例えば。


「好きだよ」


言ってみる、無感動の君がいた。

例えば。


「嘘じゃなく、好きだよ」


目を見て放つ、僕を見ない君がいた。







どうしても、


「ねえ」


どうあろうとも、僕は、


「こっち向いてよ」


よくは分からないけど、多分、


「欲しいんだよ」


一人であることは知っているんだけど。
僕は耐え兼ねて、おねだりをした、
本当はどうしたって貰えないなんてことは百も承知で、

でも子どもって、いやに正直で厚かましいから、


「僕を見てくんるなら、死んだって構わない」


自己主張をする、


「君が欲しいよ。君の遺伝子一粒貰って君のクローンが作りたい」


気を引きたくて、話し掛けて欲しくて、僕は必死になって、


「じゃあ俺が出来るまで15年かかるな」

「それでもいいよ、君が得られるなら」


なんとか、なんとかして、


「君という思想、気質、容姿、声色。君と全部同じ人が欲しいよ」


君にそぐわしくなりたいと思うのだけど、


「馬鹿だな」


僕の好きなその声を含め、


「俺と同じなら、俺はお前なんか好きになるはずがないだろう」


君は思った以上に君だから、
僕は本当に自己暗示のような黙示通りみたいだ、
あがこうにも何だか抵抗できなくて、
そんな窮地に僕は追い遣られたけど、

何でもない、何でもない、
大丈夫、大丈夫、


(微笑の端に、眼鏡越しに余す嘲笑よ)


「いい加減にしたらどうだ?」


だって僕には何もない。




イイワケ
昔書いた自作イヌ不二(5つくらいまで続くやつ)を読み返したら、むくむくと何かがもたげてきたので、という産物でございます。 イヌ←不二で、本心を見せないイヌが好きでありますよー。
03.07.15