思うが侭、怖い程、遠退く



言わないよ。
だって、子どもじゃないんだから。




「や、跡部」
「…何でおまえがここにいるんだ」

帰り道で待ち伏せなんて、いまどき粋じゃない?制服のまま氷帝の前で待つのは中々目立つってしまうものだから、一応君が通る帰路で待っていた。ほら、名簿ってどうにもなるんだよ、だからあんまり俺が住所知ってても不思議はないってこと。こうゆう時、君が部活で帰り遅いっていいもんだよ。だってほら、こんなに暗いと人気もないし、なんてお誂え向きな頃合だろうね。思わず笑ってしまいそうになる俺を知ってか知らずか、1ヶ月振りに会った人は、俺を見るなり暴言と、明らかに不快そうな目で俺を睨みつけた。うん、表情はまだ読み取れる暗さ。ベストだ。

「…もう会わないって、言っただろうが」
「俺バカだから、言われたことなんかすぐ忘れちゃうの」

エクボつくってみせると、目を逸らされた。何を考えてんだか手にとるように分かっちゃうけど、黙っててあげる。

「跡部、久し振りだね」

ゆっくり、柔らかく微笑みながら言うと、跡部の顔は険しくなった。不快の表情とは違う、くぐもった顔。今どうゆう顔を俺にさらしてんのか知ってるの?本当に、君はなんて素直。

「跡部に会えて、嬉しいよ」

俺の言葉に著しく反応してく姿は、本当に素直。もうこのざわめきも、何も君には届いてないでしょ。余裕も、ないでしょ。ああ跡部、可愛いね。

「跡部」
「近寄んな」
「やだ」
「…っ、来んな」
「なら殴れば?」

壁際に追い詰めて、進路を壁に付いた手で遮る。捕まえた熱い跡部の手首は、僅かに震えた。それは小さな拒否の表れ?こっちを見ないで俯いてるのは、目を見て俺をねじ伏せられないのを知ってるから?跡部も色々学習してる。だけど学ばない君。

「つかまえた」
「離せ…」

付け入れられる隙を見せたら駄目だよ?付け込まれちゃうよ、俺みたいなのに。

「跡部、ドキドキしてるでしょ。熱いし、脈すごいし…ねえ跡部、どうして?」

黙す跡部は震えてた。許された指先だけが行き場をなくして動いてる。爪まで綺麗なんだ、跡部は。

「おまえはっ…」
「うん」
「そうやって俺で遊んでるだけじゃねーかっ…」
「うん」

わざと肯定してみると、跡部は勢いを止めた。そして一瞬悲しそうな、弱い顔を晒した。そんな顔も出来んじゃない君。妙に喜んでる自分を客観視してると、目の前に顔を強張らせ、怒りという主張で顔面いっぱいに広げていた。

「ふ…ざけてんじゃねぇよっ。もう2度と俺の前に現れんな!」

嗚呼しまった、逃げられた。

「いじめすぎたか」

ああ、俺も学習していない。






イイワケ
悪い人×被害者の図(笑)千跡はこんな感じが良いのかと。
03.01.13