今まで抑えてきた物が、はち切れんばかりで苦痛です。

だから願い事を唱えました。

それは汚物を排出する様な、自然な行為でした。


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彼方の奏でる音は
上等な植物塩基
(ジ アクティブ)





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迫る脅威に怯えている。
















僕が2年かけて築いた地位。それは揺るぎ無いものだと信じていた。絶対不動なものだと疑わなかった。なのにそれは僕がただ楽観視していただけで、現実は僕の待ったなんか聞いてくれなかった。怖かった。彼と戦った者はことごとく敗れ去っていったから、次は自分の番ではないのかと思うと、どうしようもないほど怖かった。あの不遜な笑みを投げ掛けられるなんて、想像するだけで嘔吐感が込み上げた。だけど僕はそれでも去勢を張り続け、彼と合う度に微笑み、彼と合う度に声を交わした。何でもない振りをし続けた。

目を合わせるのが、見透かされてるようで怖かったけど。


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「呼ばれた者からコートに入れ」


瞬間、本当に死んでしまうかと思った。そのまま器官が停止してしまうかと思った。


「まずはお前達からだ」


恐れていたこと、一生遭遇したくなかったこと。僕は君と戦いたくなかった。僕らの間にどれほどの差があるのか、そんなもの知る機会なんか欲しくなかった。脅威を確実にするのが怖かった。逃げてしまえばどんなに楽か、本気で思った。


「倒しちゃってもいーんすよね?」


冗談になんか聞こえなくて、眩暈まで襲う始末。


「おてやわらかに」


でも臆病な僕は逃げることも出来ず、声が震えていた。


「バケモノ」


彼は僕をそう呼んだけど、でも―――僕は彼に勝てた。今日は勝てた、でも明日は分からない。確実に至近の僕ら。彼も今日そう感じたに決まってる。彼は本当に楽しみながら僕に向かってきた。それに比べて僕がどれだけ恐れながらプレイしてたか、どれだけ死に物狂いだったか、どれだけ虚しかったか、どれだけ、どれだけ―――羨望の対象である彼に見られるのがどれだけ恥辱だったか。

もう、どうすることも出来ない状況。


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ある日、彼がいつもみたいに僕を見ていた。でも彼は困ったように微笑んだ。何、その顔、その目。馬鹿にしてる?何でその程度でナンバー2なんだって思ったの?嫌だ、こっち見ないで、僕を見ないで、笑わないで。


「先輩」


避けるように座っていたのに、背後からの呼び掛け。顔も見たくないのに、どうして僕を呼ぶの。立ち上がって人の輪の中へ紛れて行った。君を防ぐ愚かな対処法。君を傷付けてでも、僕は僕を守りたい。君から遠のきたい、君を見たくない、君の存在を認めたくない、嗚呼もう限界―――

君がいると、どんどん自分が醜くなっていく。


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「君がいなきゃ良かったんだ、君が、君さえいなきゃ、君」


切欠は何だったか、そんなのもう忘れた。けど端を発した言葉は留まることを知らず、垂涎のように際限なく零れる。


「消えてよ、僕の前からなくなっちゃえ、消えちゃえ、消えちゃえ」


恥ずかしさとか自尊心とか、そんなのも忘れた。欲求と呼ぶのも厚かましい願望充足。ただただ吐露した。


「消えて、今すぐ消えて、嫌い嫌い、君なんかいらない――」


涙を分泌する眼球は弛緩し、目に写るものも欲望に忠実に成り果てる。

君の姿はもう見えない。


「嗚呼、もう死んだ」


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君の姿が消え去り、随喜する僕がいます。

それでも依然と残留する不安神経。

だから、僕ら以外の全て退いて下さいと願います。

未だ僕は願い事を唱え続けてます。



















イイワケ
えーっと。まぁ王子は先輩好きだから慣れない笑顔を浮かべてみたんだけど、不二にはそれが嘲りに見えました〜と。そんでプツーンと切れちゃったよ不二さん!みたいな。しまいにゃ王子の姿も見えなくなるまで壊れちゃったよーと。でも王子は消えたけど、まだ現れない脅威に怯えてるーと。相変わらず暗い話です(笑)
02.01.24