「優しい悪口」
いつからか俺はナルトのことを呼ばなくなった、“ドベ”と。
必ずしも俺の周りが弱い輩ばかりとは限らないと気付き、
その上其ればかりかナルトは俺より強いかもしれないのだから。
何度背中に寒気が走ったか知れない、あいつの底知れない力、
ぞっとするくらい大きなチャクラを感じて。
本当に俺の知っているナルトなのか不安だった。
「三人一組、……うずまきナルト? フン、足手まといが増えるだけだ」
俺は最初、紛れも無くそう思っていたというのに。
そう、不安だったんだ。
俺はいつかナルトに出し抜かれて、弱さの檻の中でもがく未来の自分を感じたから。
誰より俺は強くならなければいけない、それなのに。
自分より強いであろう存在を感じている。
――自分より強いであろう存在に惹かれている。
あいつは云った、「大切な仲間」だと。
俺がそれ以上に考えている事をあいつは知らない。
孤独だった。
だから、バカ単純に目標に向かって突っ走って行けるあいつが、正直羨ましかった。
――「絶対、やってやる!」
決めたら、“もう引かない”あいつを見ていると、不思議とその気になった。
あいつを見ていてホッとした、そんな俺が居る。そう思ったんだ。
だから逆に、居ないと落ち着かない。
――「火影になってやるってばよ!!」
それなのに、どこか危なっかしいあいつが心配だった。不安だった。
目の前から居なくなって、俺の知らない場所で逝ってしまう想像を何度もした。
敵に突っ込む事しか知らないあいつを、心の底から守ってやりたいと本気で思った。
けど――、
あいつは何もわかっていないから。
何を知って欲しくもないから。
だから今はあいつをこう呼ぶ。
「おい、ナルト」
「何だよ? お前が話し掛けるなんて珍しいな」
「……」
「何だってばよ? 用は無いのか?」
「……このウスラトンカチ」
何も知らないあいつを、“ウスラトンカチ”と。
このスカシ野郎、とあいつの憤慨する声が聞こえる。
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サスナル処女作。主にサス→ナル。
短いけれどもサスケの想いというか、それは詰めたつもり。