
神社と池
あぁ、またあのお祭り騒ぎの悲鳴か。
ミキは冷めた目つきで、神社にたむろっている大人達を眺めた。
友達に誘われて、易々と年に一度のお祭りを見に来た私がバカだったと、ミキはため息をついた。
ミキは中学一年生。
もうすぐ中学二年になろうかという年頃。
神社には池があって、橋が掛かっている。
でも、祭りのお神輿が通るのは反対側だから、今はひとっこひとり歩いていなかった。
ミキは、大人達に混じって行ってしまった友達から離れて、その橋の上を歩いていった。
ミキはびっくりした。
そこに、池を食い入るように見つめている男の子が居たのだ。
まだニ、三年生といった感じだろうか。
池には睡蓮が多数浮かんでいて、底には客が投げる五円玉や一円玉がキラキラ光っている。
水面に月が揺れていて、夜を写したように水は真っ黒だった。
それなのに、何故見つめる意味があるのだろう?
ミキは男の子の容姿を眺めた。
髪の毛はボサボサ、春になりかけとは云ってもこの時期にはまだ寒い、
ティーシャツ一枚と半ズボンだけだ。
悪いが、いかにも貧乏と云ったイメージがあった。
ミキは男の子の横に並んだ。
男の子は、ミキの方を見るでもなく、また、びっくりするでもなく、まだ池を見つめていた。
「池に、何かあるの?」
どうしても気になって、ミキは男の子に尋ねた。
「……家に帰りたい」
聞いた主旨とは違う答えを、男の子はポツリと口に出した。
「君、名前は?」
「ユイ」
何だか女の子みたいな名前だな、とミキはちょっと可笑しく思った。
でも、ユイは一度もミキを見ない。
「お父さんとお母さんは?」
「車に殺された」
――交通事故か。ミキはちょっと可哀想に思う。
「ねェ、ずっとそうやってると風邪ひくよ。私の家に来ない?」
「ホント……?」
ユイはやっと、嬉しそうな声を出してミキを見た。
泥だらけのその顔は、お世辞にも可愛いとは云えない感じだったが、
ミキには、どうしてもその子が悪い子だとは思えなかった。
「うん……親に聞いてみるね」
ユイと手を繋いで、ミキは歩き出した。
ユイの手は、小さい子の特有なのか、なんだかペタペタして冷たかった。
小さくて冷たくて、ミキはこの子の親になってあげてもいいとまで思った。
家まで帰るには、電車を乗り継いで一駅だ。
「お金、持ってないよね」
「お――金?」
ミキは、知らないんだろうな、と思う。
「あぁあの銀色と金色ののデッカイやつだね」
ユイが小さな声で言う。
デッカイ? ミキはちょっと疑問に思ったが、子供の分の切符を一枚、大人のを一枚買った。
この駅は川の上に建っている。
ユイは、電車が発車するまで、ずっとまた食い入るように川を見つめていた。
「どうしたの? 水に何かあるの?」
と尋ねても、うぅんと短く首を振るだけで、ユイはそれ以上ウンともスンともいわなかった。
不思議な子だな、ミキは思う。
「着いたよ」
駅を出て、家に帰ろうとすると、あたりはもう真夜中同然、真っ暗だった。
「あちゃあ……やっぱりなぁ」
さっきからユイはずっとしゃべっていない。
あの冷たい手をミキとずっと繋いで、ちょっと握る力が強くなったみたいだった。
知らない土地だから怯えているのだろうか。
突然、ユイは走り出した。
何かに反応するように、ビクッとした表情で。
「ちょ――待って、どうしたの!?」
ユイは、何かに導かれるように道路を凄い勢いで横断した。
「あぁっ! 危ないよぉ!!」
ミキは車がクラクションを鳴らして通り過ぎるのを待ってから、急いでユイを追いかけた。
ユイが、細い路地に入り込む。
「ちょっ――! そっちには川しかな――!!」
ミキが慌てて路地の行き止まりまで行く。
黒い小さな影が跳ねた。
「……!」
ユイの姿は無かった。
行き止まりには小さな柵しか無くて、子供でも楽々跨げる高さだ。
恐々覗くが、そこには崖しかない。
下の方に川があって、相変わらずサラサラチャプチャプと気持ちのいい音を立てて流れている。
一瞬、水面の水がチャプンと跳ねて、また小さな黒い影が現れた。
「あ……っ」
「アリガトウ」
そう、聞こえた。
紛れも無く、さっきのユイの声で。
「ユイ……?」
もう何も聞こえなかった。
「ユイ―――――――ッ!!!」
数時間しか一緒にいなかったのに。
家までも、招待できなかったのに。
如何してか、悲しくて悲しくて仕方なかった。
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アトガキ。
アドバイス頂いて友情系書かせて頂きマシタ。
この話は、読んでいて理解不能、という方もいらっしゃるでしょう。
つか私もそう思います(死)
実は、この話は私が夢で見た映像を文字にしたもの。
見たいと望んだわけでもなく、特別意識したわけでもなかったのですが、
初めてこんなストーリー状になった夢を見ました。
私の夢はいつも途切れ途切れで(皆さんもそうですか?)、
一場面一場面違っていくのですが、こんな夢は初めてだったので、
急いで書き留めマシタ。
夢を見終わった後気付いたのですが、ユイは蛙だったのでは、と思います。
「水」を酷く気にしている当たり、水がないと生きられないような子なんだろう
と思ってましたが、今思えばあの黒い影、蛙にソックリだった気がします。
池を見て家に帰りたい、と言っている部分も、酷く蛙をイメージします。
これらを踏まえて考えて見ると、
「車に殺された」→親蛙は車に轢かれて死んだ。
「デッカイ」→神社の池に住んでいた(ので常時さい銭の金を見ていた)。
というようなことが挙げられます。
私の家の近くには、神社ではありませんが夢のイメージととてもよく似た所が
ありますし、乗り継いだ駅の周辺は、私の最寄りの駅の周辺にそっくりでした。
だから現実感というか、なんだか夢のような気がしなかった、というのもあります。
配役としては私は「ミキ」。
ユイ、という名前だけは、夢に出てきた名前をそのまま使いました。
何故か鮮明に、その男の子が「ユイ」と名乗ったのを憶えています。
夢をこんなにハッキリ憶えているのもすごく久しぶりですし、
名前もしっかり覚えていたので、自分でも酷くびっくりしてます。
ユイーッ、と叫んだとき、私は酷く切ない気持ちに襲われました。
(↑夢の中でも私は叫んでました)
文章でそれが表せているかどうかはわかりませんが、
少なくとも私が起きたときや叫んだときはとても悲しかった。
この文章が短いのも、ちょっと言語の意味が不透明なのも、
すべては“夢”だった所為。(←そうでなくてもあんたは不透明)
夢って不思議なんだなぁ……。