ほうっておいても熱くいて


コンビニから出て、自転車に向かった。カギの掛かってない自転車の、座る所が黒光りして綺麗に見えた。キラキラしてて、思わずそこに手を触れた。感じるより先に、手を離した。


「何しとんの自分」

「ん、コレ熱かった」


忍足がアイスの2つ入ったビニールを片手に持って、コンビニから出てきた。僕は熱くなった指先を、フーフー吹いた。


「夏やからそら熱くなるやろ」

「ウン、そうみたいね」

「ほな不二くん、後ろ乗って下さい」

「はい」


自転車を走らすと、忍足のちょっとモサっこい黒い髪がなびいて風に乗る。僕は後に横座りして、腰らへんに手を回して、忍足くんの背中に頬を埋める。シャツが少しだけ湿ってて、彼の匂いが僕を包む。日は高く、暑いけど、忍足くんの背中に密着してしまう。暑いからって離れると、何かもったいない気がするんだね。僕ってせこいから、もったいないこと出来ないの。


「おまえ知らんかったんやろ、自転車乗らへんから」


風と一緒に忍足の深い声が聞こえる。自転車が強く揺れるたび、僕は強くしがみ付く。


「夏はほっとくと、サドル熱くなんねやて」


僕はふと、思いを過ぎらす。


「冬は?」

「冷える」

「そっ、か」


鉄橋の下に差し掛かると、影が出来て急に涼しくなる。その清々しさは、後になってじんわり爽やかに押し寄せる。ね、今くっ付き時だね。僕はぎゅっと頬を擦り付ける。


「夏がいいね忍足」

「何が」

「羨ましい」

「何やそれ」


忍足は声で笑う。


「ねえ忍足、アイス溶けるよ。もっと早くこがないと」

「ほなしっかり掴まっとき」


僕はしっかり忍足に掴まった。離れていても、変わらずいようね。僕は小さく呟いた。




イイワケ
中々会えない二人だから、不二は結構心配してんのさってお話。忍足くんはムッツリだと思う☆最後のセリフはわざとよ(笑)
02.06.07