好きだ、好きだ、君が好きだ、それだけだ。




不二の心は決まっていた。決まってしまった。もう楽になってしまえと、自暴自棄に陥っていたから。もう考えるのは面倒だったから。時にははめを外すのも良いだろうと思ったから。


「真剣な話し、聞いてくれる?」


理由はこじ付けがましいから、本人は深く考えなかったけど、とにかく不二は突然決め、そして実行した。


「僕、君が好きだよ。」


無表情を相手に、笑ってみせた。苦笑とは違う、微笑みを見せた。すると無表情の唇が開いた。


「そうか、それで俺はどうすればいいんだ。」


視線は相変わらず相手を直視していて、驚いた様子も何も見せなかった。無反応。そのリアクションを、ある程度予想していた不二だったが、やはり驚いた、というか呆れた。淡々としたその口調は、本当にいつも通りで、彼らの会話は日常会話以外の何物でもなかった。


「―――そうだね―――どうしてもらおうかな。」


こんな時でも表情を変えない相手に、不二は腹が立った。必死の行動も、無表情に相殺され、自分が何をしても結局は何も変わらないのではないかという思いが横切ったから。腹が立った、そんな男に自分の1番の弱みを晒している自分が。堪らなく悔しくて、虚しくて、屈辱だった。相手がそれを知ってるのも不二は知ってた。だから余計に腹が立つ。


「じゃあ、好きって言ってくれる――?」
「好きだ」


その言葉の意味が分かる前に、不二は男の頬を叩いていた。後から感情が血と一緒に頭に上った。唇を噛み締めて、痛みの感じなくなった手を震わせた。悔しくて、虚しくて、屈辱で、涙腺が痛い。


「サイテー・・・ッ!」


震える声で吐き捨てると、虚しさと儚さが込み上げる。この虚無感は、男の所為じゃないと頭の中で完全に割り切っているから、余計に虚しく惨めだった。自分が初めて恥を捨てて求める相手が、それを呑み込んでくれなかった。男にとって、それだけの存在である自分が居た堪らなかった。


「最低・・・」


分かっている。自分が1番最低で、虚しい生き物であるなんてことは、不二は重々に理解していた。だからこそ不二は、その男が嫌いになることが出来なかった。だから余計に虚しさは募り―――果てしなかった。

生まれて初めて湧いた感情は相殺され、一生に一度の勇気は、不使用になった。不二はただ、ものすごく悲しかった。

 








イイワケ
手塚←不二(一方的/笑)一月とかにドドーーーっと文の更新毎日のようにしていた時の産物ですな。痛い文万歳主義とでも申しますか(何)
02.02.27