「じゃあ何でもするのかよ」

売り言葉が続き、上昇する成りゆき。
買い言葉だって産まれるよ。







「なんだってするよ」
「はッ、何でもすんのかよ」
「俺にできることなら、なんだってするよ」
「じゃあ死ねよ」
「うん」

ハサミに手を伸ばし、切先を首に目掛けて振り下ろす。
身体に重みが衝突して、金属音が床に転がった。

「ばっか野郎…!」

声が震えてる、急に動いて息が切れてる。
なんて顔して俺を見るの。

ハサミと共に床に散らばった俺に、羽交い絞めしてるみたいな格好。
力強く見開いた目が首元を捉える。
首に意識をやると、鈍い痛覚と、液状を感じた。

そして、首元に雨が降ってきた。

俺なんかで泣かなくていいんだよ。

「(声にならない、震えた息が零れる音)」

俺の中の亜久津と亜久津なかの俺と。
どっちも違ってる、同じじゃないのも知ってる。

だけど、その涙の重みだって、俺は知っている。










イイワケ
安久津は自分なんかで傷付けて欲しくなくて、千石は自分なんかで泣いて欲しくないという話。 安久津は千石に「信じらんない」なんて引く言葉は言わない。 千石は安久津が良いようになるなら何だってしたいけど、相手の為にはならない恋愛下手だったらいい。
06.03.11