「世界の小さな終末」

世界の小さな終末(A little Armagedon)、60年代終わりに発表された同じくロシュワルトの小説。
前作の「レベル・セブン」とは異なり娯楽性の高いスラップスティック小説です。
ハヤカワ書房・文庫にて出版されましたが多分絶版でしょう。

北極海を潜航中の核ミサイル潜水艦で副長が士官連中を集めて酒盛りパーティを開いていたところに折悪しく艦長が現れて厳しく叱責となって、ものの弾みで突き飛ばした艦長は打ち所が悪くて死んでしまいます。
これの処置に途方にくれた副長が皆にいっそ艦を独立国にして海賊稼業で面白おかしく生きようと提案し、これによって独立の海賊国家が成立します。
彼らは核ミサイルの脅迫により酒・金・女を要求して世界の海を渡り歩き、米国はその後始末に奔走されられます。
これに懲りた米国は軍人への宗教と道徳の教育を強化して不純な分子を追放することにつとめます。
これを奇禍としたのが空軍ミサイル基地の信仰に厚い司令官で、これこそ神の御心による国民浄化の機会であるとして核ミサイルによる脅迫で禁酒と不道徳追放の十字軍としての宣言を行い、国中の不道徳施設の閉鎖と取り締まりを要求します。
両者の対立は遂にその間の核戦争にまで発展し、両者相打ちにより一件落着となったかに見えましたが、程なく旧ナチグループによるNATO核基地ジャックでの両ドイツの併合の要求が発生し、またアフリカの最貧国による食料要求が発生と世界はてんやわんやの騒ぎに。

筒井康隆顔負けの滅茶苦茶な物語ですが、北朝鮮の事件などを見ると笑ってもいられない。
お気づきのようにかわぐちかいじの劇画「沈黙の艦隊」はこれのパクリです。