「肌、白い」

思っていたことをポロリと口に出してしまうほど、それは白く目の前にあった。
























シャツの袖から伸びた細い腕は、本当に白くて、明かりのついてない教室に、ぼんやり浮かんでるみたいに白かった。


「やけないね」

「やけるよ、すぐに戻るだけで」


白い手が唇の前まで上がって、横に2、3度振れた。そしてまた机の上へと降り、その隣りで転がるシャーペンを掴んだ。紙の上を走る。それを無意識に目が追う。


「ホクロとかないね」

「あるよ、隠れてるだけで」

「どこに?」

「こことか」


後頭部を辿って、背中側の首を摩るように触る。髪がぺしゃんこになる。


「首の裏?」

「襟首ね。ちょっとおっきいのが1個あるよ」


チリ、と疼いた。ジリ、と焦げた。


「見てもい?」


正直過ぎる言葉が出て、一瞬自分でも驚いたけど、でも撤回なんかしなかった。


「やだ?」

「別に見せるようなものじゃないでしょ」


手が、思いあぐねたようにシャーペンを持て余す。これは知ってる、困った時の、君の癖。


「見たい」

「何で」

「見たい」


こうゆう時、押しに弱いってことも知ってる。


「・・・じゃあ、めくれば?」

「そうする」

「・・・っすぐったい」


身を捩って、声で笑う。愛しい仕草。


「髪触っただけじゃん」

「首触るからでしょ」

「じゃないとホクロ見えない、あ」


透き通るような白の上に、あった。見付けてしまった。


「ね?あったでしょ?・・・何、どうしたの英二・・・?」

「・・・
ごめん、ちょっとだけ、こうしててよ」


君を知れば知るほど、遠く感じ始めてしまうのは何故なんだろうね。










イイワケ
知りたがり菊ちゃん。知らないことが許せないのね。だけど知らないことがあり過ぎて、なんかもー大変だわって話っぽいよ。
02.04.29