Jazzとは何でしょう




はじめに  
はじめに

ひとくちにジャズと言っても、どういう音楽がジャズなのか、音楽を真剣に学び考えたことのない人には分からないものです。アメリカ生まれの軽薄な音楽、などと言うと侮辱だと叱られそうです。クラシック音楽ではないアメリカ育ちの大衆音楽ではないか、と言う向きも出てくるでしょう。私の少年青年時代には「軽音楽 」という言葉が使われていました。NHKラジオの「軽音楽の時間」では、アメリカで流行っているいろいろな種類の音楽を紹介していたものです。
クラシック音楽ではない西欧の音楽全般を「軽音楽」と言うのなら、「ジャズ」はその中のひとつのジャンルでしょう。アメリカ生まれに絞ってもブルー・グラス Blue Grass、カントリー・ウエスタン Country and Western、リズム・アンド・ブルーズ Rhythm and Blues略して R. & B.、スウィング・ミュージック Swing Music、ポップス Pops(ポピュラー・ミュージック Popular Musicの略ですが、今ではポップスが一般化しています)、ロック Rock、ソウルSoul Music、ハワイアン Hawaiian Music、これに中南米のものまで含めてラテン Latin Music等々数ある中のひとつと区分けしてみることが出来るでしょう。でもそれはあまり意味が無い。今日漠然とジャズと言われている音楽は、以上のすべてに多かれ少なかれ係わりがあるからです。
第二次大戦後まもなく作られたハリウッド映画に「ジョルスン物語 The Jolson Story」(1946)というのがありました。昭和22年には日本でも公開され、その頃まだ珍しかったカラー映画 で、アメリカの華やかなショー・ビジネスを描いたものとして人気を呼びました。私も子供の頃、父に連れられて日比谷映画劇場で観ました。
その昔アメリカにミンストレル・ショウMinstrel Showと言われていた旅芸人劇団がありました。そこでは白人歌手やダンサーが顔や手足を黒く塗って黒人に扮して歌い踊っていました。アメリカ民謡の父といわれている作曲家フォースターStephan Collins Foster(1826-64)はこのミンストレルのためにたくさんの名曲を書いています。そしてその多くが今ではアメリカ民謡となっているのです。アメリカ最初のジャズ・シンガーと言われているアル・ジョルスン Al Jolsonはこのミンストレルの出身なのです。映画の中でジョルスンが「マミー」などのジャズにごく近い歌をうたっています。「本当の黒人がやっているような音楽をやりたい」と若い歌手のジョルスンが訴えると、座長が「私はこのミンストレルを50年やっており、お客は私のミンストレルを聴きにくるのだ」とはねつけるシーンがあります。ジョルスンは1920年代に最初のトーキー映画「ジャズ・シンガー The Jazz Singer」で主役をつとめた人ですから、その数十年前のミンストレルで、すでにかなりジャズに近い歌がうたわれていたことを、この映画は教えてくれます。

1.(MD@−1)
Swanee Al Jolson (vocal).
[From Gershwin's Time Sony MH2K-60648 ADD 1919]
後日のジャズの開拓者であり功労者でもあるアル・ジョルスンに敬意を表して、彼の大ヒット曲「スワニー」(ジョージ・ガーシュイン作曲)から始めることにしましょう。アメリカ南部を流れるスワニー河、そのほとりに住む母親を思い出し、望郷の念のありったけを歌にこめています。でもこれはまだジャズではなく、ミンストレルの範囲でしょう。

なお、このテキストはジャズを学問的に取り上げるものではありません。私はごく若いことから主にクラシック音楽を聴いてきましたが、いつのまにか何の偏見、抵抗感もなくジャズも楽しむようになってきています。その経験に基づいて、「ジャズとは何だろう。どうしたらジャズを楽しむことが出来るだろう」を極力やさしく、しかし一応はジャズの歴史、進化に沿って解説を進め、その過程で代表的ジャズの演奏を、それも数多く、聴いてゆこうというものです。MD<ミニディスク>の普及とともに、こういう解説つきディスクが手軽に作れるようになりました。各曲にナンバーをつけ、曲名を書き込むことができるので、MDは「ハウ・ツー」ものにはもってこいのオーディオ器機なのです。
「ジャズを楽しむ」ために必要なことだけを取り上げることに徹しています。だからジャズ音楽学的には必ずしも正しくない記述も出てくるでしょう。でもそういうところは、イルカを魚の仲間、コウモリを鳥の仲間として話を進めているようだが、その程度のいい加減さは大目に見よう、それくらいの大きな心で読み、MDを聴いてください。

テキストに記載した曲目の番号とMDのインデックス番号は合致するようにしてあります。ボールド体イタリック文字(上の例ではSwanee)は曲名、次に演奏者名(Al Jolson)と使用楽器(歌唱なのでvocal)、下段の[ ]内に音源を記載してあります。[ ]内はイタリック文字でディスクのタイトル(=アルバム名)、上の例では(From Gershwin's Time)、ディスクのレーベル名と番号、音源の種類、録音された年(Sony MH2K-60648 ADD 1919)の順に記載してあります。なお音源の種類とは、DDD=ディジタル録音ディジタル処理のCD、 ADD=アナログ録音ディジタル処理のCD、 AAD=アナログ録音アナログ処理のCD、 LP=LPレコードを意味しています。CDによってはアナログ録音ではあるがディジタル処理かアナログ処理か不明のものがあります。そういうのは古い録音のものが多いので、AADとしました。








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