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|  |  | Strauss, Richard: "Ariadne auf Naxos"「ナクソス島のアリアドネ」 
 December 14 (Saturday), 2002
 新国立劇場
 Production: Hans-Peter Lehmann
 Conductor: 児玉 宏
 Orchestra: Tokyo Philharmonic
            Orchestra
 Cast:
 執事長:米谷毅彦 音楽教師:小森輝彦
            作曲家:手嶋眞佐子
 テノール歌手/バッカス:Wolfgang
            Muller-Lorenz
            ツェルビネッタ:Cyndia Sieden
 アリアドネ:Mariana Zvetkova
            三人の精:山本美樹、杉田美紀、森野由み。
 
 恥ずかしながら、評者にとって、このオペラは初めて。クラシック音楽専門月刊誌「モストリークラシック」のオペラ鑑賞委員氏も「『アリアドネ』はその昔ウイーンで一度観ただけ」と書いておられる(本年12月号)ので、まあ、それほどの恥でもないかと、自らに言い聞かせるとしよう。
 
 同誌の解説を読んでも、CDのライナーノートを読んでも、メトロポリタン・オペラの映像をDVDで観ても(字幕が英語なので目が追いきれない)、いまひとつストーリーがよく分からない。「『俊寛』のギリシャ神話版と思ってください」と訳知り顔で教えてくれた友人もいた。加えて(評者の席のせいかも知れないが)今回は字幕の設置場所が悪く、照明が反射して、字幕が読めないときた。反対側の袖の字幕を読むためには頭を90度回さねばならず、それでは音楽に集中出来ない。
 
 とは言うものの、観終わってみれば、ホフマンスタールとシュトラウスの名コンビが新境地開拓のつもりか、あるいは遊びごころからかで作った、奇想天外なオペラを楽しんだ、そういう満足感は得られる。なにしろ音楽が美しい。
 
 道化役コロラチュア・ソプラノのツェルビネッタ(シンディア・シーデン)がうまい。しかもなかなかの美形ときている。準主役という役柄ながら観客のアプローズは完全に主役を食っていた。題名役アリアドネを歌ったマリアーナ・ツヴェトコヴァ、堂々たる体躯から発せられるこれまた堂々たる音量のソプラノで、往年のブリジット・ニルソンを思い起こさせる。ブルガリアの出身だそうで、先週ソフィア国立歌劇の東京公演では聴かせてもらえなかった「ブルガリア・ヴォイス」に、思いがけず出会うことができた。
 
 音楽教師(小森輝彦)が成長著しい。評者が前回聴いたのはやはりシュトラウスの「サロメ」で、ヨカナーンを歌っていた。今回は声量も豊かになり、声の艶がいちだんと成熟度を増してきた。軽快な演技もサマになっており、オペラの本場で研鑽を積んでいることがよくわかる。歌わない役執事長(米谷毅彦)もうまい。風貌といいしぐさといい、いかにも欧州のバトラーだ。準主役の作曲家(手嶋眞佐子)の過剰なヴィブラートは、シュトラウスの音楽の線にはなじまないのではないか。
 
 評者の鑑賞力を超越するシュトラウスの一風変わったオペラだから、児玉宏の指揮についてはコメントしない。オーケストラの響きがシュトラウスとは異なるように感じたのだが、それは人数を削った小編成のせいかもしれない。好感の持てるシンプルで効率的な舞台。
 
 
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