ぴしゃり、ぴしゃりと。
 
 闇の中で遠く。
 水を滴らせた重い布をゆっくりと引き摺るような、音が聞こえる。

 冷たい石壁に閉ざされた世界に、色は無い。
 光も無い。



 濡れた、孤独の足音が、ゆっくりと近づいてくる。

 はじまりは、はじまりでなく。
 おわりも、おわりではない。

 ただ緩く廻る輪の中で。
 孤独が行く宛ても無く、彷徨っている。



 名を。呼ばれた気がした。



 ・・・もはや思い出すことも、思い返すこともない。

 それは、空虚な言葉。















蒼い花 前編 









<1>

「お目覚めか?・・・”泥人形”」

 まるで泥土の内に沈みこむように重く、焦点を定めぬ意識の海の中に声が掛けられた。
 瞼をあげた瞬間、閃光が眼を焼き、引き裂かれるような痛みと共に眩暈に襲われる。
 薄く光に切り取られた視界の端に朧に写る翠色の影が、笑いを湛えて揺れていた。

「ふふ・・・」



 凍えるような自身の吐息が、鉄錆の香と共に篭り。光に慣れた視界が、徐々に世界を認識する。
 突き刺すように眩いと思われた光は、石壁に掲げられた古い燭台の、脆い小さな揺らぎでしかなかった。
 上げた視線の先、壁に立てかけられた円形のくすんだ銀盾の鏡面に、簡素な木台に腰掛ける一人の囚人の姿が歪んで映る。
 罪人が被る、醜く重い頑丈な鉄仮面。擦り切れた麻の布服から覗くのは、鍛えられた戦士の肉体。
 思考を止めた意識は、ただ淡々と己が姿を冷たく認識する。
 どうでも良い。何の感傷も起こらない。
 ただ、そこに在るだけ。
 自分が何者で、ここが何処なのか。何のために存在しているのか。
 疑問を想起させるあらゆる感情が、暗い空洞を残して心から抜け落ちているのを感じた。


「何も思い出せない。何も感じない。・・・そうだろう?」

 傲慢で居丈高な声色。
 視線を向けると。・・・そこには一匹の、魔物が居た。

 背から伸びる漆黒の翼と、艶めいて煌く紫色の瞳を持つ発言の主は、幼いながらも美しく整った面立ちの、人間の少年の姿をしていた。
 透き通るような白い肌、緩やかな翠色の髪。白く上質な布地に、細かな金色の刺繍が施された高貴な装束。
 その繊細で中性的な相貌は、まるで闇に舞い降りた天の御使いのようにも見える。
 だがそれは餌を誘き寄せ、狩る為のもの。高位の魔物が持つ特有の、浮世離れした魔性であると一目でわかる。
 傲岸不遜に見下ろす魔物の姿を淡々と識別して、だが次には一切の興味を失い再び視線を地に落とした。
 ・・・押し殺した少年の笑い声が聞こえる。
 
「生まれたばかりのお前に教えてやろう。」
 息を潜めるように少年は小さく吐息を吹きかけてきた。
「お前の主は俺だ。・・・お前は、俺が創った、俺の為の人形なんだよ。」

 再び声の方向に首を回すと、紫玉の瞳を薄く細めて、小さな影が身を寄せ絡みついてきた。
 燭台から漏れる橙の明かりが、床に漆黒の影を長く引き伸ばす。
 温もりを宿さない小さな手が、とくりと脈打つ鼓動を確かめるように、そっと胸にあてられ。
 カチカチと白い歯を鳴らしながら、濡れた瞳が見上げてきた。
「・・・・・・」
 
 寄せられる唇を、肌を撫でる繊手を、何の感慨もなく身に受け止める。
 何もかもが、どうでも良く、疑問を抱く気にもならなかった。
 

 冷たい石壁に囲われた地下室の闇の向こうに、鉄格子の間から漏れる月明かりが青白く揺れるのを見た。
 獣が水を啜るが如く、濡れた水音が月夜の静寂の闇の中に響く。
 陶然と闇夜に沈む艶笑と

 赤い雫…

















<2>

 そこには昼も夜も無かった。
 湿った黴の臭いと、深潭に連なる闇。
 どこからともなく人の呻きや、叫び声が、近くもなく遠くもない、地の底から途切れることなく響く。

 漆黒の静寂の中で、時折けたたましい騒音が姿を現した。
 入り乱れる複数の足音。重い鉄の扉が荒々しい音を立て、開閉されると、悲鳴や懇願の入り混じった叫びが静寂を揺るがす。
「助けてくれ!俺は何もやってない・・・」
 地下牢の住人として新しく選ばれた哀れな囚人達は、哀願も空しく地下の闇へと連れ去られていく。
 恐怖を湛えた視線が、鉄格子の外からこちらを掠め去る。そのどれもが化け物を目にしたように怯えていた。
 連なる石牢の更に奥、鍵型に曲がった廊下の突き当たりに赤く錆びた扉が一つある。
 日の光も届かぬ程に、更なる地の底へ誘う地獄の扉。
 そこに連れて行かれた多くの者は戻ってはこなかった。だが中には独房の住人として再び舞い戻る者も居る。狂人となって。
 皆、一様に醜い鉄仮面を被る化け物達ばかりであった。ある者は常に獰猛な唸り声や歯軋りを立て、またある者は狂ったように何かを喚き散らす。
 全身に血管の筋を浮き上がらせた姿の者、石牢の天井に背がつくほどの大男、獣のように毛むくじゃらな姿の男。鉄格子に遮られた視界から、僅かに覗く姿は人間とは呼べない者ばかりであった。
 闇の中で、周囲の小部屋からは狂人達の息遣いが聞こえた。
 己自身もそうした化物の一人なのだろう。思考は常に冷めたまま世界を観察していた。
 周囲の喧騒は、私にはただの”音”に過ぎず、心は静寂の世界に独り座すのみであった。





 自分はこの閉ざされた世界で、”処刑人”と呼ばれていた。

 時折、闇に潜む地階の牢より外界へと連れだされる。
 蒼き月夜の晩。煌々と星空が明かりを落とし、涼やかに吹き渡る風が血の香を運ぶ。
 猛獣用の頑丈な鉄の檻に移され運ばれた先には、生と死、破壊と殺戮を見世物とする熱狂の舞台が設えられていた。
 巨大な円形の闘技場は、階段状に連なった観覧席によって幾重にも取り囲まれ、色取り取りの豪奢な衣装に身を包んだ人間達で溢れ返り、熱気に満ちていた。
 一方で己が立つ舞台は、至るところに血溜りと、人であったものの残骸が散る、凄惨な死の世界。
 化け物のような体躯をした醜い巨人が狂った咆哮を上げ。血糊のついた刃を振り回す狂人が、より残虐に敗者を蹂躙するほどに舞台は熱く沸き立った。
 周囲の檻の中には、自分と同じような鉄仮面の狂戦士達の他に、罪人と思しき囚人達がいた。
 満月の夜毎に開かれる死の遊戯、この剣闘会で勝ち抜くことで彼らは自由を約束されていた。だが彼らに自由が巡り来ることなどない。
 仮面の狂戦士達は無慈悲に彼らを葬り去る。正当な裁きを受けることもなく、死の舞台を盛り上げる玩具となる人間。そしてそれを高見より見世物として楽しむ人間。
 喧騒の渦。熱狂と嘲笑の入り混じった歓声。
 重く閉ざされた鉄格子の中から、暗い鉄仮面の内から、私はその陰惨な世界を静かに見渡した。
 周囲を見上げると、観覧席の一際高くなった壇上に城主と思しき人物が座している。
 絢爛豪華な装束で飾り立て、己が世界の支配者と信じて疑わぬ者が持つ、強欲な笑みを口端に浮かべた男。
 そして城主が鎮座する高台の前方に、赤く滑らかな絹織物が敷き詰められた小さな台座が据えつけられ、銀色の首輪を嵌めた少年が、台座の上から興味深げに闘技場を覗き込んでいる。
 少年の姿をしたその魔物は、私と目が合うととても嬉しそうに表情を輝かせた。


 月が夜空の頂に昇る刻、重い鉄格子の檻扉が開け放たれ、いつものように私はこの死の舞台に降り立った。
 もはや”人”であるものは残っていない。最期に居るのは、この夜最も多くの者の血で刃を染めた化物。
 闘技会の覇者となった同じ仮面の凶戦士を、最後に”狩る”ことが”処刑人”である私に任されていた仕事であった。
 血に濡れた闘技場に投げ捨てられたままとなっていた、刃の欠けた鉄の剣を拾い上げる。
 歩む先、獣のような咆哮と共に巨大な影が立ち塞がる。仮面の奥から覗くのは淀んだ輝きを放つ血走った目。
 地鳴りのような歓声が耳を突き抜ける。人々の歪んだ期待が、熱気となって舞台を覆った。

 意思も目的も持たないままに。本能に近い何かが、私を動かしていた。

 大男が血塗れた斧を振りかぶる。
 一撃目。
 避けるという意思はない。生への渇望も死への恐怖も私にはない。全ての行動はただ己に刻まれた本能が反応した結果にすぎなかった。
 身体を斜めに捻るようにして倒すと、強烈な風圧が唸りをあげて頬を掠め去った。
 二撃目。
 振り下ろした勢いのまま大男は巨大な斧を真横に薙ぐ。遠心力による加重は風を裂く轟音となり襲いかかる。
 咄嗟に身を伏せ、前転により破壊の一撃から逃れるとそのまま大男の懐に飛び込む。地を蹴り立ち上がる勢いのままに身を捻り、錆びた鉄剣を突き上げた。
 肉を裂き、骨を砕く感触。命を奪う瞬間の、冷たく、重く、鈍い手応え。

 一瞬の出来事。だがそれで充分だった。
 もう幾度と知れぬ程に。繰り返してきている。
 身に刻まれた記憶が・・・それを告げていた。



 
 静寂。
 直後に起こる怒涛の歓声。地鳴りのように世界を包む。
 死の香りと、歪んだ熱の渦。

 全てが私の周りでは音を失い、作り物のように、通り過ぎた。
 見上げた先、高台に座する少年は今にも血塗れた舞台に飛び降りそうな勢いで身を乗り出している。
 巻き上がる風が運ぶ血霧に陶然と身を委ね。少年は私に向かって手を振り、とても・・・とても嬉しそうに笑っている。
 誇らしげに。

 残酷な程に
 無邪気な笑顔で















<3>

 幾昼夜が過ぎたのか、時間という概念を持てない私にはわからなかった。
 ただ、生ける屍として暗闇に座し、無機質な鉄仮面の細い隙間から、冷たい石の床を眺めて過ぎる時間を刻々と追う。
 私が”処刑人”としての役目を果たすたびに、魔物は嬉々とした様子で私の元を訪れた。
「この前の試合も、お前が一番だったな。」
 誇らしげな表情で幼い頬を上気させながら、魔物は紫色の瞳を細めた。
「お前がいつも、あまりにも早く試合を決めすぎるものだから、興が削がれるとご主人様から叱られた。」
 眉根を寄せて拗ねる様に口先を尖らせるが、すぐにまた斜に構えたような笑みを浮かべて続ける。
「だがお前は一番強いのだから当然だ。」
 反応を返さない私のことなど構わずに、一人、楽しそうに自慢げに胸を張る。
「ご主人様は、この世で最も強欲な人間なんだ。」

 魔物が”主”と呼ぶ男。それがこの城の城主であった。



 石牢には時折、場違いな来訪者が訪れることがあった。
 豪奢で華やかな衣服に身を包んだ人間達は、興味深い見世物を見るように石牢の狂人達を眺めて回った。
 恐ろしく醜い化け物を、恐れるように蔑むように顔を歪めながらも、一方で値踏みするように食い入るように視線を投げる。
 先頭を歩く男が芝居がかったような所作で片手を差し示し、神経質そうな甲高い声色で化け物達を紹介した。
 口々に嫌悪と畏れを口にしながらも、しかし誰もが目の奥に陰惨な世界への興味と狂った支配欲を、暗き光に変えて宿していた。

 彼らは自分達の事を”楽園の住人”、”貴族”、と呼んでいた。

 城主に選ばれた民のみが楽園の住人となることを許される。
 尽きることの無い富を享受し、如何なる行為も罪と咎められない。絶大な権力で他者を意のままに操り、あらゆる望みを欲するままに得る。
 ”貴族”とは強大な力を持つ夜の一族の王、原初の支配者を指す言葉。
 伝説の吸血鬼の威光を借りた、仮初の支配者達の、ここは”楽園”なのであった。



「”生命の水”・・・知っているか?」
 魔物は陶酔した表情で語った。
「彼らはそう呼んでいる…不老不死の霊薬。…人知を超えた力を人に与え、そしてあらゆる夢を見せてくれる・・・」
 人間達は我先にと争って、それを得ようとするのだという。
 全ての財産を投げ出して。
 あらゆる供物を差し出して。
 ”生命の水”こそが、人が求める”願い”の究極の形でもあるのだと魔物は語った。
 楽園の城主に飼われるこの魔物は、主の求めに応じて”生命の水”を人に与える。
 そうして魔物と契約した欲深き一人の男は、莫大な富と絶対的な力、王たる地位を得ることになったのだ。

「人間達の欲望は、いくら喰らえども尽きることがない・・・」
 声を低く潜めて、魔物はくつくつと喉に笑いを殺す。
 楽園は、あらゆる人間の”願い”に満ちている。
 ”願い”は更なる”願い”を引き寄せ、人が集い、新たな”願い”を生む。
 際限なく生み出される欲望と、それを叶える世界。
 ここは人間達が望む理想郷なのだと。魔物は満足そうに語った。


 願いも、望みも、それがどのようなものであるのか想起できない自分には理解の及ばない話だ。
 富、権力、快楽・・・願うがままに望みが叶えられる人間達が最後に求めるものは何か。
 虚ろな倦怠感と、飽くなき刺激への渇望。人が人を蹂躙する死の舞台に歓声をあげる、月下の熱狂を思い起こす。
 嗜虐的で、嘲笑を湛え、他者を貶め満足を得る。人々の顔、顔、顔。

 魂の奥底で世界の”歪み”を感じる。

 少年の姿をした魔物はそうして時折、闇に訪れては様々な外界の出来事を私に語り聞かせ、最後には決まって首許に柔らかい口付けを落とした。
 流れる命の雫が目の端で鮮やかな紅の筋を描き。色を失った灰色の視界を覆い尽くす。

 貧血の負荷に身体が軋み、朦朧とする意識の果てに

 ”死”の姿を見た気がした
















<4>

 楽園の闇に生きる”処刑者”も、所詮は人形でしかない。
 それ程長くは経たない内に、己が身体が既に限界にあることに気がついた。
 身体は鉛のように重く、視界は時折霞がかかったように歪むようになった。
 指先は土気色に変色し、朽ちた石の彫像のように固く動かない。

 見つめる視線の先で。
 ぼろぼろと。
 乾いた土塊が罅割れ、粉となって散るように、己の指先が崩れた。

 ”泥人形”

 魔物が己を呼ぶ声を思い起こす。
 確かに、その通りかもしれない。
 
 吸血の魔物の餌として造られ、喰われ、果てたら打ち捨てられるだけの、泥作りの人形。


 気がつくと魔物が困ったように己を見下ろしている。
 気に入りの玩具が壊れ、途方に暮れる子供の表情。
「いつもより早かったかな・・・」
 独り言のような呟きが地下の淀んだ風に乗る。
「どうして…壊れてしまうのだろう…何が、足りないのかな。」

 もはや身体は石像のように硬くなって、己の意思では動かすことが出来なくなっていた。
 意識も途切れ途切れに掠れ、思考と視界が繋がらない。
 鉄仮面に遮られた細い視界の範囲で見渡すと、自身の右腕と左足下が崩れ落ちなくなっていた。
「もう、お前はダメだな。」
 魔物の声が遠くに消え入るように聞こえている、気がする。
 途切れる視界の隅に、項垂れる小さな姿が霞んで映る。
 まるで、泣いている、ようだった。


「・・・早く、はやく新しいのを、造らない と ・・・
 




 意識が
 思考が

 暗闇に呑まれる。





 闇の中で。
 泣いている子供が見えた。

 癖のある翠色の髪。雪のように白い肌。
 その子供のことを、自分は良く知っている気がする。

 子供は途方に暮れたように座りこみ、泣きながらその場を動こうとしない。

 何故か、心の中を鈍い痛みのようなものが走る。

 手を伸ばし触れようとすると。
 子供は弾かれたように立ち上がるとそのまま後ずさった。


 紫色の瞳が
 闇を貫ぬく

「おまえのせいだから」

 子供は私を睨み据えながらそう言った。


「全部、おまえのせいだから」














 月夜の青白き闇。

 遠く羽ばたく黒き影。



 冷たく吹き抜ける甲高い風渡りの音。

 最後に見た景色は、暗く湿った地下牢の闇ではないようだった。
 闇夜に天を飾る針葉樹の森の影。木々の葉が擦れるざわめき。

 月明かりに照らされた視界に映るのは、打ち捨てられた”人”の残骸。
 墓場と呼べる程整えられたものではない。壊れた玩具が投げ捨てられる、廃棄場だ。
 獲物を狙う獣の唸り声、餌を漁りに訪れた鳥達の鳴き声。
 それらを何の感慨もなく認識して、己が意識のまだ残ることに僅かな戸惑いを覚えた。

 暗闇に沈み、霞む意識が滅びの最期に、何故この光景を刻むのか。
 微かに燻る疑問と言う名の、小さな灯火。




”滅びは終わりにあらず…失われたはじまりの一つに過ぎない。”

 突如として涼やかな声色が風に乗り闇を払った。
 
 蒼白き月明かりの下、霧靄の淀みの中に、白い影が見える。
 風に舞う白銀の長衣。
 翠色の髪。
 紫色の瞳。

 遠い昔。
 同じような、その姿を。
 見たことがある。自分はそれをよく知っている。
 そのような、気がした。


”わたしは、人の願いを喰らう者。”

 長身で細身の人影は、そう言って音も無く歩み寄ってきた。
「輪環の運命、淀む水溜りに小石を一つ投げ入れるとどうなるものか・・・」

 涼しげな相貌の青年は、そのまま表情一つ変えることなく目を伏せ、右手を前方に翳した。
 そして左手を掲げ手刀の形を作ると、自身の右手の平を撫でるように振り下ろす。

 血煙が宵闇の墓場に霧となって広がった。

「全ては”願い”が導くもの・・・辿り着く先に救いがあるという保障はない。」
 予言のような不思議な言葉と共に、青年は紫色の瞳を薄く細めた。
 憐憫であり、慈愛であり、崇敬でもあり、同時に祈りにも似た。複雑な感情が一瞬宿り、冷たく消える。
「貴方が光の魂を持つ者であるならば」


「ほんの僅かばかりの刻、その魂に温もりが戻るならば。何を”望む”のか・・・



 言葉が遠く、闇の中に消える。




 何か
 あと少しで、何かを思い出す

 記憶の霧の中で、感情と言う名の影が僅か動きを見せた

 その時には






 私の意識は深い闇の内に沈んでいた


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