不変、腐朽せよ
手塚は握力が強いから、僕の肩にはいつもその余韻が残る。そしてその真っ直ぐで力強い目が、軽蔑と落胆の混じり合った色を以って僕を見る。唇の感触よりも、どうしてか、肩の方がやけに残って印象的。そんなこと、君は知りようがないことだね。
「やめろ不二」
汚いものを見る目より、もっと冷たい厳かな目をして。僕、君のそういう率直なところ、やたら好きなんだ。
「だったらもう、僕に構わないでよ」
僕は振り切るように、その空気を断つ。
「それができるならとっくにそうしてる」
「じゃあどうして」
「おまえが心配なんだ、不二」
躊躇いもなく言ってのける端正な語調。
「鬱陶しいこと言わないでよ、飽き飽きする」
「不二」
手塚が僕に掛ける言葉はいつも、僕を奮い立たせるには十分だった。だけど、だから。
「僕のこと見てないくせに、見てる振りするの、最低だって早く気付けよ」
だって辛いんだ。悲しんだ。期待する自分がほんとに嫌なんだ。募る期待は重過ぎるんだ。だからそんな素振り、瑣末でも見せないで。裏切って、なじって、見限って、貫いて。付け入る隙なんて、与えないで。ねえ手塚、無音の声に、気付いてよ。
俯いた顔を上げると、手塚はまだ真っ直ぐに僕を見ていた。
「仕方がないだろう」
嗚呼、弛緩する。ずるい、ずるいよ手塚。そうやって、君はそんなにも容易く僕を縛るんだ。僕を躍らせるんだ。嗚呼手塚、そんな顔で僕を見るなんて、あんまりだ。どうにかしてよ、堪んないよ。こんな心、いらないよ。
「馬鹿、君は馬鹿だよ自覚してよ」
僕はまた、君の唇にかぶりつく。性的欲求だけなら、簡単に消化できてしまうのにね。いつまでたっても、僕は消化不良で顔が歪むよ。
「大嫌いだよ、大嫌いだよ、大嫌いだよ」
苦しいよ、苦しいよ、苦しいよ。
こんな僕は悲しいよ。
イイワケ
なんか久々に塚不二書いた気がする。ちょっといつもと違う塚不二な気がします。しかし結局報われない人たちなので良し。
04.03.31