私のコンサート評




私のコンサート評  
January 18 (Saturday), 2003

フィリアホール(横浜市青葉区)
演奏曲目 モーツァルト、ラヴェル、ドビュッシー、ショパンなど。
ピアノ 仲道郁代

 1999年から2002年にかけてここフィリアホールで、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲を作曲年代順に並べて連続演奏してきた、仲道郁代が戻ってきた。彼女自身が「ベートヴェンを通じてフィリアホールが私を育ててくれた」と聴衆に語ったように、聴いた我われも(評者はそのほとんどを聴いた)仲道とともにベートーヴェンを勉強してきた、そしてベートーヴェンを聴くよろこびを味わってきた、そういう思いがある。

 この日仲道郁代は、ふだん慣れ親しんできた名曲、愛弾曲のいくつかをプログラムに並べて「みなさまと一緒に楽しもうと思っていました」、「でも、よく知られている曲だけに、いっそう真剣に取り組むことになってしまいました」と語ったのだった。

 ベートーヴェンのソナタ群との格闘?を経て、いちだんとスケールを大きくした仲道の迫力ある演奏、それでいて彼女本来の美音、繊細なタッチは相変わらずで、まことにいいピアニストに成長していると思わせるに十分であった。

 彼女の「子犬のワルツ」はテンポが速く、これでは犬は目をまわして倒れてしまいそう、でもその異常な速さの中の音のひとつひとつがキチンとタッチされ、音の粒となって聴こえてくるのだ。たいへんなテクニックである。「英雄ポロネーズ」、舞台姿を見ていなければどんな大男が弾いているのかと思うだろう、そういう大音量である。あの華奢な小さなからだのどこからこれだけの力が出てくるのだろうと、不思議に思う。結核に冒されいまにも倒れそうな病弱のショパンではなく、ロシアの圧制に歯向かい祖国ポーランドのために革命を起こそう、そういう同志を鍵盤から援助しよう、そういう強い志のショパンである。私はこういう強いショパンが好きである。

 アンコールの1曲はエルガーの「愛の挨拶」、まことに清々しいリサイタルだった。









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