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■ 真贋のはざま 補足資料展 ■
2001年に東京大学総合研究博物館の特別展示として開催された『真贋のはざま - デュシャンから遺伝子まで』展。コピーの概念が多種多様となった現代に、オリジナルやコピーとは何であるかを問う展示であった。
入り口のすぐ脇には、ブロンズのオリジナル『小金井良精像』とそのブロンズによる複製、コンクリートによる複製の、計3体が並んで展示された。まさにこの特別展を象徴する展示であった。
しかし実際には、この3体の他にも多くの複製の作成が試みられ、或いは存在しており、そしてそれらが作られるに至った経緯にも興味深い点が多い。
ここでは、諸般の事情から開催期間中に展示されなかった関連の品々について紹介し、解説する。なお比較参考のために、展示された3体についても改めて画像及び解説を掲載する。

展示品-1
掘進二『小金井良精像』(甲)、ブロンズ、1937年。
現在、医学部二号館の階段踊り場に設置されているもの。細部の描写は省略されており、全体の輪郭が柔らかい。頭骨の部分に骨学的な合理性が欠けているが、彫刻科掘の持ち味が一番良く出ている。

展示品-2
掘進二『小金井良精像』(乙)、ブロンズ、1937年。
ブロンズ製(甲)を原型として再製作されたもの。顔の造作や洋服の襞など、各所の造形的な表現により一層の進化が認められる。とくに頭骨は骨学の専門科を納得させるだけの合理性を持っている。ただし、(甲)に比べ、写実的な傾向が強まったぶんだけ、造形として硬くなり、表現力も乏しい。

展示品-3
掘進二『小金井良精像』(複製)、セメント、1937年。
ブロンズ製(乙)を基にしてセメントで模造されたもの。これは創造というより、複製、模造、偽造などの言葉が相応しい。この像の存在は複製がオリジナルの『代理物』として機能したことを歴史的に証している。

展示品-4
玩具製造会社『小金井良精像型貯金箱』、セルロイド、製作年不詳。
セルロイド製のミニ胸像型貯金箱。胸像除幕式典で参加者に記念品として配付されたとの伝聞はあるが、それを示す記録は無く、正確な製作目的は不明。
硬貨が通る幅を確保するために、頭部が大きくなり、首の部分は圧縮されている。オリジナルのイメージだけを反映させているため、縮尺には大きな狂いが見られる。また表面の色調もイメージであり、着色の色むらで再現されている。

展示品-5
老舗饅頭店『小金井良精像型饅頭』(再現)、饅頭、1937年?。
胸像除幕式典の来場記念品として配付されたと伝わる、胸像を象った饅頭。人形焼き業者に依頼し制作されたもので、つぶあんとこしあん各1つが入った1箱2個入りであった。
形状を見せる目的から市販の人形焼きよりも大きめに作られたが、配付までの間ににあんこの重みで縦方向に潰れ気味となっていた。また、当時の技術で充填されるあんこの種類と量により、個別の形状にかなり違いの生じていた可能性が高い。

展示品-6
老舗饅頭店『小金井良精像型紅白饅頭』(再現)、饅頭、1937年?。
胸像の除幕式典よりも以前に胸像の制作関係者のみに配付されたとされる、胸像型の紅白まんじゅう。上と同じ業者に依頼し制作されたもので、赤はつぶあん白はこしあんであった。
紅白まんじゅうの場合ガワが薄く形状の正確な再現は困難であり、量産にも手間がかかる。当初来場者用に計画され、試作品が検証用として関係者のみに配付された可能性が高い。その結果で紅白饅頭は不採用との判断が下されたものと考えられるが、それを示す書面等は残されていない。

展示品-7
和菓子製造会社『小金井良精像型人形焼き』(再現)、饅頭、1977年。
展示品-5の存在が伝説話的に伝わり続けたことから、胸像完成40周年記念企画品として制作された人形焼き。先の饅頭店は廃業しており、和菓子製造業者で新たな金型を制作し量産したもの。市販の人形焼きに近い小さいサイズとなり、1箱6個入りで一般希望者にも販売された。
量産効率の都合からこしあんのみとなったが、小型化のために形状は更に崩れ、その造形はオリジナルの胸像から程遠いものとなっている。

展示品-8
玩具製造会社『小金井良精像型消しゴム』、消しゴム、1979年頃。
胸像型の消しゴム。当時子供向けに販売が好調だったスーパーカー消しゴムにあやかり製作量産されたもの。当初東大付近の駄菓子屋店頭に置かれた販売機(俗称ガチャガチャ)で、スーパーカー消しゴムに混ぜて販売されたが、子供から多くの不評を買いすぐに中止となった。
現在も構内売店のみで販売が続いているが、実用の消しゴムとしては殆ど機能しないこともあって売れ行きは悪く、未だに大量の初期ロット在庫を抱えていると言われる。
:ご注意:
このページの内容は『真贋のはざま展』を題材にしたパロディです。従って、実際の『真贋のはざま』展及び東京大学総合研究博物館とは無関係です。
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