寒空の疑惑を信ずる



「真面目に聞いてね、おれ 不二を好きだよ」


―――長引いたHRの後の、部活動の後の、風の冷たい夜の道。
こんな寒い日はさぞ星がよく見えるだろう。
空を見て、愕然とした。

住宅街のビルとか屋根とか木々の、
その後ろに広がる空が。

まるで合成みたいで、
空の手前の物が浮かんで見えて、
違和感、見上げた空に、その言葉を与えられた。

間違いなく本物なのに、嘘っぽく見える。
この空は本当。
星だってたくさん瞬いてるのに。
これはちょっとショックだよ。

本物を間違いと認識してしまう視覚、
視覚障害を起こしてるに違いないから、
これに頼りたくなくなる、気も起きる。

何度見たって、この空と物との関係性は、
テレビの中にあるものみたいで。

メディアに侵された若者の視覚障害?

いやいや、そうじゃない。
多分、そうじゃないんだ。

たとえるなら、
高級な料理を食べて 「これは安物だ!」 と言うような。
いやいや、これもそうじゃない。

色即是空?空即是色?
全然分かんないし、
現実の空に、いつまでたっても違和感は遠のかない。
北斗七星だって見えてる。
天体望遠鏡だって欲しくなる。
吐く息は白く、晒された手はかじかむというのに。

疑えないものを疑ってしまっても勝ち目はないのに。

目線を下げると視界に入る、その姿は、
本物なんだろうか。

この目を信じたらいけない。
いけない、こんなにも嘘っぱちだ。

だからここにいる不二は本当はいなくて、
だから何も喋ってくれないんだ。

決してあの言葉のせいじゃなくて、
ここにないから何も喋らないんだ。


痛くなるほど手を握り締めながら、不毛なことを、考えた。









イイワケ
言いわけ菊ちゃん。ええ、だって菊→不二大好きですから★ 現実を受け入れるしかない菊ちゃんです。
書いてて一人称を使うのを避けてたけど、何でだったか忘れたぜ(セリフ以外でね)
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