僕が話し掛けると、君はむき出しの感情をそのまま表情に投影したような顔をつくる。嫌悪感を表情に記したお手本みたいに。嫌われてる自覚を、余りにもたくさん見せ付けられるけど、だけどそんなことじゃ、僕はそうならないんだって、君もそろそろ自覚するべきなんだ。















嗚 呼 、 十 二 分 に 君 よ



「ねえ手塚」


僕は何回目だか分からない呼び掛けをした。手塚はそれだけで僕に一瞥をくれる。


「大好きだよ」


例えば、陰の広がる茂みの中。君の後姿と会話しているさなかに。たまに、不意打ちっぽく、何の前触れもなく、君に言うのがお気に入りなんだ。いつもと変わらず笑いながら近付いて、日常会話そのものみたいに、だけどやんわり言うのが好きなんだ。


「ほんとうに、好きだよ」


僕を見下ろして、何も言わずに歩き出す君が好きだよ。僕になんか気にも留めない君が好きだよ。背中いっぱいに僕を撥ね付ける君が好きだよ。


「ね、手塚」


だけど、たまに負けそうになるよ。醜態にでも汚さにでももなく、自分を可哀想に思う時、僕は駄目になりそうになる。そんな時は、喉が枯れるまで君に謝って、その真っ直ぐな身体に縋り付きたいと本気で思う。だけどそれだけはしちゃいけないと解っているから、僕はロゴスを思い出し、


「大好きだよ、大好きだよ、大好きだよ」


泣いてしまえばどんなに楽か。僕は君の前で巡らせながら、明朗に口ずさむ。悲しいほど前向きな僕は、やんわりと君に笑う。


「大好きだよ」


君は多分、こんな僕を好きだよね。





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