え 雪 融 け な そ






















雪は融けます。

































冬が来たら春は必ずやって来る。

融けてほしくないけど、必ず雪は融けてしまう。

ならば春をなくし、季節がなくなればいいと願う。

だけどそんなことはあり得ないから、

僕は季節の巡りに身を晒し、ただ雪融けを見てるだけ。

































「―――不二、俺達そろそろ」

「―――ちゃんと集中して?」


そしてまた自らの胸へ唇をいざなって、言葉を封じる。気が利かない言葉なんか、今は聞きたくない。御座なりでいいから、黙っていて。

































勢いと雰囲気に呑まれて、君はあの日理性を置き去りにした。その空間には、モラリストも道徳至上主義者も居合わせなかった。感性的欲求に左右された、本能に赴くままの理性だけが残留していた。眼鏡越しの獣のようなギラギラした目と、逞しい肢体が、見せかけでないことを知らしめた。僕の自由は封じられる。

僕が夢に見るまで望んだこと。

































「―――そんなに――急かさないで――」


今だって僕に夢中になってるくせに、僕しか目に入ってないくせに、だけど夢から覚めたように冷めてしまう君。どんなに繋ぎ止めたって、一体感を得た所で、所詮詮無きこと。

君は僕に虚しさを呼ぶ。

































まだ行かないで。

まだ一緒にいて。

心構えがまだだから。

もう少しだけここにいてね。

季節が巡る前の、備えがまだだから。

蓄えないと、冬は越せないから。

だから、待って。

































「ちゃんと、僕を感じて?」

































勢いは、人の後押しをする大きな威力を持っていて、後から人を否応無しに、我に返らせる。勢いは偉大、取り残された後の祭は愚かで矮小。

僕は置いてかれた。

































「もうやめよう」

「そう、だね」

































春が来て、

そして、

雪は融けました。

























イイワケ
やっぱこうゆう塚不二好き。そして手塚←不二経由が特に(というか逆ってウチあんまないワ)。
02.03.11