いやだ。
 いやだ。
 どこにも行かないで。

 ここにいて。
 ここにいて。
 どこにも行かないでよ。

・ ・ ・

 おぼろげが定まっていく、視界の中には天井。
 頬の感覚は良好。
 目尻から零れるものを感知する。

 うんざりする。
 照らされる前に、忘れなきゃならない。

・ ・ ・

 「土方さん」

 土方さんは振り向くこともしない。

 「お嫁に行ってしまうの?」

 だけど入れたての茶を飛沫にしてくれる。
 そして口元を手の甲でぬぐいながら、顔を歪めてくれる。

 その後に、続く言葉も知ってる。
 そのくらい、僕らは一緒にいるね。