-一億総サザエさん化計画-


一億総サザエさん化計画 -第一回-

サザエさんについては書きたいことが山ほどあるが、脈絡無く書くとひどい事になるので、今日はサザエさんのオープニングについて書く。

サザエさんのアニメは、曜日別に二種類あるが、今回は日曜日版のオープニングの方を注目しよう。

 

*   *   *

 

サザエさんの日曜オープニング、解説と対訳
「サザエでございまーす」(前奏) 「ずんちゃ、ずずんちゃ、・・・」

朗らかな第一声。やけに丁寧な口調。毎週毎週自己紹介しなくても良いのでは……。

(1番)「お魚くわえたドラ猫追っかけて、裸足でかけてく…」

いきなりの注目ポイント!
サザエさんは動物虐待の向きがあるのか。
はたまた、ドラ猫の食事を奪い取るほど家計が逼迫しているのか?
(注:何処にも「ドラ猫がくわえている魚がサザエさんから取ったものだ」とは書かれていない。ドラ猫はただお魚をくわえていただけで追いかけられ、えらい迷惑である)

「…陽気なサザエさん」

なにー!どうしてそうなる!? 罪の無いドラ猫を、靴をはく心の余裕さえも忘れて追いかけんとする人妻の、何処らへんが「陽気」なのか?

「みんなが笑ってるー」

当然だろう。

「お日様も笑ってるー」

哲学で言うところの形而上の表現か?
もはや、単なる擬人法を超えたものであることは明白である。
お日様も笑う、というと聞こえが良いが、要するに”お天道様は見逃しちゃくれねえぜっ…”と言いたいのだろう。

「るーるるるーるー、今日もいい天気」

このフレーズで注目すべきは”今日も良い天気”の”今日も”と言うところだろう。
(この点については、後ほど解説する)

(間奏)「たらららら、ちゃらちゃらちゃっちゃ、たらららら、・・・」

この辺りで、画面は名所めぐりから東芝ビルがある市街地へ…。
と思うだろ?
最近は東芝の一社独占提供じゃなくなったので、東芝ビルは映らないのだ!
そして市街地を黄色い気球が飛んでいく。
しかも、ただの気球じゃない。
…サザエさんの頭の形をした気球だ…!
オレにも”大空を飛びたい”という願望が無いわけではないが、あのこっ恥ずかしい気球に乗るのだけは遠慮させてもらう。
しかもあの気球は、下にバーナーの口が開いてない(ただの風船のように閉じている)ので、内部の気体の加熱が出来ない。
つまり、何時落ちるかまったく分からない、ロシアンルーレットのような欠陥気球なのだ!

(2番)「買い物しようと街まで出かけたが」

徒歩で街まで来ている、と次に分かる。

「財布を忘れて…」

財布が無ければ街まで徒歩だろ

「…愉快なサザエさん」

勘弁してください。

「みんなが笑ってるー」

笑うな、みんな! サザエが余計図に乗る!

「子犬も笑ってるー」

子犬にまで笑われるフグタサザエ(人妻、1児の母)。

「るーるるるーるー、今日も良い天気」

1番でもそう歌ってるように、”今日も”良い天気だそうだ。
サザエさんでこの歌が流れる毎週日曜日。
サザエさんが住んでいる地域は、日曜はいつでも晴れなんだろうか?
”♪雨がしとしと日曜日”という情景は、磯野家では受け容れられない。

(後奏)「ちゃちゃちゃちゃー」

画面中央より少し上の辺りに、横一列に並んだ磯野家の面々。

サザエは妙にいかり肩で、しかしノリノリでその場足踏み。
その横に後ろ手に組んだ波平が何か悪巧みをしてそうな面構えで、ふねが色キ○ガイが如く「しな」を作って、やはりその場足踏み。
その背後では何か花弁状のものが、高速で回転しながら広がっては消える。

「ちゃちゃちゃちゃー」

…!?
目の錯覚だろうか?
磯野家の人々が瞬間移動して近づいてきたような?
いや! 錯覚じゃない! (理由:左右の二人が見切れてるから)
さらになんとタマがバイオ栽培されたであろう、巨大果実を真っ二つにかち割って脱出に成功(サザエに閉じ込められていた?)
腰をくねらせて歓喜の踊りをおどる猫の図。
生きてるうちにこんなものが拝めるとは…(しかも毎週

「ちゃらちゃちゃちゃー」

また瞬間移動!
頼む!これ以上こっちにこないでくれ!
という願いもむなしく、 さらに一完歩一完歩詰め寄る磯野家の面々!
背後の高速回転物は、未だに広がっては消え広がっては消え…。
もはやこれは拷問である。

「ちゃーちゃっ!」

さらに詰め寄る磯野家!
サザエのどアップ!
画面は彼女の独擅場!
サザエは手を斜め45度上方に手のひらを上にして振りあげ、少し跳ねあがり、オレにとどめの一撃を叩き込まんとする。
もうだめだ!
死を覚悟したオレは思わず叫ぶ

「エイドリアーン!(※)」

しかしそうおもった次の瞬間!
手を振り上げたままのサザエが、斜め上方を見上げたアホ面のままの、何か人外の力にひきずられるようにして、画面向かって左下の方向へすべり消えていった。

 

………。

何が起こったのかわからず、呆然とたたずむオレ。

しかし徐々に、目の前で繰り広げられた恐怖のダンスが、終焉を迎えたことを理解する。

オレは助かった!
奴に勝利したのだ!
悪は必ず滅びるのだ!!

…と思ったら、直後の提供で元気な事が確認されるけどネ!!

 

*   *   *

 

しかし、サザエさんのオープニングに隠された本当の意味を、あなたは見ぬけているだろうか?

曲始めの、サザエでございます、の一声で聞くものに“サザエ”という人名の刷り込みを行う。

そしてサザエの食事中の猫に虐待を加えると言う行為を、お天道様(神道において神を意味する)まで認めているという事例から「サザエ>神」の構図を人々に潜在的に示唆する。

大衆は空に浮かぶ気球形サザエさん核弾頭の脅威におののき、サザエの動物虐待を制止する事も出来ず、ただ作り笑いを浮かべるのみ。

当然、街までは財布をもたず無賃乗車、バスジャックなどの暴挙の限りつくす。

さらにサザエは鳥獣等にもその支配を広げつつあり、子犬ですら人面犬のごとく笑い出す始末。

そして、奇妙にくねりながらこちらに近づいてきて、拳を振り上げ、鉄槌を叩きこまんとするその時に、余裕綽々の表情で、物理学を無視した方向(画面左下へ向かって)消えていくのである。

これを見た大衆は、「あの一撃が入ったらやられていた。サザエには勝てない。所詮我々は、サザエに生かされているに過ぎないんだ。」という思考を閾下意識に埋め込まれ、無気力無警戒な人間へと洗脳されていくのだ!

 

*   *   *

 

結論

「サザエさんのオープニングは、日本国民にサザエの恐怖を毎週毎週刷り込むための、政府の陰謀であるであろう!(断定推量)」

 

 

コレニテドロン

 

※エイドリアン

シガニー・ウィーバー主演のホラー映画4部作。
主人公リプリーが、宇宙の果てから何度でもやってくる地球外生命体のしつこいアプローチに手を焼くラブコメディ。
いやがるリプリーに無理やり接吻をしようと、口の中から口を出すシーンはあまりにも有名。


第二回

初出:1999/05/05
修正:2000/10/01


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