吉田美和子さんからのお手紙 2006.07.10


前略

『夏の庭』、美しい詩集をありがとうございます。わたくしにまで送って下さったご厚意に感謝します。鯉渕という素敵なお名前が中右に変わっていてちょっと残念でしたが、もちろん中右も雰囲気のある名前です。私なんかは、なんとなく旧姓のまま吉田で書いていますが、戸籍姓と混用の日々はこんぐらがって厭になります。名前などみんな脱いでしまいたい、そのために詩など書いているのに、発表するときには署名をしなくちゃならない、その違和感から、いつまでも逃れられない感じです。

  川の中で
  兄の眼玉が暮らしているのだと思う

冒頭のこの圧倒的に美しい二行によって、この詩集は位置づけられています。きらめく夏の光、川瀬のさざめきが、息詰まる緊迫感で詩集全体を覆っている。
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Photo 小野田桂子
  KEIKO ONODA
吉田美和子さんからのお手紙を朗読するクリハラ冉
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