ガッド ビ ウィズ ユ


「もうやめよう」


主語がない暈された言葉が、詰った口調で吐かれた。


「もう終りにしよう」


問い質せない主語は、僕が良く分かってる名詞で、胸がグッと締め付けられた。


毎 日 が 去 っ て い く 音 、 ガ ラ リ 。


もう嫌いなの?何でかな、僕は今になって色々思い出しているよ。匂いとか、癖とか、ほくろの場所とか、手の湿り気とか。少し堅めの髪質とか、お気に入りの写真とか、寝息とか。いっぱい、いっぱい、君が僕だけにくれた沢山のこと。でもそれは、過去になってしまうの?好きとか、そういう類の言葉は、効力を失ったのかな。


「何言ってるのか分かんないよ」


意味を分かってない振りして笑ってみた、本当は知ってるけど。だってだって、僕は君を止める方法をまだ知らないから。


「不二、終りにしよう」


儚 い 望 み の 綱 、 プ ツ リ 。


ちゃんと付いていかなきゃ、置いていかれちゃうのは知ってる。この人は簡単に僕を置き去りに出来てしまう人だから、だから、だから、だけど、


「まだ好きなのに、そんなの嫌だよ」


あがく、もがく、だけど抜けられず、僕は置いてかれる。君は1人行ってしまう。そんなことは分かってる、僕は君って人を分かってる、だけど、だけど、だから、


「    」


無 音 の 君 の 肉 声 が 、 ポ ロ リ 。


さよならの合図が投影された後姿を、僕は縋らないし、呼ばないし、見送らない。


「待ってよ」


それでも君を求める肉声は率直で、だけど肉体は弁えていて、無骨な僕がいて、そんな姿に我に返ってはっとする。彼の嫌いなもの―――それは潔くない物。


僕 の 上 辺 、 サ ラ リ 。


「待」


それ以上言えない僕は、最後まで呪文を呑み込んだまま。そして悲しい深みにどんどん嵌まる。


「嫌だ、僕は君が、まだ、僕は、」


自 分 の 声 に 、ズ ブ リ 。


僕はまだ言えない。












イイワケ
ザ☆別れ話(笑)もうイイワケらしいイイワケは書かないことにします、多分。深読みとかして下さい、なんつって(なんて不可解な文なんだー!)
02.03.29