御 託 並 べ ど 結 局 然 り




随分と久し振りだ。鼻水は出るし、目は痒いし赤いし腫れてるしみっともないしですげーことになってるし。この分じゃ、明日は自慢のおめめちゃんはさぞかし腫れぼったい、悲惨なことになるんだろうね。そう思うと自分が酷くバカバカしく思えて少し落ち着く。だけど止まらない、涙涙涙。乾いた涙の跡をまたそれが際限なく濡らしてく。咽る。止まらない。咳き込む。大きく咳き込むと、喉の奥が痛くなって、可哀想な音がその辺から聞こえてくる。痛みながらまた咽る。ゴボゴボってゆう咳をする。涙とさっきから口にたまってた、唾液やら痰やらが充満して相当きもい。


タオルタオル、放浪者みたく歩いて、辿り着いたのは洗面所じゃなくてキッチンで、タイルが素足に気持ちくて、それが何故かまた涙腺を刺激した。全てのものが涙を促す。困ったね、力が抜ける。キッチンの水道の前に掛ってたタオルをホルダーから抜いて、顔面にグシャっと掴んで宛がった。鼻をかんだ。開けないようにモソモソ畳んだ。涙はいつの間にか止まってて、一気に疲れがわいてきた。収納棚を背もたれにして、床に座り込んだ。じんわり、床に触れた個所から冷たさが身に染みる。落ち着くと、今度は虚無感が襲う。わざとらしく大きなため息を吐いてみると、余計に増した。だけど喉乾いてるなあって思う気持ちのが強くて、冷蔵庫を物色するため立ち上がった。涙と同じ成分で出来てんのはポカリだっけ?だけどウチにはンな気の利いたもんはなくて、結局水道水をたらふく飲んだ。ぬるくてまずくて笑ってしまった。


バッカみたい、てゆうかそれは間違いないんだけど、赤い目の奥には君の姿。眩い金色を乗せて、のらりと振り向くズルイ君の姿。俺を待たない君の姿。かけらの躊躇いもなく行ってしまった君の姿。


「じゃあな」


また明日会えるような軽いセリフだけ残して、何より俺を残して行ってしまった君の、いつもの後姿。そんなもの残してどうするの。思い出とかって別に欲しくないわけなんだよね。俺、欲しくない、欲しくなかったよ、ねえ。


「バイバイまたね」


倣って俺も軽く言った。その軽さが、今になってバカみたいに駄目だったって気付いた。何で俺、普通に見送ったんだろ。何でだろうね。それがドンときて、泣いた。泣くしか出来なかった。どうにもならんかった。駄目だった。だから泣いた。












蘇る記憶は、
別にどこもキレイじゃないけど。












思い出の断片断片に、散らばった君らしさが浮上して、どこを思い出しても君らしい君がいて、何かもう、声に出して笑えたら晴れるかもしれない。


「・・・・はっ・・」


だけど、声らしい声が出なかった。ため息の延長線上みたいなモンしか出なかった。ほら、それだけのことなのに、何でだろうね、また鳥肌発生。エンドレスだ、開くのも億劫な目が、また潤う。


「・・・・はっ」


落ちる髪をかきあげて、そのままグシャってした。大きくい気を吸った。喉が震えてるのが分かった。辛い。もう辛い。


「あっ・・・くッ」


声を出してみたって辛い。バカみたいに泣き叫んだったって辛い。何の気休めにもならない。モヤモヤが治まるわけでもない。だけど仕方ないから、そのまま泣いた。やっぱり泣くことで何かは向上してるのかもしれない、なんてほんの少しだけ微妙に思ってみる。












自問自答の果てに、
当たり前のようにあった答え。












何で、今頃気付くんだろう。どうして今なんだ。いっそのこと知らないままでいたかった。なのにどうしてだ。どうしてだろう、こうゆうのって、なくして初めて気付くってやつかな?不思議だねえ、そんなの俺には絶対縁ないと思ってたのに。分かんないねえ、ほんとに。


「・・・ヤんなるよなあ、ったくさあ・・・」


だけど辛い頭は、自然と空の向こうの君を考える。辛い。少し前は、似たもの同士とか思ったこともあった。けど、違うだろ、俺たち。












空の向こうの君の顔は濡れてない、
根拠のない確信があった。












14年生きて、やっとボクの未来は定まった。自問自答も解決した。だけど相も変わらず前途は未開でどうしようもない。


成長せずに、俺は生きてる。さて、君はどうですか。



















イイワケ
亜久っちゃんを思って泣くキヨを書きたかったの!それだけ!てか亜久っちゃんて留学したんだよね?
02.07.08