私のコンサート評




私のコンサート評  
NHK交響楽団第1471回定期公演
2002年10月30日・サントリーホール

Beethoven: Piano Concerto No.3 in c, op.37
Schubert: Mass No.5 in A-flat major, D.678

指揮 ウォルフガング・サヴァリッシュ
ピアノ ゲアハルト・オピッツ
独唱 天羽明恵・白土理香・望月哲也・青戸知
合唱 二期会合唱団

 数年前、NHKテレビで、日本の若いピアノ奏者(音大学生だろう)にベートーヴェンのピアノ・ソナタのレッスンをつけていたのを見たことがある。ミュンヘンの音楽大学教授、オピッツをそのように記憶していた。私のディスク・コレクションの中にベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲をピアノで弾くという、一風変わったものがあったような気がするが、確かめる時間も無く、定かではない。オピッツのナマの演奏に接するのは、私は、今回がはじめてである。

格調高いドイツ正統派のベートーヴェン演奏、同じくミュンヘンに本拠を置くサヴァリッシュのもと、ドイツものを得意とするN響だから相性も良く、堂々たるピアノ協奏曲第三番であった。

若いころにはアマチュア合唱をやっていた評者だから、シューベルトの「ミサ曲第五番」はなじみのある、懐かしい曲だ。サヴァリッシュはこういう宗教曲も得意で(ヨーロッパの指揮者は誰でもそうなのだろうが・・・)、録音も多く、いわば自家薬籠中のもの。教会の聖歌隊を一所懸命指導していた時期もあったのであろう、自ら大きく口をあけて、典礼のラテン語を合唱団とともに歌っている。そのていねいな指揮ぶりに、「自分もこういう人のもとで歌ってみたかった」と思う。定期公演の私の席からは、指揮者の顔、表情が良く見えるのである。教会堂(カテードラル)と違って残響の少ないコンサートホールでのミサ曲演奏は難しいのであろうが、二期会合唱団は、すこしの破綻も見せず、立派に歌いあげていた。

ミサ曲では矍鑠〈カクシャク〉颯爽と指揮していたサヴァリッシュだが、協奏曲ではグランド・ピアノに隠れるように高椅子を置いて、それにもたれかかっていた。寄る年波とはいえ、評者は、彼の若いころからN響ほかで聴き続けているだけに、痛々しかった。

「Dona nobis pacem (我らに平安を与えたまえ)・・・」、典礼の言葉が結ばれて、静かにミサ曲が終わる。寸時の静寂・・・。この余韻を大切にしてくれた、当夜のN響定期会員に拍手、感謝。    








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