夏休み明けから、突然彼女の姿が見当たらなくなってしまった。
最初の内は、「今日は休みなのかな?」などと思っていたが、この時期まで顔を見ないということはいくらなんでもないだろう。
やめてしまったのだろうか?
…僕は秋の空を苦々しく見つめながらそう思った。

落ち込んでいても仕方ないので、僕は新製品の葡萄シェイクに気持ちを切り替えて、レジの列の最後尾に並んだ。
そのときだった!抜けるように明るい声が僕の耳に聞こえた。
「前の方に詰めてお並びくださーい!」
そう、この声は"一割増し"の彼女の声だ。店内を見渡した僕の目に、いつもと変わらない笑顔を振り撒く彼女の姿が映った。
   やっぱり、辞めてなかったんだ!

また彼女に会えるなんてツイてるぞ!今ならなにをやっても、うまく行くに違いない!今日は今年一番のラッキーデーだ!
僕の心を不思議な高揚感が支配していたときに、やっと僕の前のレジが空いた。
僕は顔が緩むのを抑えきれないまま、注文を頼んだ。

「葡萄シェイク下さい」
「売り切れです」
   ごでりばァ!

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