冷めた熱を帯びた君の体温に触れる度
「何見てるの?」
「なんも見てへんけど?」
「つまらない?」
「別に」
不二は忍足が好きだった。孤高に颯爽と立つ、冷静で、あまり他人に好奇心を抱かない所が妙に好きだった。忍足もそれなりに不二に好意を持っていて、いわゆる彼らは両思いで、だけどお互い報われたことがあるなんてこれっぽっちも思えなかった。
「隣、座ってもいい?」
忍足は居住まいを正して、不二が座れるだけのスペースを空けた。
「ありがと」
不二は忍足の隣で体育座りをした。両手で自分の足を抱き、顔を膝にうずめて。忍足は、その様子を肩越しに見受けた。俄に広がる波紋。
「え、何?」
不二の小さい身体は、忍足の胸に、肩になだれ込んだ。忍足が不二を自分側へ、力任せに引き寄せた結果だった。
「―――オレがおるやろ」
珍しく、低い声が真剣に囁く。不二は全体が良く呑み込めていなかったけれど、その声で十分だった。
「自分の足抱えんでもええやん」
不二は全身を忍足に預けたまま、目を閉じた。心地良い低音が、やたらと嬉しかった。
「抱き付きやすいモンがおんねんから」
忍足は不二の痩躯を抱き締めた。抱き付いてるのは君のほうじゃない、暖かい体温の中、不二は1人そう思った。