三鷹呼高<ミタカ・ヨンダカ>の
書評





書評
101 AMERICAN ENGLISH PROVERBS, Understanding Language and Culture
Through Commonly Used Sayings
by Harry Collins, 105 pages, Passport Books (Paperback)

 「英語ことわざ辞典」とか「日英ことわざ対照」のような類書は市場にたくさん出ているし、英和や和英の辞書で引くことも出来るが、本書はそのように正面きって「ことわざ」について学ぶものではない。日常いつでも使えるような、また英米人ならだれでも知っている「ことわざ」101個が巧みに選出されていて、漫画風イラストと軽妙な解説を通じて、それらを覚える手助けにしようとする本である。

 評者の年層では、「いろはかるた」に熱中した幼年期に日本の「ことわざ」約50個を覚え、少年期には、国語や英語あるいは漢文の時間に、中学・高校の教師たちからさらに多くの「ことわざ」を教えてもらっている。しかし、先人の貴重な経験体験から生み出されたこれら「ことわざ」を、近頃は家庭でも学校でも、あまり教えないらしい。だから「情けはひとの為ならず」を、「情けをかけて施しものをするのは、貰う人のためにはならない(だからしてはいけない)」と、正反対の解釈をする若者が増えてくる。

 こういう傾向はどうやら海の向こう側でも同じらしい。本書の裏表紙に、「・・・a look at timeless words to live by時空を超えて人の生活の指針となることわざを一見し・・・」とあり、アメリカ人(最近の移民も含まれるだろう)に、イラストと平易な文章つきで、「ことわざ」をやさしく解説する本が出現する背景が見えてくる。そして「ことわざ」を通して、英米の生活様式と思考体系を理解するのに恰好なガイドブックでもある。

 すでに承知している「ことわざ」あり、初めてお目にかかるものあり。解説がわりの例文が会話調になっているので、初歩的英会話練習の足しにもなる。イラストがこれまたよく出来ていて、面白い。通読する必要はなく、通勤電車の中とか、海外旅行の飛行機の中で、適当に開いてそこだけ読めばよい。そういう本である。高校や予備校の英語教師が教科の合い間で使うのに恰好なタネ本だし、企業内語学研修の教材にしても良いだろう。

 「Possession is nine-tenth of the law.」(p.100)、定番の日本訳は「借りたものは自分のもの」だが、それではニュアンスが出ていないように思う。先般ロシアのプーチン大統領が来日したものの、北方四島返還交渉には何の進展もなかった。評者はその時期にとあるディナーの席でこれを使ってみた。すると、「That's exactly what it is.」と同席の英国人がうなずいていた。安直ながら、結構役に立つ本である。


 






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