ら は か に 読 を




「ねえ、言っていいんだよ?」

「何がスか」


僕は笑ったまま小さくため息をついた。


「センパイこそ、言ったらどうなんスか」


僕らは意地っ張りで負けず嫌い。でもさ、お互いそうゆう所が、


「何を言うの?」


越前くんは口だけで笑うと、貸し出しカウンタに手を伸ばして突っ伏した。僕は頬杖をついたまま、真ん前のその光景を見守った。

休み時間終了間際は、決まって人足が減る。僕はその辺りの時分の木曜日、会いに行く、図書館へ。


「僕、図書館の空気が好きなんだよね」


突っ伏したままのツムジを眺めながら言うと、越前くんは首だけ起きて目を細めた。


「今日は何読んでんスか」


視線の先には、僕の肘の辺りで開かれた文庫本。


「サン・テグジュペリ」

「サン―――?誰スかそれ」

「図書委員なら自分で読みなよ」

「・・・ウース」


コテン、頭を腕の上に置いて、指と指を組んで、ググっと手と背を伸ばして大あくびを1つ。くあ、とか言って耳を腕に付けてカウンタを凝視。越前くんは、指先を伸ばしては逸らして落ち着かない。


「・・・何で毎週木曜日に来んスか」


今度はカウンタの上の返却日コーンに視線をずらす。


「別に木曜だけ来るってわけじゃないよ、大体毎日来てる」

「1人でスか」

「英二は図書館嫌いだから」

「そっスか」

「うん」


越前くんはチラリと僕の目を見て、すぐに時計に目をやった。僕が思わず笑ってしまうと、図書室が揺れるように本鈴が鳴った。


「・・・じゃ、また」

「うん、放課後ね」


今日もおあずけなもんだから、来週の今日、僕は図書室を訪れる。












イイワケ
3万アンケート企画:第2位「屋上」「甘いモノ」「リョ不二」「両思いだけど、お互い黙してる」というののピカ子の限界です(笑)リョ不二の甘いってのは難しい!!(涙)
02.05.30