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全国居酒屋紀行「釧路編」 〜炉端焼きの元祖〜


アールデコの親柱を持つという幣舞橋(ぬさまいばし)たもとからスタート。「流れ、流れて北海道は釧路までやってまいりました」との出だしの太田氏の言葉かっこいい。
幣舞橋には道東の四季ということで,それぞれの柱に彫刻が乗っている。画面に見えていたのは、「春」舟越保武さん作とのこと。
釧路は炉端焼きの発祥地とのことで、そのへんの検証も含めて居酒屋のたびへ。

和商市場にて肴の見物に行く。たこマンマという見慣れぬものがざるにある。一見柿かみかんのように見え大きさもいろいろだ。
炉端焼きの最高峰「めんめ」という赤いタイのような魚も見える。ほっけは傷があるものは安めな価格設定がされていた。傷というよりも、若干身がしなびている感じを受けた。

先程の幣舞橋にもどり、船越さんの「春」をまじかに見る太田氏。ちょうど象の頭の上には大きな鳥がのっていて、その彫刻の一部のように見える。
次に石川啄木像同様に腕を組んであらぬ方を見る太田氏。「石川啄木です。」とマネ(?)をしてみるのも面白い。釧路に啄木がいた期間は短かったらしいが、その間に多くの作品が生まれたらしい。
啄木が釧路に着いた時に読んだ歌: さいはての駅に下り立ち雪あかりさびしき町にあゆみよりにき
その他にも啄木の歌碑は釧路市内に20幾つあるらしい。
啄木以外の釧路縁(ゆかり)の有名人には美川憲一がいる。彼のヒット作「釧路の夜」の歌碑がある。なぜその歌碑があるかといえば、釧路沖地震の際、彼はその全国ツアーの最後に釧路で行ったコンサートの収益金の一部を寄付したということらしい。近づいて見ると自動的に歌が流れる仕組みになっている。

もう真っ暗といってもいい釧路の町へ。とある横丁に、赤天狗という店がある。ちょうど店の親父さんが準備をしているのに出会う。釧路で一番古い居酒屋(焼き鳥)らしい。
本当に暗いがまだ4時半とのこと。途中,道端になぜか鮭がまるごと落ちている。周辺の居酒屋地帯を歩くも時間が時間なのでまだ大半の店が開店していなく、看板に灯りが灯っていない。なにか違和感を感じる光景だ。1軒目の「炉ばた」に入る。開店のちょっと前に入ったため、店内にて開店時間5時の時報を聞くことになる。
店内も外の暗さの延長であるかのように暗さを保っている。が、出てくるものはあったかい物ばかり。湯呑に入って出てきたのは福司(釧路)。
茶碗に入れて酒が出てくるのは釧路の寒い土地柄を反映してのこと。寒い外から来た客人にすぐに出せ、飲んでもらうよう、常にお燗につけておき、茶碗で出すようだ。
やなぎがれいはふっくらとしておいしそう。ベテランの女将さんの焼き加減は絶妙とのこと。しいたけ焼きは柄の部分も太く、出し汁が張られ、いい感じだ。
出し汁にはバター、酒も入っていてとりわけバターの風味がよいとのこと。
 太田氏披露の北海道に炉ばた焼き屋が多いわけ→開拓時代の北海道,冬に大切なのは火である。→人を招く基本は火。→火そのものが人を集める。(蛇足だが東京の炉ばたは邪道とのこと。なぜなら外が比較的温かく,炉ばた本来の立地条件ではない)

店紹介テロップ「炉ばた」 創業40年を超える,炉ばた焼きの元祖といわれる店。焼き方のコツは、「あまり裏返さないこと」というみつさんの焼いた魚は絶品。焼きなすは、網の上ではなく直接炭の中に入れて焼くという珍しい物。一度ご賞味あれ。


みつさんの焼きに関する技は他の炉ばた焼き屋も絶賛するものらしい。適度に脂を落とし、外側を焦がす技は伊達に40年やっているものでは無いだろう。
2軒目,おでんという文字の入った赤提灯のかかる「挽歌」へ。豆腐とふきを注文。女将さんのお勧めでたち(たらの白子)を追加する。
ふきは一見大ぶりの昆布かと思うほどだ。よく煮てあり、とても柔らかいとのこと。
カヌーの写真が壁に貼ってあることから、お客さんも交えてのカヌーや釧路の自然の話に花が咲く。ししゃもを注文。「オスは身が美味しい、メスは子がおいしい、もちろんメスにしか子はないんだけどね。」

店紹介テロップ「挽歌」 昭和31年にベストセラーになった釧路出身の小説家原田康子の「挽歌」から店名をいただいた店は、昭和32年開業。今でも毎週日曜日には釧路湿原に入るというご主人は,今エゾモモンガを写真に撮ることに夢中。2階にも部屋があり、グループなら予約できる。

「…あの頃も知らないで、あなたが憎い〜あなたが〜…どうも失礼しました」店を出ると同時に太田氏が一節熱唱する。歌の曲名は不明。
まだこうこうと明るい釧路の町にもう1軒行くぞと消えて行く。

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新全国居酒屋紀行「盛岡編」 〜みちのくの秋の味覚〜


秋の盛岡。宮沢賢治の短い詩が刻まれている碑がある。『川と銀行 木のみどり 町はしづかに たそがれる』川は中津川、銀行は盛岡銀行のことのようだ。
賢治の詩でも読まれている旧盛岡銀行本店はとても古い造りで、レンガ製。明治期の欧風建築だ。
途中、雑貨屋店頭でとてつもなく大きなたわしを発見。縞模様が入っており、亀の子たわしならぬ虎の子たわしか。
八幡町界隈を歩く。盛岡八幡宮の参道でもあるこの一帯は古い飲み屋があり太田氏のお気に入りらしい。
1軒目の「とらや」は地元の人しかこない、マスコミにも紹介された事のない素朴ながら実直な感じの居酒屋。
ビールをあおり、豆腐を注文。温められた豆腐の上にはかつおぶし、海苔、ネギがかけられ熱のためかつおぶしが揺れる。「ほら、生きてる、生きてる」
南蛮天(唐辛子の天ぷら?)は辛い方と辛くない方両方入れてもらう。辛くない方でその美味しさに目を細めていたところ、辛い方でそのあまりの辛さにカラムーチョのおばあさんのような顔になる太田氏。
菊の司(岩手)は厚手で重いガラスのコップ入り。

店紹介テロップ「とらや」 40年以上続く盛岡でも老舗の居酒屋。地元で取れた季節の素材を、できるだけ安い値段で提供するというご主人阿部真さんの作る酒の肴は、何を食べても美味しいの一言。いつのまにか常連のお客さんとの会話もはずむ。

南蛮天はカメラマンの方も挑戦されたようだが、やはりとても辛いものだった様子。店の雰囲気を誉めつつ、次の居酒屋へ。
2軒目は「サザエ」。あの漫画サザエさんとどんな関係があるのか興味を持つところである。
大根と白滝を注文。味付けとしてみそと辛子のどちらかを選べるが、太田氏はみそを。汁気の多い感じがだしで溶いた柚子みそのようだ。
次にあみたけのおろし合え。なめこのようなあみたけは大根おろしの上に乗っている。
サザエさんという店の名前の由来はわからなかったが、長谷川町子さんが存命の頃、一時著作権の問題が出たことがあるそうだ。詳細はわからないが、長谷川さんが亡くなった時に店名をサザエさんからサザエに変更したそうだ。お客さんは相変わらず、サザエさんと呼びつづけているみたいだが。
ほうきたけ酢味噌合えはピーナッツ風な味とのこと。変わった食感のキノコだな。

店紹介テロップ「サザエ」 昭和39年開店から、もう35年を経過した店は、ご主人の谷地輝夫さんがはじめた店。秋から冬にかけては、盛岡名物いものこ汁などの郷土の肴が味わえる。奥に座敷もあるので、ゆっくり地元の料理で宴会もできる。

店の主人は西部劇などに出る名脇役ロバート・ライアンに似ているそう。なかなかかっこいいハーフ的顔立ちのご主人だった。

三軒目のバーバロンへ。暗がりのなかに静かにカクテルなどを飲む客が何人かいる。
ジントニックに続いてアザミを注文。「これは重厚なカクテルですね。強くて甘さもあるけれども、アザミの苦味もある」

店紹介テロップ「バーバロン」 盛岡で唯一の老舗オーセンティックバーバロンは、開業34年を迎え、益々円熟味を増している。マスターの作るオリジナルカクテルは絶品で、特にアザミはネーミングが先で、アザミという花の特徴を最大限に表現した秀逸な逸品。


楽しそうに「アザミ」を歌う太田さん。隣りのすてきな「お嬢さん」と話し込んでしまったということだが、何を話したのだろう。


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全国居酒屋紀行「大阪編」 〜なにわのあては、美味しいでっせ!〜

大阪の中心地、道頓堀の中でもとりわけ目立つグリコの看板などを背景にして太田氏登場。”安くて”なおかつ”美味しく”なくてはナニワッコは満足しない。そうこう言っている後ろでは、若いカップルが楽しそうに記念写真を取っている最中であった。
地下鉄恵美須町駅を出たところから再スタート。今回は昼間から居酒屋ということらしいが、まずは通天閣に行ってからということになる。この日は日曜日だったのだろうか、家家族連れなどの老若男女が通天閣の展望台行きエレベーターに列をなしている。
展望台から見える大阪の町、続いてビリケン像。胴長短足で足を立てるようにして突出し、手は胴体にきっちりつけている独特の姿勢である。

太田「明治40年ごろにアメリカから渡ってきた福の神ですね。足の裏をちょこちょこっとかくとにやっと笑って望みがかなうらしいけど…」
太田さんはビリケンが大好きのようで、キーホルダーにビリケンの絵がかかれたプレート状のものを使用している(実際画面で映されました)。
そうこうしているうちにも、ささやかな幸せを求めて人々がビリケンの足をはじめいろんな所を触って行く。

ビリケン像を離れて、1軒目の明治屋へ入る。まだ日は高いが先客が何人か見える。ビールで一息ついたところで、店の机について語る太田さん。カウンターの机とテーブル机は幅も高さも変わらないため、テーブル席のほうでは客同士が必然的に距離が近くなり、そのためひっそりと話しができ店はいつも静かなんですよ。といった矢先に後ろのテーブル席の4人組からの賑わいが聞こえてきた。そこでちょっと間を入れ、ささやくように「今日はちょっと、にぎやかな客も居るけどね」と一言。う〜ん、かっこいい。
きずし、そして皮くじら(大阪ではおばけというらしい)と言う大阪の肴の定番を紹介。「大阪は鯖の扱いは日本一!」どちらも素晴らしいとのこと。
燗酒を注文。銘柄は松竹海老(兵庫)で甘口。特徴としては「気持をぐにゃぐにゃにさせてくれる女酒」とのことで、甘口のよさを堪能させてくれるようだ。
ちょっと酔いが回ってきたのか顔を赤らめながら、茄子の漬物に相好(そうごう)を崩す太田さん。

店紹介テロップ「明治屋」 明治の末に酒屋として創業した明治屋は、昭和13年から居酒屋として営業をはじめ、60年以上の歴史を持つ。3代目のご主人松本光司さんは、高校を卒業して以来明治屋一筋で、40年のキャリア。

店を出ると日が高いのに加えて映画「タイタニック」のテーマ曲がどこからか聞こえてきて、せっかくの落ち着いた気分がそがれて残念。こういう曲(時と場合による)を流しているのはやはり公害だという意識を持つべきだと思う。(話題がそれました)

夜の法善寺横町。狭い道の左右は迷宮のように看板が出て歩くだけでも楽しそうだが、その界隈を通過し、道頓堀に出る。ここは店の乱立が人の乱立に変わったという感じ。橋の中ほどに人だかりができていたが、変わり風船?(タコ風船を思い起こすような)をつくって売っている(見せているだけかもしれない)ようだ。
2軒目ながほりに入店。カウンターだけのようで、奥に細長い作りになっている。「今日のお勧めは?」という太田さんの問いに「かつおは最上級!」とのご主人の答え。
頼まないわけにはいかず、かつおを注文。
しらぎく(高知)大吟醸山田錦を注文。大吟醸と上等のかつおで「しゃべるのがばからしいほど」うまいとのこと。
たいら貝の貝柱であるたいらぎが大好物の太田さん、若干あぶったたいらぎの塩焼きに満足。
さらにごろいかの一夜干し、酒は奥播磨(兵庫)純米吟醸雄町斗瓶取りを飲む。「これはふくよかな酒ですね。すごくエレガントだね。ちょっとなつかしい」
たいの白身このわたはあまりの美味しさに言葉もでなく、笑ってしまう。(あははという感じの笑い)「このわたとほやを和えたばくらい(莫久来)という塩辛があるんだけど、それの2、3歩上をいくものという感じかな。こんな贅沢していいものなのかなあという感じだね。」

店紹介テロップ「ながほり」 旬の肴と全国の銘酒を堪能できるながほりは、創業15年を迎え、益々活気あふれる上り坂の店。常時20数種類の地酒と15種類ほどの本格焼酎を揃えており、全国の旬の素材とのハーモニーは素晴らしいの一言に尽きる。

ご主人の快活な応対と酒好きそうな大人な?客に囲まれたながほりはいい雰囲気だった。太田さんはいつのまにか隣の客と話し込んでいる。
歴史は浅いがよい店として太田さんが推す日本裏三大酒場にながほりは入るとのこと。店への愛情を少し長めの暖簾をゆすって表現する太田さん。「また来るよ。」

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新全国居酒屋紀行「京都編」 〜秋の京都は最高!〜

京都の南、山崎からスタート。こじんまりとしたJR山崎駅からカメラが回ると、千利休の茶室「大庵」を背に太田さん登場。秋深い京都で酒を呑むということで見ている側もしみじみと嬉しくなる。
踏切を渡ると、サントリー山崎ウイスキー館である。まずは展示物を眺める太田さん。ガラスの中の説明文には「ウイスキーづくりの草創期、それは1923年、山崎で始まった」とある。日本で輸入物とは別に独自にウイスキーを作り始めた人達の展示や当時のポスターなどがある。社名変更や大地喜和子のセクシーポーズのポスターなど。
トリス人形?がかわいらしく展示されている。ここでの展示品はプラスチックだが、松山のバー「露口」には木製があったとのこと。
ウイスキーがずらっと並ぶ階下へと降りて行く。様々な色のウイスキーがあるようだが、出来立てのものはニューポットと言って基本的に透明で、発酵の度合いや保存容器によって色合いが変わっていくらしい。制服姿の女性が説明をしてくれる。ウイスキーの詳しい事はここへ。
バーのようなカウンターにて試飲ができる。年月を経るにつれ、香や余韻が増す感じのようだ。出来立てや4年もの、そして40年ものどれもそれぞれの味わいがあるようで面白い。

山崎ウイスキー館 山崎ウイスキー館は、蒸留所開設当時の建物を中心に改装したもの。1階のウイスキーライブラリーでは、山崎蒸留所でしか出会う事ができない原酒のテイスティングもできる(有料)


街に出る。北野天満宮付近の「上七軒」は祗園よりも古く格式も高いそうだ。使い古していい味の出ている簾がかかる店が並ぶ小道を散策。京都ならではの光景だろうか。
表通りに出て、1軒目「神馬」に入る。甕の中に酒をブレンドして入れるのがこの店のやり方のようだ。創業66年のようだが、戦争中に休業の期間があったようである。
先代から使用しているという甕からの酒を飲む。「いろんな味がしますね」と太田さん。
昔使用していたという燗つけ機をいくつか見せてくれるご主人。炭を入れて温めるタイプは実際にお客さんが試した事があるようだが、「そこそこいけるで!」とのことで遊びの範疇のものらしい。
おでんの豆腐は味が染みていておいしそう。

店紹介テロップ神馬 昭和9年、先代が創業して、今年で66年目を迎える。店は昭和36年に最後の改装をしたままで、その当時の雰囲気を今に伝えている。店内に並べられた酒器のコレクションは、一滴も呑まない先代のご主人が集めたもので、今や貴重な品々ばかり。今でも現役の手動式レジスターは骨董品。


甕酒や店の古い作り、ご主人・女将さんのお人柄など全てに満足した太田さん。2軒目は奥深い京都を感じさせる小道の奥へ。「長寿庵孫助」へ入る。
焼酎の専門店ということで、奥にはずらっと各銘柄が並べられている。まずは八幡(鹿児島)芋焼酎。
ご主人の話した焼酎の魅力とは……「スタイルを選ばない、着飾らないところ。蔵の思い入れが凄く強い」とのことで実直な安心感があるそうだ。味にも品質にもそれは当てはまりそうである。
伏見唐辛子とじゃこの炒め煮は画面の色合いでちょっと見にくかった。姶良(鹿児島)芋焼酎を注文。こくもあるけどすっきりしているタイプらしい。
黒豆のチーズ納豆というこじゃれた?ものがあるのは店の奥に若い女性連れが来ていることからも分かる。さらに牛タンの味噌漬が来る。
焼酎の品揃え、それに合う肴の工夫などどれをとっても素晴らしいとのこと。

店紹介テロップ長寿庵孫助 まだ開店して4年目だが、ご主人が足で集めた焼酎の品揃えは京都一。焼酎に詳しくなくても、一言ご主人に相談すれば、好みの焼酎を選んでくれる。2階もあるので、グループでゆっくり楽しむのも一興。


まだ若い店だが焼酎の話をしているのが一番楽しいというご主人の焼酎ワールドを堪能できて満足そうな太田さん。隠れ家的な雰囲気の店もまたいいものだろう。
「さあ、もっと奥まで行ってみよう」との言葉を残し、小路に消えていく。

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新全国居酒屋紀行「焼津編」 〜太平洋の幸に乾杯〜

焼津港を背景にして、小林旭風に太田さん登場。カツオやまぐろが冷凍になっったものが、ベルトコンベアーで続々と陸揚げされている。
夜の酒の楽しみの前にまずは魚市場食堂で昼飯を取ることに。学生食堂のように広々としていて、簡素な作りの机が並ぶ。が、刺身定食などの充実振りは素晴らしい。
太田さんが頼んだのは特上まぐろ丼(1380円)。味噌汁・小鉢・新香がついてである。カイワレが大量にまぶしてあり、まぐろ一切れは赤子の手ほどもありそうで豪快な盛りつけ。なんとこのどんぶりにはなかほどにもまぐろが入っていた。客は時間が遅かったのか、いかにも漁師という集団はいなくサラリーマン風や夫婦ものなどがちらほら。
ヤイヅツナコープというまさにまぐろワールドな市場に入る。天井から下げられた札には北洋物、塩辛、練り製品などと分類され、まぐろデパートと化している感じだ。
近所の奥さんらしき人達が夕食の買い物をごく日常的にしているのだが、なにかうらやましい感じだ。

1軒目「舟小屋」に入る。生きのよさそうな魚の数々が並べられたカウンターは壮観。ご主人は漁師でもあるようで、応対の声に張りがある。
磯自慢などを中心に静岡の酒は近年すばらしいものが多いそうだ。太田さんは5、6種類の酒の名前をそらんじていた。
磯自慢の吟醸生酒は「すっきりとして甘口だが、甘さが残らない」とのこと。洗練された味のようだ。
桜えびは新鮮さが色の鮮やかさに表れているという感じで、器の派手さに負けていない。かつおは厚切りの刺身と共に心臓もついてくる。割とあっさりとしているようだが、しっかりと血の味もするとのこと。駿河湾ではこれからの季節、獲れる魚が徐々に「底モノ」(より深い海で生息する魚)になっていくということである。タラバガニが獲れる頃にぜひまた、とうまく次の機会をつくるご主人。

店紹介テロップ舟小屋 店自体は、多くの個室や宴会場もある大規模店だが、調理場の前にあるカウンターでは目の前に並んだ魚を気軽に楽しめる。旬の魚の話をカウンター越しにしながら、昼間でも静岡の銘酒を堪能できる酒飲みにとってはこたえられない店。


店頭にある船の巨大模型の前でまた小林旭風ポーズの太田さん。今日のおどけ度の高さは満足度の高さを表しているのだろう。なかなかこのポーズ似合うと思いますが。
2軒目は若い人で賑わうという「赤兵衛」へ。が、客は太田さん以外あまり見受けられない。初亀(静岡)純米吟醸を注文。一見シャンパングラスのような長(たけ)のあるグラスで来る。かつおの味噌叩き(なめろう)を注文。さらにはらもを。
へそ(心臓)の塩焼きは外見がホタテの貝の形に似てキュートな感じ。かみごたえがあるものらしい。
初亀(静岡)秘蔵大吟醸亀が来る。少し値の張るものである。大吟醸はワインに似ているという事だが、普段あまりそれに組しない太田さんもちょっと納得という感じ。
「僕はあれだね、国賓を招いた晩餐会にこの酒を推薦します」という絶賛振り。
居酒屋には珍しく赤身の握りが出る。鮮やかな色合いに「おいしいね。銀座の高級寿司店ならいくらとられるか分からない。それほど透明感のある美味しいまぐろだと思いますね」
店の作りはなかなか凝っていて内装を見ているだけで楽しめそうだ。

店紹介テロップ赤兵衛 開店18周年を迎える店は、住宅地の中にぽつんと立っている。しかしひとたび中にはいれば、そこは静岡の銘酒の他、全国の地酒が堪能できる異次元空間。今宵も駿河湾の幸を楽しみに酒飲み達が集まってくる。


カツオのはらも、まぐろはらも塩焼きなどを絶賛。久しぶりに「まぐろはらも塩焼きは、スタッフが食べてしまったため映像がありません。申し訳ありませんでし」との例のテロップが出るが、事情が分かったので打ち上げの盛り上がりなどが想像されるところ。来週はどこへ行こうかなと心底楽しそうな太田さん、焼津の暗がりへ消える。

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全国居酒屋紀行「高松編」 讃岐うどんはやっぱり違う

 夜になってもうどん屋で議論が展開するという町、高松では居酒屋の状況はどうなっているのでしょうということでスタート。
高松駅前、朝の九時半からという早めの出発。うどん屋に直行というのはなかなかに珍しい展開のような気がする。それほどまでにうどんと高松は切り離せないということだろうか。
朝8時から開店しているその店は店頭で麺打ちのパフォーマンスを公開している。しばらく眺めた後、うどんを注文する太田氏。朝食からうどんを食べるのは割に定着している習慣のようで、店員の男性からは「モーニングうどん」という素敵な言葉も出る。後ろに掛けられていた時計を見ると11時を過ぎていたようだが、この1時間半はなんだろうか。「つゆ、多めで、ネギ多め」と少々のわがままを言いつつ、うどんを受け取る太田氏。セルフサービスのこの店はレジまでの途中で揚げ物類などを各自で追加していくようになっているらしい。昼近くの時間のためか、制服を着たOLの姿などが見られ、町に溶けこんだ感じ。揚げ物やイナリを追加していたのは番組ディレクターの小川さんだろうか。

テロップ 言わずと知れた讃岐うどん。香川県内で約600店、高松市内だけでも約200店のうどん店がある。セルフの店には必ず天ぷら、いなり寿司、玉子焼などのおかずがあり、自分でとって最後に精算してもらう。高松市民は概してうどん好きで、一日一食は必ずうどんを食べるといわれる。

 セルフサービスと書いたが、本当のセルフは自分でざるに麺を入れて湯がいて、ちゃっちゃっとやるものらしい。「さぬき麺業兵庫町店」はセルフの一階と若干高級な2階があるらしく、普段着のうどんとそうじゃないうどんとの区別があるらしい。

栗林公園にて桜を見ながら腹ごなしの太田氏。公園近くの小ぶりな紫雲山が緑に囲まれのんびりとした空間になっている。鯉にえさをやる光景もいかにもゆったりと時間が流れて行く様子。

高松の繁華街に入って居酒屋を物色する太田氏。何軒かの品書きなどを見て周るが、かつて入って二人の美人とシャコが印象に残ったという「美人亭」を探す。雑居ビル前には競合の店の看板がたくさん出ているが、美人亭の立て看板は奥のほうにひっそりと存在感を示している。

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新全国居酒屋紀行「大阪編」 〜大阪冬の陣〜

 大阪城を背にして冬の大阪に佇む太田さん。周囲は大阪ビジネスパークという高層ビルも立ち並ぶ。前回訪れたのは夏だったので、今回は冬の陣ということで出発。
大阪の台所、黒門市場を訪ねる。ふぐ、マツタケなど高級品も並ぶ市場は活気がある。「今日はひれ酒やらなきゃ始まらないな、参ったな、おい」とはやくも今夜の意気込みを語る太田さん。何が参ったんだか(笑)
とあるふぐ専門店にはふぐにまつわる番付表がある。

西あほの方   東かしこの方
元の十九にしてくれと言う女房にてっちり食わすな 横綱 亭主に白子食べさせ精力をつけさす賢女房
白子を亭主に食わさぬ女房夜淋しい 大関 風邪引きにと言ってひれ酒、てっちり料理をだす賢い○○

ほかにもたくさん書いてあったが、割愛。太田さんお気に入りは西の大関「白子を亭主に食わさぬ女房夜淋しい」。ふぐ=精力というわりと一元的な捉え方でセンスとしてはどうなんだろうというのはあるが、店のお守りとして機能しているのだろうか。
なまこやまだ動いているカニなどもある。

時は夜になり、天王寺近くの阿部の銀座に来る。
正宗屋には常連らしき人達で満杯のようだ。手前のおっちゃんは灰皿がないのか後ろ手で煙草の灰を道へ捨てている。入り口のヘリに背中をつけている。
近くにはこれまた満員の立ち飲みの店。体をずらさないことには身動きが取れないようにひしめいたおっちゃん達の世界が展開している。
小道に入って、古い映画のロケセットのような(陳腐な表現ですいません)雰囲気に酔いしれる太田さん。1軒目「和源」に入る。陶器の器で出てきたビールは泡が細かくておいしいようだ。よこわ(まぐろの幼魚)たたきは豪快な厚切りで登場。かつおと違って、もっちりとしていて味が深く、美味しいそうだ。
黒牛(和歌山)純米、なまこ、ふぐの唐揚げと舌鼓を打つ。