東へ向かう玄関口であった両国。かつてはここから数々の特急、急行が出ていたが、今は黄色い総武線の電車が止まるだけの駅となってしまった。立派な駅舎と使われなくなった行き止まりのホームがかつての栄華を物語る。
総武本線を西へ120Km。関東の東の端、銚子にやってくる。総武本線はここが終点だが、ここから犬吠埼を半周するミニ私鉄、銚子電鉄が走っている。総武本線ホーム先端に風車小屋が建っていて、その向こうに1両の小さな電車が止まっているのがそれである。車掌から、「小廻手形」という切符を買う。これは、終点外川までの往復運賃で、当日に限り銚子電鉄全駅での乗降が自由にでき、沿線の各観光施設の入場料が割引になり、さらに名物の濡れせんべいももらえるという優れものである。沿線には、犬吠埼灯台や屏風ヶ浦、地球が丸く見える丘公園などがあり、観音駅ではタイヤキ、犬吠駅では濡れせんべい、外川駅ではタイヤキのあんこのカンで作ったちりとりが売られている。
1両の古い電車は軒先をかすめながら単線の線路をごとごとと走る。床は木で、当然冷房なんか無い。窓から入ってくる風はまだ夏のものだ。終点外川まで20分ほどで到着だ。駅舎は木造でかなり古い。「澪つくし」というドラマのロケも行われたそうで、それにちなんだ「澪つくし号」というトロッコ列車を走らせている。
外川から一駅、犬吠駅に降り立つ。犬吠埼灯台などはここが近い。西洋風で、南国ムードの駅である。駅舎の中では濡れせんべいをはじめ、数々のみやげ物が売っている。
犬吠埼灯台へ行く。5分ほど歩くと灯台に着く。純白の灯台が、紺碧の空に向かって聳え立つ。灯台に登る。らせん状の狭く急な階段を登り、外に出る。一面に広がる太平洋、夏空に消えてゆく飛行機雲。海風に吹かれながら遠くを見つめると、全てが青く澄み渡る。灯台を降り、海沿いの遊歩道を歩く。波が砕け、音とともに水しぶきも飛んでくる。風が強く、波も力強い。岩を越えて遊歩道まで波がかかるので、うっかりしていると波をかぶる。けれども岩を乗り越える大波がくると楽しい。シャツが水しぶきでべたべたになっていた。
駅に戻り、おまけの濡れせんべいを食べる。その名の通り湿気ったせんべいでちぎって食べられる。醤油の香りが強い。面白いせんべいである。電車がきた、後ろには澪つくし号がついている。そちらに乗る。車掌がラムネやビールなどを売っている。風を受けながら飲むラムネ。日本の夏である。観音駅で降りる。ここでタイヤキを買うのだ。ここのタイヤキはあんこが尻尾まで入っているし、焼いたときはみ出した皮もそのまま付いてくるので、得した気分になれる。まだ夏の日差しの中で熱いタイヤキを食べていると、電車がやってきた。タイヤキをほおばりつつ、ぼくは帰りの列車にのりこむのであった。
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