皆さんお待たせいたしました。久々の新作公開です。
かつてNHK教育では「たんけんぼくのまち」という社会科の教育番組が放映されていた。
それは、当時世界に例を見ない経済発展と安全神話を享受していた日本に対し、隣国からの差し迫る侵略の魔の手に警鐘を鳴らすため製作された番組であった……。→NHK教育「たんけんぼくのまち」
流行中のメールウイルスのため、遅れに遅れていたメルマガ4号を今日発行しました。
読者の皆様にご迷惑をおかけした事を深くお詫びいたします。
申し訳ございませんでした。
このあいだ、吉野家行ったんです。吉野家。
そしたらなんか人はそんなにいなかったです。あの、いや、僕、いま派遣のバイトやってるんですけどね。
このあいだ行った派遣先で、クライアントの人と昼食を取ることになったんですよ。なにか食べたいもの有る? と聞かれたんですけど。
まあ、一応こっちは派遣の身ですからね。
「何でもOKです!」としか答えられないじゃないですか。そしたら、吉野家ですよ。
よりにもよってこの時期に吉野家ですよ。ありえねー。それはありえねー。
酪農家の方々には悪いんですけど、それだけはありえねー。コレは何かの度胸試しですか、って。
やっぱココは牛丼いかなきゃ駄目ですか、って。ココでいいよね? とか聞かれたんですけど。
なにしろ、こっちは派遣の身ですからね。
「ちょうど食べたいと思ってた所です!」としか答えられないじゃないですか。しかもなんか、いつのまにか僕が一番最初に注文する流れになってて。
結局、牛丼頼みましたよ、ええ。
しかも大盛り頼みましたよ、ええ。
もう罹患するときは一緒だぞ!みたいな感じでしたよ、ええ。そしたら、豚生姜焼き定食ですよ。
他のみんながそろって注文したの、豚生姜焼き定食ですよ。ありえねー。それはありえねー。
牛鮭定食の牛抜きくらいありえねー。オレだけですか、って。
オレだけプリオンですか、って。
友人の使徒沢君(以下S君、仮名)からの電話。
僕 「もしもし」
S 「おー、Masaton。今どこにいる?」
僕 「家だよー」
S 「なんだよー。学校来てないのかよー」
僕 「だって、雨降ってるじゃん。 雨が降ったらお休みなんだ、オレは」
S 「ハメハメハかお前は」僕 「ところで何よ?」
S 「あーそうそう、いま学食にいるんだけどさー」
僕 「うん」
S 「なんか、すげー修羅場繰り広げてる奴らがいるんだよ!」
僕 「まじで? 学食で? 晒し者じゃん」
S 「男1人と女2人で、女の方は二人とも号泣してんだけどねー」
僕 「結構すごい状況だね。何があったの?」
S 「それがなんか、男が二股かけてたのがバレちゃったらしいんだわー」
僕 「あちゃー、そりゃ確かに修羅場だー」
S 「うん。 それがまたサイコーに面白くてよー」
僕 「面白いってなにが?」
S 「いや、その二股かけてた男ってのが、すげー不細工なんだわ!グフフッ!」
僕 「うわー。お前って、トコトン人の不幸を喜ぶ奴だなー」S 「それに、男が言ってる言い訳がまたカッコよくてさー」
僕 「なんて言ってたの?」
S 「『オレはお前達の事二人とも愛してるんだよ!』ってさー」
僕 「何だそれ! ドラマの見過ぎー!」
S 「しかも言ってるヤツが不細工だからね!まるっきりギャグだよ!グフフ!」
僕 「ヒドいこと言うなー、お前」
S 「つーわけで、修羅場は現在も進行形なんだけどさ」
僕 「今はどんな状況なのよ?」
S 「今は三人とも無言だね。女の方は2人とも泣き止んで膠着状態」
僕 「ああー、一番辛い時間帯だねー」
S 「それが、今は今で、これまた面白い状況なんだわ。グフフ!」
僕 「ん? 今度は何があったんだ?」S 「なんか、隣のテーブルに座ってるやつがいるんだけどさー」
僕 「え! その修羅場の隣のテーブルに座ってる奴がいるの?」
S 「うんそう。スゲー神経してるだろ? グフフ!」
僕 「スゲー。オレなら、頼まれたってそんなとこ座らないけどね」
S 「でもそいつ、隣の事なんかお構いなしに電話とかしてんだわ」
僕 「うわ!超絶に場の空気が読めてないヤツだな」S 「だよねー。修羅場の3人組も、そいつが気になって話が進まないみたい」
僕 「そりゃ気まずいよー」
S 「あ!いま女が、電話してる奴のことスゲー睨み付けてるよ!」
僕 「マジで!」
S 「あーでも、全く効果なし!笑いながら電話続けてるよーそいつ!グフフ!」
僕 「うわー。ある意味、勇者だな、そいつ!」
S 「うん、まあ、その勇者ってのは、実はオレなんだけどな!」僕 「……は?」
S 「だからー。修羅場の隣で電話してるのは、このオレだって言ったの!」
僕 「……は?」
S 「つまりー。オレの隣のテーブルに、修羅場の3人組が座ってんの!」
僕 「……冗談だろ?」
S 「ホントだよ!だから、今までの電話も全部隣に丸聞こえだったよ」
僕 「アホかお前はー!」S 「突然どなるなよ。さっきまで面白がって聞いてたじゃん、Masaton!」
僕 「だ、だまれー!オレの名前を出すんじゃなーい!」
S 「いやーMasatonにも見せたかったよー。Masatonも見たかっただろ?」
僕 「名前を連呼すなー!オレまで共犯にする気かー!」
S 「なんだよー。今さら自分だけイイ子ちゃんになろうと思うなよなー!グフフ!」
僕 「違うー!断じて違うー!オレはやってない!オレは悪くなーい!」※この物語はフィクション…だったらいいな。
えーと、 「管理人に百の質問」という奴が最近流行ってるみたいなんで僕もやってみました。
興味ある人は読んでみてください。
(うぉー!早くお釣り出ろー!)
もう壊れるぐらい、釣銭レバーをひねりましたね、ええ。
しかし、そんな事をしても、お釣りが早く出るなんてことは無く…。
カチャリコ、と硬貨が音を立てるたびに、僕の寿命が1年ずつ減っていく気さえしました。(もう、これ以上のタイムロスは許されない!)
そう思った僕は、自販機の釣りの表示が0になった瞬間に、すかさず釣銭を取り出しに掛かりました。
僕って手が結構大きいので一回に10枚は回収できるから2往復でOKだ、とか、そんなくだらない計算までしてました。
と・こ・ろ・が!
あの狭い受け口の中に18枚もの硬貨がひしめきあっていたせいで、 受け口の透明なプラスチックのフタがちょっとしか開かないんですわ!
おかげでどんなに頑張っても、1度に1〜2枚しか取れない!
その細い隙間から、泣きそうになりながら必死でコインを掻き出しましたよ。ああ、こんな予想外の落とし穴にハマってしまうとは!
遂に彼らの腕立て回数は、五百回に達してしまったらしく、後ろから凄いオーラを感じるんですわ。
もう、僕、怖くて後ろを振り向けません…。結局、2往復で済む所を10往復して釣銭を回収した僕は、もう、一刻も早くこの場から逃げ出したかったわけですよ。
でも、後ろ振り向けませんからね。
怪しげなカニ歩きで自販機の前から横にズレて、そのまま後ろを見ないように右向け右をしました。ホントは今すぐにでも走って逃げ出したかったんですけど。
でも、ほら、山中でクマと遭遇したときって、走ると逆に追いかけられるとかいうじゃないですか。
こういうときは、あくまで歩きで逃げるべきなんですよ、多分。(……よしっ!)
意を決した僕は、すごい速さで『歩いて』逃げました。
今思い返しても、このときの僕は速かったですよ。
計測すれば、おそらく競歩の世界記録だったに違いないです。それに姿勢も最高によかったですね。
指先までピンと伸びて、脚もめちゃめちゃ真っ直ぐでした。
ハタから見たら明らかに不自然な『歩き方』だったとおもうんですけど。
でも走ったりしたら、追いかけてきますからね、奴らは。
フォルムのかっこよさを捨てて安全性をとるというか、名を捨て実をとるってやつですか?(よーし! あの角を曲がれば大丈夫だ!)
まあ、そんな努力のお陰で、逃げ切ったと思ったんですけど…。
なんか、後方からイヤな音が近づいてですわ。
その音ってのが、明らかに「足音」なんですわ。(やべー!追われてるよ!
何で!? 歩いて逃げたのに何で追ってくんの!?
…ああ、そうか。 相手はクマじゃなくて人間だったんだ。
なんて浅はかなオレ!!)そこまで考えたときに、ガッって肩を掴まれましてね。
世界記録のオレに追いつくとは、さすが体育会系って。
いや走ってきたんでしょうけど。あー、もう終わったー、って。
あー、もうボコボコにされるー、って。
一緒に腕立て伏せ五百回やらされるー、って。
今までの人生が、僕の頭の中で走馬灯のように回り始めた、そのとき。「ハァハァ…!……コーラ忘れてましたよ!」
彼の手には、僕が取り忘れたコーラの500ml缶が握られていました。
腐った空気が流れはじめたその場に、微動だにせず立ち尽くす二人の影。
片や、商品を取り忘れた僕の為に走って追いかけてくれた好青年。
片や、そんな彼をクマ扱いして逃げたオレ。<終わり>
→ 2001/10