送信電波の発生

レーダーの送信電波はマグネトロンによって発生する。家庭用の電子レンジが連続波(実際には商用電源の半サイクル間)であるのに対してレーダーでは1000:1程度のパルス波を用いる。例えば幅1μ秒のパルスを1m秒ごとに送信のような形での送信である。従って平均電力が1KWでも尖頭電力は1MWのようになる。

この送信回路は概略下図のように構成される。

トランスL1で生成された高圧の交流はガス入り整流管で直流にされてキャパシタC1、C2を充電する。ここで水素サイラトロンにパルスを入力するとキャパシタに充電された電荷は一瞬で放電し、トランスL2に大電流を流すのでその2次側に接続されたマグネトロンに高電圧、大電流の直流パルスが印加されてマイクロ波が発生する。C1、C2の電荷がなくなるとサイラトロンの放電は停止し、再び充電が開始される。

日本のレーダーではガス入り整流管でなく水銀蒸気整流管を、サイラトロンでなく大型の送信管を用いていた模様である。水銀整流管は電圧降下が少ないのが利点であるが取り扱いが複雑なのと、動作が微妙でレーダーのようなパルス型の負荷では損傷を受けやすい問題があった。

送信管は動作速度は速いけれどもスイッチに使用するには内部抵抗が大きいので損失が大きく効率が悪いことと大電流が流せないのでパルス幅を狭くできない欠点があった。通常の不活性ガス封入のサイラトロンはガス分子が大きい関係から動作速度が遅く細いパルスを発生できない。これを高速化するために軽い水素ガスを封入した水素サイラトロンが開発された。しかし水素ガスは活性が高く高速で陽極に衝突すると水素金属化合物を生成して吸収されてしまう。内部に水素発生器などを組み込んだりしたが寿命の短い管だった。