「佐伯」

呼ぶ声が、

「久し振り」

髪の揺れ具合が、

「元気だった?」

ほんとっぽい笑い方が、

「聞いて、今日僕に話し掛けてくれたんだよ」

躊躇しない発言が、

「僕すごい嬉しくて」

無邪気と純粋さを兼ね備えた性質が、

「誰に話し掛けられるより、1番嬉しいって実感した」

貪欲で排他的な思考が、

「君に話し掛けられる比にもならない」

真っ直ぐに、でも歪曲されたものが、

「佐伯」

ねっとりと囁くその音が、

「ねえ、何も喋らなくても、いいんだよ」

俺を瑣末にさえ扱わない君が、本当に。
本当に。

04.02.27