私のコンサート評




私のコンサート評  
May 17 (Wed), 2000  Suntory Hall
NHK Symphony Orchestra's 1407th Subscription Concert

Schubert: Symphony No.5
Schnittke: Violin Concerto No.4
Janacek: Sinfonietta
David Robertson (conducting), Akiko Suwanai (violin)
NHK Symphony Orchestra

 このところ積極的に現代音楽に取り組んでいるN響が、ピエール・ブーレーズの秘蔵っ子、現代音楽の旗手であるデイヴィッド・ロバートソンを五月定期に招聘、そして諏訪内晶子とともにシュニトケをやる。多少とも現代ものに関心のある音楽ファンなら「これは見(聴き)逃せない」と思うだろう。

 シューベルトの「第五番交響曲」、ロバートソンはきびきびかつていねいに、小編成のN響からしっとりとした麗しい音を引出していて、耳に心地よい。

 お目当てのシュニトケの「ヴァイオリン協奏曲第四番」、これをどのように評したらよいのだろう。プログラムの解説にも「シュトニケの音楽の魅力を一言でいうのは難しい」と書いてあるが、本当にその通りだ。

根幹はかなり難解な現代音楽ではあるが、聴いていてなんとなく理解できる範疇に入るようでもあり、ロシア風であり、それでいて西あるいは中央ヨーロッパの雰囲気もある。「様々な引用に満ちた【多様主義】と呼ばれるスタイル」との解説を読めばなるほどと納得する。

 諏訪内晶子のヴァイオリンが華やかである。ときに豊穣に響き、ときに神経質に苛立ちを現す。その音、音質といいリズムの刻み方といい、はたまた奏者自身のボディー・ランゲージといい、まさに【多様主義】の発露そのものだ。なにしろ最初は束ねられていた(彼女のトレレード・マークのような美しい)長い黒髪を演奏中にバラリとほどく、そしてやおらオケの第一、第二ヴァイオリン奏者(3〜4人)の膝のうえに次々と腰を落とし、媚びをふりまきながらソロを続ける(ジプシー・ヴァイオリンを意図している?)、といった具合だ。どびきり美形の諏訪内晶子がやるからサマになるのであって、これをギドン・クレメール(この曲を献呈され初演【1984年】もした)ならどうやるのだろう、と気にかかる。聴衆の大拍手、喝采。これは近来の傑作曲(と理解した上で)に対するものか、あるいは諏訪内晶子その人に対するものなのか。

 ヤナーチェックの「シンフォニエッタ」、エキストラを加えた十数本のトランペットが華々しく咆哮し、オーディオでは絶対に味わえない快感に酔う。このところN響は好調である。








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