-2001/10-


2001/10/21 500ml缶・中編
◆プレッシャー

「あ、今どきますね。」
そういうと同時に彼は、お釣りのレバーをカコンとひねった。
「あ、いや、急いでないんで待ちますよ」、と言おうと思い「あ…」と言ったときには、彼は既に釣り銭を取り出し終えた後だった。

「あ……りがとうございます」

もう譲ってもらうしかないじゃないですか、この状況だと。
しかし、人の親切に対してこんな事いうのはアレなんですけどね。
あの、後ろから物凄いプレッシャーがかかってるんですけど。

だって、順番を僕に譲ってしまった時点でもう、彼らの腕立て伏せ二百回は確定なわけじゃないですか。(推測)
さらに、ここで僕がモタモタ買ったりしたら、さらにペナルティーを課せられるワケじゃないですか。(憶測)
言い換えれば、彼らの未来は僕の双肩にかかってるワケなんですよ!(妄想)

わー、やべー、急がなきゃ!

とりあえず財布を覗いてみたら、100円玉1枚と10円玉2枚、ぴったり120円分あるんですわ。
これは大きいですよ!
千円札で釣りが大量に出てきちゃう事を考えると、10秒は短縮できるはずです!

さっそくコインを投入!
100円玉♪ 10円玉♪ 5円玉♪ って5円玉ッーー!

しまったー!
この大事なときに、5円と10円を見間違うなんて初歩的なトラップにひっかかるとはッ!!
このタイムロスで彼らの腕立ては三百回になってしまったに違いないですよ。

(ひー!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい…!)
僕は心の中で謝罪を繰り返しながら、慌てて千円札を追加投入し500ml缶のコーラのボタンを押した。
ガラゴロッと音をたてて缶が取り出し口に出てくる。

そこで気付いた。
あれ? もしかしてコレって、最悪じゃないですか?
あの、つまり、最初に僕、120円入れようとしましたよね?
でも、10円と5円玉を見間違えてて、結局 110円しか入れられなかったんですよね?
それで、慌てて1000円を追加投入したんですよね?
つまり、この時点で自販機に入ってるお金は、1110円ですよね?
1110円で120円のジュースを買ったわけですよね?
そしたら、そのお釣りは…。

990円ーーーッ!?

物静かな住宅地に、空しく響く18回の金属音。
ウィー、カチャリコ、カチャリコ、カチャリコ…
(ひー!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい…!)
コレで腕立て四百回確定ですよ。

<続く> ←またかい


2001/10/05 500ml缶・前編
◆体育会系

家から5分くらい歩いた所に自販機があって、僕、そこに良く、コーラを買いに行くんですよ。

いやー、ただの自販機ならもっと近くにいくらでもあるんですけどね。
そこには、普段なかなか売ってない、500ml缶のコーラが売ってるんですわ。
それ欲しさに、わざわざ5分歩きます。

この前、その自販機に500ml缶コーラを買いに行ったら、先客がいたんですわ。
屈強そうな若者二人が、なんかもの凄い勢いで、ガラゴロッ、ガラゴロッとジュースを買ってるんですよ。
それも、分担作業で。

一人はボタン押す係。
手にもった小銭をどんどん投入しながら、一定のペースでボタンを押しつづける。
もう一人は缶を取り出す係。
次々落ちてくる缶を神業のような速さで取り出しては、持参した袋の中に詰め込んでいる。

それがもう、二人の呼吸が完璧に合ってて。
なんつーか、餅つき職人みたいな流麗な動きなんですわ。

たぶん、近くにある大学の体育寮に住んでる人たちなんだと思う。
ホラ、体育会って上下関係厳しいじゃないですか。
「オイお前ら、ジュース買って来い!」
「俺の分も買って来い!」
「俺も!」
「俺も!」
…×20
「よし!1分以内で買って来い!」
「えー!無理っすよ!」
「口ごたえするんじゃな〜い!腕立て百回!」

(数分後)

「98、99、100!…終わりました!…ゼエゼエ」
「よーし、じゃあ40秒で買って来い!」
「え!!さっきより短くなってないですか!?」
「口ごたえするんじゃな〜い!腕立て二百…!」
「行って来ます!」
とか、そういうことから、このテクが生み出されたに違いないですよ。

なんて、アホな事を考えながら、二人の職人芸を眺めていた訳です。

そのときでした。
ボタンを押してた方の人が、僕の存在に気付いたのです。

<続く>


2001/10/01 笑っていいとも
◆テレホンショッキング

もし「いいとも」のテレホンショッキングに、みのもんたさんが出演したら、と考えると、夜も眠れないのですよ。

 

*   *   *

 

タモリ 「じゃあ、お友達を紹介してもらえますか?」

観客 「えー!」

ゲスト 「じゃあ“みのもんた”さんを…」

観客 「ええーーっ!!」

タモリ 「(え?みのさんって今、おもいッきりテレビじゃ…?)」

山中 「もしもし? フジテレビ笑っていいともですが、…みのさんですか? 少々お待ちください」

タモリ 「(ってもう、電話してるよ!)」

ゲスト 「あ、もしもし。 ご無沙汰してます。 タモリさんに代わりますね」

タモリ 「(代わるの早いって?) も、もしもし?」

みの 「もしもし、みのです。あーた、お名前は?」

タモリ 「え? あ、タモリですけど?」

みの 「はい、タモリさんね。 今日はどういったご相談ですか?」

高橋(ホワイトボード) 「相談者:タモリさん(56才) 妻と2人暮らし 子供はいない」

タモリ 「いや、明日いいともの方に出演してもらいたいんですが…って、無理ですよねぇ?」

高橋(ホワイトボード) 「明日出演してもらいたいお悩み」

みの 「あーたねぇ。さっきから聞いてると押しの弱いところが有るみたいだけど、そういう所が相手につけ込まれてるのよ。わかった?」

タモリ 「ハ、ハァ…」

高橋(ホワイトボード) 「押しが弱く、つけ込まれやすい」

みの 「もっと、相手にガツーンと言ってやんなきゃダメよ!」

タモリ 「そ、それじゃぁ、明日来てくれるかな!?」

みの 「そう!やればできるじゃないの!そうやって強く言わなきゃダメよ! それじゃがんばんなさい! ガチャン、ツーツーツー」

タモリ 「……」

ゲスト 「……」

観客 「……」

タモリ 「じゃ、一旦コマーシャルでーす」

 

*   *   *

 

結論: みのもんたは「いいとも」には出れない。

これでやっと、夜も安心して眠れます。


2001/09


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