case 1
不意と不信
「好きだよ?」
「不二が?俺を?」
本当に唐突に、不二は言った。だけど困惑も一驚する様子も見せず、間髪容れず乾は応えた。
「あは、その顔は信じてないね」
「信じると思うか?」
「思わないね」
「だろう?」
不適に構ええる不二に、乾は身じろぎもしない。むしろ余裕すらも窺えた。その証拠に、彼はノートへの執筆を中断しなかった。その応対にはある程度予想していたものの、少なからず不二は驚いた。だけどやっぱり彼もまたすぐさま返答をした。
「どうして信じないの?」
抑揚のついた、少し軽めに笑ったような声が教室に凛と響く。夕焼け色の赤々とした明かりは何もかもを染め上げていた。机の上に腰を掛ける不二も、1つ席を挟んだ自席でノートに向かう乾も例外ではなかった。
「そんなの簡単だろう、不二は絶対好きなんて言うはずないから、に尽きる」
たまにカツカツとシャーペンがノートを掠める音を立てて、乾はゆっくりと、だけど淡々とした口調で話す。
「心外だな、根拠は?」
「惚れた弱みに惑わされたり、それを本人に悟られるのは愚の骨頂なんだろう?」
「ふふ、まあそうかもね」
不二は空に投げ出された自分の上履きを眺めながら、心なし嬉しそうに笑った。
「だからおまえは人を仮に好きになったとしても、決してそれを告げるような真似はしないよ、打算的だから」
「じゃあその打算すら数えるのも馬鹿らしいほど他人に惚れていたら、どうする?」
「別にどうもしないさ」
飽く迄一定のリズムともとれるテンポで、乾は規則的に応答を繰り返す。不二はやっぱり笑っていた。
「そりゃそうだろうね、まあいいよ、また改めて言うから」
「懲りもせず?」
おどけて乾が尋ねると、不二は今度は乾を見た。だけど視線は返ってこなかった。
「僕が根性曲がりだって知ってるでしょう?」
「ああ知ってる」
「だったら僕の行動パターンぐらい、もう読めてるんじゃないの?」
「生憎おまえのだけは正確に読めた例がないよ」
乾はノートを捲る。その時だけ小気味良い音は止まる。そんな時、乾は少し落ちた眼鏡のフレームを指で掴むとグっと上げる。
「そうだったね、じゃあ君の御期待に応えて、君の予想に反する行動をとることにするよ」
誰にでもなく意味ありげに笑う不二は、やっぱり乾を直視した。
「それは困るな」
困惑したセリフを幾等吐いても、乾の表情は陰ることはなく、手の動きも目線も変わることはなかった。
「そんな無粋なセリフ、楽しみだぐらい言ったらどう?」
「それはすまないな、予定を狂わされるのは性に合わないんだ」
「ふふ、じゃあまたね」
不二は机から音も立てず身軽に降りると、そのまま乾を見るでもなく教室のドアを開けて出て行った。乾は何事もなかったように、黙々とノートに書き綴っていた。
n e x t
イイワケ
まさか、まさかアタシがイヌ不二を書く日が来ると誰が予想しただろうか!いやしない!もーねー、ヤバイ、コレは楽しい!ハーマーりーそーうー!!(笑)書きたいカップリング沢山あるのにイヌ不二を書くとはー!それもこれも某超越友のせいです!(笑)てかコレ続いてしまいますので、どうぞ温かく見守ってやって下さい。
心機一転するはずだったのに。ストーリー性の有る文を書こう書こうと思っていたのに。有限実行有らず!!で、でも微妙に頑張って…る、というか頑張りまーす…アハ、アハ。
02.03.14