破壊以外の守り方を知らなかった。
理 由 が な い
か ら
恋 な ん だ
「好きだよ」
主語がないから、何のことを言ってるのか分からなかった。
ただ、屈託のないその顔が楽しそうで、僕も思わず笑顔になった。
「好きだよ、不二」
いつもと違う声色が、いつもと違う意味だと告げる。
どうすればいいんだろう?どうしてこんなに手が冷たいんだろう?
* * * * * *
朝からイライラしてる。訳もなく、稀に起こる現象。理由は考えても見付からないって知ってるから、考えることは当の昔に放棄した。とにかくムシャクシャしている。何がどうでもいいような、そんな気分。
「弟とケンカでもした?」
エージだけは目聡かった。僕の変化を見逃さない。なんでこんなに不思議な現象が起こるんだろう。
「してないよ」
「そお?じゃ、生物の点数悪かったんだ?」
「良かったよ」
何でなんだろう、僕は僕でいるはずなのに。どうしてエージは僕を見付けてしまうんだろう。
「僕、機嫌悪そうに見える?」
「うん」
「どの辺が?」
「見てりゃ普通に分かるって」
見てれば、だって。簡単に言ってくれるよね。何考えてんだか分かんないって、いつも言われる僕なのに、エージは見ていれば僕が分かると言う。
「姉さんだって気付きやしないよ?」
「だってオレ、不二がイライラしてる時のクセ知ってるもん」
不思議で仕方ない。自分でさえも知らないことを、エージは知っていると言う。挙動に表しているつもりもないし、むしろそれを出さないように極力注意を払っている。なのにエージは僕を見付けてしまう。これは賞賛に値する。
「オレ、多分不二のことは全部知ってるよ」
不意打ちを食らった気分。一瞬ドキリとした。それが嘘に聞こえなかったから、胸が変な具合に跳ねた。相変わらず屈託のない笑顔を携えているにも関わらず、僕にそれを与えたのは多分声だ。
「多分、だけどね」
平素のエージの声色とは違う、凛と通る音。それだけのことなのに、僕は心の中で距離を置いた。ようするに、賞賛に値すると同時に、脅威にも値したってこと。そしてそれは、まどろっこしい煩わしさ、面倒くささと同質でもあるんだ。
* * * * * *
いつもと変わらない関係、それは毎日続く。普通のクラスメイトとしての関係は順調。なのにどうも微妙な感じがする。違和感を感じながらも、毎日を毎日として送る毎日。思えば、この状況を打破したいと願っていたのかもしれない。
その願いが叶ってしまった日、それはエージによってもたらされた。
「好きだよ」
日差しが気持ちい屋上で、お弁当を食べ終えて2人でいつものようにぼうっとしてた。僕はひやりとした地面の感触と、素肌の暖かさを一身に感じていた。隣を向くと、エージはあぐらをかいてい微笑んでいた。つられて僕も笑ってしまう。この環境でいたかった訳じゃないけど、でも、なんか、そう思わなければ良かったなんて後悔してる訳でもないけど、それでも。
「好きだよ、不二」
笑ってから気付いた。その微笑が、僕と同質のものであること。エージは僕に気付いたけど、僕はエージに気付かなかった。そういうことなんだ。
冷えていく指先が、嫌悪感を誘う。
「好きだよ」
壊れた上等のラジオみたい。音声は生きてるけど、リピート機能が暴走してる。
どうしようか?この状況は、一体どういうことなんだろ。ただの友達の1人として接してたのに、何がいけなかったんだろ?距離は保っていたはずなのに、素顔は隠していたのに(それってつまり騙してたり、信用してないってことなのに)どうして?何がいけなかった?何が切欠で起因だった?
「不二、今イライラしてるだろ」
暗くも怖くもない、壊れたラジオから流れる肉声。首を傾げて切なげに口許を緩めてる。何で笑ってるの?
「ごめんね不二」
「気持ち悪い」
“理由がないから恋なんだ”
軽く同意したくなかった。
イイワケ
アハハ、最初は多分切なげ3-6を書きたかった・・・んだと思ひます(汗)
それが何を血迷ったか、ブラッキー降臨です。久々にダークモード期です。
が、意味不明ですネ★自己完結の世界へ溶けてます(笑/や、笑えない)
要は、クラスメイトレベルの二人がいまして、菊→不二になったと。
ほいで菊ちゃんがこくりまして、不二的には他者に側に寄られるのが嫌、というか、
身内っぽいのを作りたくない、自分の聖域を侵されたくない的精神があって、
菊ちゃんから自分を守りたかった・・・みたいな感じだと思いますーーー!!
そして自分を棚に上げてる不二さんですー。
菊ちゃんも不二と同様で、嫌なことを隠すモードなものだから、
菊ちゃんも笑うのです。でも不二はその意味が分かってない、みたいな。
(嗚呼、なんて分かりにくいんダ!!)